スーパーフォーミュラ

【連載】受け継がれる“驚速”の遺伝子(3):2019スーパーフォーミュラ、さらに異次元の領域へ

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【連載】受け継がれる“驚速”の遺伝子(3):2019スーパーフォーミュラ、さらに異次元の領域へ
執筆:
2019/04/18 9:31

今年から新型マシン『SF19』が導入されるスーパーフォーミュラ。現在では海外ドライバーも積極的に参戦するようになるなど国内外で注目度も高まっているが、いよいよ新マシンのデビューが間近に迫ってきた。

 4月20日、21日に開幕を迎える2019シーズンの全日本スーパーフォーミュラ選手権。ここまで5シーズンにわたって活躍してきた『SF14』が役目を終え、新型マシン『SF19』へとバトンタッチされ、新たな戦いがいよいよ始まる。

連載(1):国内トップフォーミュラの歴史を変えた1台のマシン

連載(2):今や海外から注目されるレースカテゴリーに進化

HALOなど安全装備は増えるも“クイック&ライト”の基本コンセプトは継承

山本尚貴(#11 SF19ホンダ開発車両)8月富士テスト

山本尚貴(#11 SF19ホンダ開発車両)8月富士テスト

Photo by: Tomohiro Yoshita

 ニューマシンSF19製作においてひとつのテーマとなったのが、現在のフォーミュラカーに求められる安全基準を満たすことだった。そのため、新型マシンは2016/17 FIA F1安全基準に準拠した他、ドライバーの頭部を守る「HALO(ヘイロー)」の搭載も決定した。

 安全基準に合わせるため、車両重量はSF14と比べて若干重くなったが、SF14で導入された基本コンセプトである“クイック&ライト”を引き継ぐべく、ダラーラ社で開発が行われた。これにより、F1マシンより約80kgも軽いマシンに仕上げることに成功した。

 また2016/17 FIA F1安全基準では、スピード抑制のために現在のF1同様にフロントノーズを低い位置に設置しなければならない。これによりダウンフォースも大きく失われることになるのだが、ダラーラ社はモノコックの位置をはじめ各部を細かく工夫しダウンフォースの確保に成功。レース中の追い抜きをさらに増やすべく、主に車体下部のフロア部分を中心にダウンフォースを稼ぐ構造にしている。

 さらにマシンの俊敏性や旋回性を向上することでオーバーテイクのチャンスを増やすべく、フロントタイヤの幅も広くすることを決定。これによりタイヤ接地面積が大きくなり、より曲がりやすいマシンに仕上がった。

ドライバーたちのコメント「さらにコーナリングスピードが速くなった!」

国本雄資(KONDO RACING)

国本雄資(KONDO RACING)

Photo by: Tomohiro Yoshita

 今年3月、鈴鹿サーキットに今季参戦を予定している全20台のSF19が揃い、テスト走行がスタートした。その前に行われた「鈴鹿モースポフェス」が全20台の初お披露目の機会となったのだが、そこで山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が早くも1分36秒267をマーク。翌日から始まった公式合同テストではアレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)が1分35秒904を叩き出し、早くもコースレコードを上回った。

 実際に鈴鹿サーキットのS字コーナーを駆け抜けていく姿は、SF14の頃よりも明らかに速くなっており、まさに“異次元の領域”に突入したといっても良いものだった。

 特に鈴鹿サーキットでのSF19の印象を各ドライバーに訊くと、ほぼ全員が揃って“コーナリングスピードが上がった分、体力的にキツくなった”と回答していたのが印象的だった。実際に、富士の合同テストでは体への負担を軽減するためにシートを作り直しているドライバーがかなり多かった。それだけ、このSF19は操る側もさらにシビアなものを要求されている。

 実際に数名のドライバーにSF19についての印象を訊いてみた。

平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)

「コーナリングスピードが速くなった分、体にかかる負担が大きくなっています。3月の鈴鹿テストでも久しぶりにスーパーフォーミュラに乗って、疲れを感じるほどでした。富士の100RとかはSF14の時よりも明らかに速くなっているので、首(にかかる負担)はけっこうキツイです。多分、レースは……(体力的に)よりしんどくなると思います」

牧野任祐(TCS NAKAJIMA RACING)

「昨年まで乗っていたF2と比べるとコーナリングスピードは本当に速いし、3月に鈴鹿でテストした時は本当に体がキツかったです。そういった意味では乗っていてすごく楽しいですけど、フィジカル的にはきついかなと思います」

ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)

「ストレートスピードは遅くなったけど、コーナーがすごく速くなった印象だ」

小林可夢偉(carrozeria team KCMG)

「ソフトの新品タイヤで100Rが初めて全開で行けたんですけど……ちょっと速すぎないか? と思うくらい、速いです」

福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)

「SF14と比べてコーナーが速くなった印象です。フロントタイヤの幅が広くなったことも多少は影響していると思いますが、クルマ自体のダウンフォースが増えたので、そこが大きいと思います」

 現在の鈴鹿でのスーパーフォーミュラのコースレコードは、中嶋一貴が2017年に記録した1分35秒907。おそらく、コンディションが悪くなければ、この記録は今週末塗り替えられ、どこまでタイムが伸びていくのかに注目が集まる。

“よりオーバーテイクの機会を増やすマシンに”……SF19から新たな試みもスタート

小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG

小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG

Photo by: Tomohiro Yoshita

 このSF19では、よりオーバーテイクの機会を増やすための試みも行われている。SF14ではマシンの上側でダウンフォースを主に稼いでいたが、よりフロア下でダウンフォースを稼ぐデザインに変更された。

 さらに、2009年から導入されているオーバーテイクシステムの運用方法を今年は大幅に変更。100秒間を自由に区切って使えるようになるのだが、1度使用すると100秒間の使用制限がかかるなど、より戦略性が求められるなど、見どころが多くなっている。

 こういった要素が組み合わさることで、最近では空力が進化し接近戦のバトルが難しくなってきているフォーミュラカーのレースで、豪快なオーバーテイクシーンが数多く見られるかもしれない。

 

Photo by: Masahide Kamio

 これまで、5シーズンにわたって活躍してきたSF14。その最終レースとなった2018年は多くのモータースポーツファンの記憶に残る名レースとなった。シリーズチャンピオンを獲得をかけ、山本尚貴とニック・キャシディが一歩も譲らぬ白熱したバトルを展開した。レース後には、グランドスタンドのファンが総立ちで二人を迎えるなど、感動的なシーンとなった。

 これ以外にも数々の名ドラマ・名シーンを生んできたSF14から様々なノウハウと想いが引き継がれ、いよいよSF19が実戦デビューする。

 今度も名バトルが繰り広げられることになるのか……国内トップフォーミュラの新たな1ページが、今週末の鈴鹿サーキットから始まろうとしている。

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この記事について

シリーズ スーパーフォーミュラ
執筆者 Tomohiro Yoshita