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スーパーフォーミュラ初ポール獲得のKCMG、舞台裏で行なわれていた配置転換。ベテランエンジニアが“福住担当1戦目”で得た手応えと今後の展望

スーパーフォーミュラ第4戦富士で福住仁嶺がポールポジションを獲得し、レースペースでも高いパフォーマンスを見せたKids com Team KCMG。今回のレースから福住の担当エンジニアが変更となっているが、その初戦でいきなり結果を残した要因と背景について話を聞いた。

Nirei Fukuzumi, Kids com Team KCMG

Nirei Fukuzumi, Kids com Team KCMG

写真:: Masahide Kamio

 富士スピードウェイで行なわれたスーパーフォーミュラ第4戦、Kids com Team KCMGはシリーズ参戦15年目にして初のポールポジションを獲得した。ポールシッターの福住仁嶺は、ピット作業でのタイムロスが響いてポジションを落とす憂き目に遭ったが、レースペースの良さを活かして追い上げを見せて4位フィニッシュ。勝ちを逃した悔しさは当然あるだろうが、チームにとっては光明が差す、そんなレースにもなっただろう。

 実は富士戦を前に、福住が乗るKCMGの8号車はエンジニア体制の変更があった。今回(厳密には2週間前の富士公式テスト)から担当のトラックエンジニアが田坂泰啓氏に変わり、開幕3戦での担当だった笠井昭則エンジニアはテクニカルディレクターとしてチームを統括する立場となったのだ。

 田坂エンジニアはかつて中嶋企画(NAKAJIMA RACING)に所属し、2000年には今でも伝説となっている高木虎之介の“10戦8勝”に貢献するなど、様々な実績を残した。その後移籍したREAL RACINGには昨年まで所属し、スーパーフォーミュラでは最近までB-Maxのエンジニアも務めていたが、今年からKCMGで働くこととなった。KCMGの松田次生アンバサダーとはF3時代から25年来の付き合いであり、今回のチーム加入にも松田の推薦があったという。

 大ベテランの田坂エンジニアは、いわゆるオールドスタイルな、天才肌の感覚派エンジニアと評される。開幕当初は7号車の小林可夢偉を担当していたのだが、実は小林は開幕前テストの段階から、自身とのコンセプトや方向性の違いを感じ取っている旨をメディアに漏らしていて、両者のケミストリー(連携)構築に時間がかかりそうな雰囲気が漂っていた。

 結果的に7号車の担当エンジニアは、チームのコーディネーターである関口雄飛の推薦もありイタリア人のコシモ・プルシアーノに。田坂エンジニアはシーズン途中から8号車陣営の動きを観察して学習を進めた後に、富士テストから正式に福住担当エンジニアとなった。現在のオペレーションでは7号車に関口、8号車に松田がついていることから、KCMGはフォーミュラでの実績豊富な現役レーシングドライバーが自らの推薦したエンジニアと共にドライバーをサポートする、という贅沢な体制となっているのだ。

松田次生アンバサダーと田坂泰啓エンジニア(Kids com Team KCMG)

松田次生アンバサダーと田坂泰啓エンジニア(Kids com Team KCMG)

写真: Motorsport.com Japan

■苦手な富士で手応え掴んだ田坂エンジニア。しかし「ダメになった時が重要」と福住

 今季からトヨタ陣営に移籍してKCMGのシートを掴んだ福住は開幕当初からまずまずのパフォーマンスを見せており、開幕戦で6位、第2戦で8位に入ったが、チームとしてはトップ集団と争うための“あと一歩”のパフォーマンスを課題としていた。まさにそこが、富士テストでのテーマとなった。

 テストでは、田坂エンジニアが福住からのコメントに耳を傾け、セットアップについて考えを巡らす。その傍らには松田アンバサダーがおり、『SFgo』で各車両の動きを観察しつつ、現役ドライバーならではの視点も織り交ぜながら、ニュータイヤの使用本数などセッションの細かいオペレーションについて田坂エンジニアにアドバイスをしていたようだ。

 鈴鹿などのハイダウンフォースサーキットは「セットアップのイメージが湧きやすい」とする一方で、「ダウンフォースが少ない富士は元々あまり得意ではなかった」と語る田坂エンジニア。しかし「テストの最後の最後で『こっちの方向性かな?』という兆しが見えた。今回持ち込んだのは、その兆しを信じてそれをワンステップ進めたもの」だったという。

 結果的に、その方向性のセットアップにより予選・決勝共に高いパフォーマンスを発揮した福住号。富士では10月にも2レースが開催されるが、そこに向けてセットアップの方向性を定めることができたため、田坂エンジニアも安堵したようだ。

写真: Masahide Kamio

「あと2レース富士があるので、次来る時のイメージとして方向性を定めておきたかったんです。そうじゃないと次の富士でどう持ち込むか悩んでしまいますから」

 田坂エンジニアはそう語る。

「結果的にポールも獲れて、決勝セットも速かったし、俺個人的にはハッピー。やっと富士が分かりかけてきたなと。当然、気象状況が変わると『あれ?』となる可能性がありますが、暑い時期で方向性を探せたのは大きかったですね。涼しくなればダメなところでも(空気密度の変化によるダウンフォースの増加で)グリップしてくれる方向になるので」

 次戦以降に向けて明るい兆しが見えているKCMGの8号車だが、福住は「ダメになった時が重要」だと冷静だ。うまくいかない時こそ、チームの底力が問われると感じているからだ。

 福住は次のように語る。

「問題なのは、うまくいかなくなった時です」

「そこでどう(解決策を)見つけて脱出するかにおいて、エンジニアさんとの相性やコミュニケーションが必要になってきます」

「特に日本のレースでは、ドライバーもドライビングのことだけでなくクルマの知識を持っていないとダメだと思っているし、エンジニアさんもダメな時にどこまで細かくデータを見て分析して、正解を見つけられるかが大事になってくると思います。うまくいっていると良く見えますが、ダメになった時にどう脱出するかは大事ですね」

 

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