【連載】受け継がれる“驚速”の遺伝子(2):今や海外から注目されるレースカテゴリーに進化

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【連載】受け継がれる“驚速”の遺伝子(2):今や海外から注目されるレースカテゴリーに進化
執筆:
2019/04/16 10:01

今年から新型マシン『SF19』が導入されるスーパーフォーミュラ。現在では海外ドライバーも積極的に参戦するようになるなど国内外で注目度も高まっているが、そこまで注目度を高めた1台のマシンがあった。

 4月20日、21日に開幕を迎える2019シーズンの全日本スーパーフォーミュラ選手権。昨年まで5シーズンにわたって活躍してきた『SF14』が役目を終え、新型マシン『SF19』へとバトンタッチされる。

 すでに開幕前のテストから素晴らしいパフォーマンスを見せているSF19だが、その高い性能をこのタイミングから引き出せているのは、SF14での経験とノウハウがベースとなっているからこそなのだ。

連載1話目:国内トップフォーミュラの歴史を変えた1台のマシン

ドライバー、関係者、ファンを魅了したSF14のコーナリングスピード

SF14デビュー時、鈴鹿サーキットのS字コーナー通過スピードは当時のF1よりも速いと言われていた。

SF14デビュー時、鈴鹿サーキットのS字コーナー通過スピードは当時のF1よりも速いと言われていた。

Photo by: Yasushi Ishihara

 SF14が初めてファンの前に全車揃ったのは2014年3月。鈴鹿サーキットモータースポーツファン感謝デーでのお披露目だった。その翌日から合同テストが始まった。

 前年までのスウィフト製『FN09』も高いコーナリングスピードを誇っていたが、SF14はそれをさらに上回っていた。特にS字や逆バンクでは「ほとんど減速していないんじゃないか?」と錯覚してしまうほどの速さ。正直、コースサイドで取材していても鳥肌が立つほどの衝撃を感じたことを……今でも鮮明に覚えている。

 この年はトヨタエンジン勢が優勢。特にル・マン優勝経験者でもあるアンドレ・ロッテラーやロイック・デュバルはテストにも関わらず、予選本番モードの勢いでタイムアタック合戦を行い、そのタイム結果を見て一喜一憂していた姿が印象的だった。それだけ、ドライバーたちが本気で“乗っていて楽しい!”と思えるマシンだったのだ。

 国内トップフォーミュラでは2度のチャンピオン経験を持つ中嶋一貴も、SF14導入初年度のインパクトが大きかったと当時を振り返った。

「SF14に関しては、どうしても……最初の方の印象が強烈ですね。(2014年に)走り始めた頃は『うわっすげ~!』『速ぇ~!』っていう感想だったのが、すごく記憶に残っています。みんなで『デクナーで何キロ出た!』って(嬉しそうに)言い合っていたのが懐かしいですね」

 迎えた4月の開幕戦。SF14のデビュー戦となるのだが、当時JRPの社長を務めていた白井裕氏は最も印象に残ったレースウィークのひとつだったと語った。

「2014年の開幕戦が一番印象に残っています。僕がF1をやっていた頃と同じくらいのタイムが予選の時(アンドレ・ロッテラーが1分36秒996を予選Q2で記録)に出てしまって……『これはすごいな!』と感激しました」

「あとは、あの開幕戦の決勝では結構オーバーテイクシーンがあったんですよね。我々が最初に描いていたコンセプト通りの展開になったというか、すごく印象に残った1戦でしたね」

 ホンダの第2期F1プロジェクトに携わった経験がある白井氏。1990年の日本GP、アイルトン・セナ(マクラーレン・ホンダ)が予選で出した最速タイムが1分36秒996。それと同じタイムがスーパーフォーミュラで叩き出されたのだ。驚くのも無理はないだろう。

SF14とスーパーフォーミュラの噂は瞬く前に海外へ……

2017年にはピエール・ガスリーに加え、現在インディカーで活躍中のフェリックス・ローゼンクヴィストも参戦。3度の表彰台を獲得した。

2017年にはピエール・ガスリーに加え、現在インディカーで活躍中のフェリックス・ローゼンクヴィストも参戦。3度の表彰台を獲得した。

Photo by: Jun Goto

 コーナリングスピードでは当時のF1を上回るほどのパフォーマンスをみせたSF14の話題は、あっという間に海外に広がっていき、日本のトップフォーミュラは大きな転換点を迎えた。

 すでにロッテラーやデュバルなどはWECやル・マン24時間レースで活躍していたが、2014年には元F1ドライバーのビタントニオ・リウッツィ、ナレイン・カーティケヤン、さらに2015年からはそれまでF1で戦っていた小林可夢偉も加わった。

 これまで日本のフィールドで戦ってきた日本人ドライバーたちも「いきなりやって来たドライバーたちに負けるわけにはいかない」と奮起。そうした互いの努力がシリーズをより激戦にしていった。“0.001秒単位で予選順位が決まるのは当たり前”という世界でも類を見ないほどシビアなカテゴリーになっていったのだ。

「世界中を見ても、F1を経験したドライバーが本格的に参戦するカテゴリーって、あまりないですよね。そういう意味で彼らが乗ってくれるというのは、(周りからみた)評価がいいのかなと思いました」

「SF14を使用した5年間でクルマはワンメイクと言いながらも進化していって、よりハイレベルになりました。その間にヨーロッパから色々なドライバーが挑戦しにきてくれて、我々が目指していたものが実現しはじめたかな? という実感が少しずつ湧いてきました。特にバンドーンやガスリーも乗ってくれて、そこでの評価も大きかったですね」

 そう白井氏も語るように、スーパーフォーミュラで一番大きなトピックとなったのは、ストフェル・バンドーン(2016年)、ピエール・ガスリー(2017年)の参戦だ。

 ふたりとも激戦のスーパーフォーミュラできっちりと結果を残し、翌年F1へステップアップしていった。さらに2017年に参戦しシーズン3度の表彰台を獲得したフェリックス・ローゼンクヴィストは、昨年フォーミュラEで大活躍し、今年インディカーシリーズで名門チップ・ガナッシのシートを獲得した。

 参戦当時、彼らが揃って口にしていたのは「スーパーフォーミュラは素晴らしいカテゴリーだ」ということ。3人ともに「ヨーロッパにいる若いドライバーたちが望むのであれば是非オススメしたいカテゴリーだ」と太鼓判を押すほどだった。

 そんな彼らの声が届いたのか、SF19が導入される2019シーズンは将来有望な若手の海外ドライバーがさらに多数参戦する。

 マカオF3で2年連続王者に輝いたダニエル・ティクトゥム、FIA F2の上位ランカーでルノーF1のテストドライバーも務めていたアーテム・マルケロフ、DTM(ドイツツーリングカー選手権)で活躍したルーカス・アウアーなど、多くの海外ドライバーが今季フル参戦を予定している。

 特にアウアーは昨年のルーキーテストで「スーパーフォーミュラは目指すべき場所だと思っている」とコメント。今ではヨーロッパにいる多くのドライバーが“是非とも参戦してみたいカテゴリー”なのだそうだ。

SF14導入時のインタビューに応じてくれたJRPの白井裕技術顧問

SF14導入時のインタビューに応じてくれたJRPの白井裕技術顧問

Photo by: Motorsport.com / Japan

 この流れは、まさに白井氏がJRP社長を務めていた頃に思い描いていた理想そのものだった。

「“みんなが乗りたいと思ってくれるクルマ”、“ドライバーが憧れるカテゴリー”にしていきたいという思いでやってきて、当時作った計画が、社長が変わった今もブレることなく続いてきています。それが(思い描いていた通りのことに)近づいているのかなと感じています」

「フォーミュラ・ニッポンの頃は本当に日本国内だけのカテゴリーという部分が強かったと思います。それをもっとグローバルなところに引き上げてくれたクルマ、それがSF14なんだと思います」

 スーパーフォーミュラの存在を大きく変えた『SF14』。そして、2019年にその流れを継承したSF19が、いよいよデビューを迎える(第3話に続く)

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この記事について

シリーズ スーパーフォーミュラ
執筆者 吉田知弘
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