「みんなフラフラしていた」雨のスーパーフォーミュラSUGO戦でドライバーたちが一様に訴えたグリップ不足。要因は複数存在か

ウエットレースとなったスーパーフォーミュラ第3戦SUGOでは、雨量がそれほど多くないにもかかわらずほとんどのドライバーがグリップ不足を訴えた。

Ren Sato, PONOS NAKAJIMA RACING

Ren Sato, PONOS NAKAJIMA RACING

写真:: Masahide Kamio

 スポーツランドSUGOで行なわれたスーパーフォーミュラ第3戦は、ウエットコンディションの中でクラッシュが多発し、レーシングスピードで走ることはほとんどなく赤旗が出されて途中終了となった。確かに路面が濡れていて、霧により視界が悪いという悪コンディションであったが、ドライバーたちはいつものウエットレースとは違う違和感を覚えていたようだ。

「みんなグリップしていなかった印象です。あの状況の中でレースは難しかったのかなと思います」

 そう語ったのは、ThreeBond Racingの三宅淳詞だ。

「とにかくリヤのグリップがありませんでした。僕の前のマシンもみんなフラフラしていたので、(要因は)タイヤなのかコンディションなのか……みんなグリップしていませんでしたね」

写真: Masahide Kamio

「(タイヤが)作動してないなと思いました。アクセルをちょっと踏んだらホイールスピンするし、荷重をかけたらすぐ抜けてしまうし……」

 三宅と同じく、タイヤが発動していなかった印象を受けたと語ったのが、佐藤蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)。今回のレースは雨量的にはそれほど多くなかった中で、各車がマシンコントロールに苦しんだことに首を傾げていた。

「正直、セットアップ云々というよりもタイヤが発動していないような状況でした」と佐藤。

「雨量が多くてハイドロ(プレーニング)が起きるという状況は多々ありますが、レースをしていたタイミングではダンプの(路面の水量が少ない)状況で、その中でグリップを失って飛んでいってしまう状況でした。そこに関しては対策を考えていく必要があるのかなと思います」

「ゴムを発動させられない、といった印象でした。タイヤの温度がもう少し上がれば発動するのかもしれませんが、今回はそこまで寒いわけでもないですし……。ずっとアウトラップを走っているような状況でした」

 今回、特にコースオフが多発したのが最終コーナー。決勝前ウォームアップで山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)が、決勝レースでは大嶋和也(docomo business ROOKIE)と阪口晴南(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)がバリアの餌食となった。牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)もフリー走行の際に最終コーナーで突如リヤのスタビリティを失ったというが、「速度がかなり遅かったので、ギリギリフルカウンターで耐えることができた」という。

回収される山本のマシン

回収される山本のマシン

写真: Masahide Kamio

 最終コーナーは大きく右に回り込む高速コーナーで、SUGOで最もタイヤに負荷がかかる場所と言える。三宅も「僕はマージンを持って走っていましたが、あのコーナーは一番荷重、負荷がかかるコーナーなので、それに耐えられないのかもしれません。あそこに川があったようにも見えないので」と語る。

■グリップ不足には複合的な要因が?

 このように、路面の水量の多さよりもタイヤが発動しなかったことを訴えたドライバーたち。これには複合的な要因がありそうだ。

 スーパーフォーミュラにタイヤをワンメイク供給する横浜ゴムは、昨年途中から新しいウエットタイヤを投入した。これはドライタイヤにおいても行なわれている、サステナブル素材を活用するという取り組みの一環で、「性能を維持したままサステナブル比率を上げる」ことをテーマに開発されたものだという。

 横浜ゴムのプレスリリースによると「開発テストではタイムもその落ち方も、それまでのタイヤと大きな違いはないという評価を得られています」とのことだったが、新ウエットタイヤの投入からここまでは、今冬の鈴鹿テストの際に新タイヤを使ったドライバーがいた程度で、ウエットレースはなし。今回のSUGOが初の実戦投入となっていた。

写真: Masahide Kamio

 ただその新ウエットタイヤも、レーシングスピードでどういう振る舞いをするのか、十分なデータが得られたとは言い難いだろう。今回のレースでウエットタイヤが使われたのは日曜朝のフリー走行からだったが、岩佐歩夢(TEAM MUGEN)がハイドロプレーニングと思われる症状によりホームストレート上でスピン&クラッシュしたことで、各車ほとんど走行することなく赤旗終了。昼のウォームアップも同じく山本のクラッシュにより早々に赤旗終了となった。そして決勝レースも、そのほとんどがセーフティカーランとなったため、各車はタイヤの温度、内圧を上げづらい低速での走行を強いられた。

 さらに変わったのはタイヤだけではない。スーパーフォーミュラで直近の最後のウエットレースは2022年に遡るが、その際は『SF19』と呼ばれる車両が使われていた。しかし現在は車両が『SF23』に変わっている。

 SF23は車両後方の乱気流を抑制して追い抜きを促進するため、SF19と比べてダウンフォース量が減らされている。特にSF23導入当初は、フロントよりもリヤのグリップが少ないオーバーステアな傾向になったとフィードバックするドライバーもいた。

 松下信治(TGM Grand Prix)は、SF19時代の2022年に雨の鈴鹿戦で優勝を飾ったドライバーだ。そんな彼に、車両変更によるダウンフォース量の変化が今回のグリップ不足に繋がっていると思うかを尋ねると、こう答えた。

写真: Masahide Kamio

「それはあるかもしれませんね」

「低速域でのダウンフォースが減っている感覚があります。ウエットコンディションでタイムが落ちた時に、その(グリップしない)速度域になっているのかもしれません」

「最後の(ウエット)レースって、2年前ですよね。あの時と比べるとリヤタイヤは……フロントもそうですが、発動していない感じがしました。寒いとも思いませんでしたけどね」

 またその他にも、ダウンフォース量の変化だけでなく、今季からダンパーが共通化されたことの影響を挙げる声も聞かれた。現在はダンパーの共通化により、サードエレメントに減衰機能を持つ“イナーター”を使うことができなくなり、“スライダー”と呼ばれる減衰機能を持たない比較的簡素なものに置き換えられた。したがって、車両の荷重をうまく受け止めることが今まで以上に難しくなっていると思われるのだ。

 多くのドライバーが手を焼いたウエットコンディションのSUGO戦。ドライバーからは「ドライじゃないと(レース)できないという話になりかけている」と危惧する声も挙がっているが、7月の富士戦以降もウエットレースになる可能性は当然ある。今後シリーズ関係者はどのような形で対策を打ち出すことになるだろうか。

 

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