「さすがに気持ちが落ちます」残り2周で悲劇の主人公に。トラブルで優勝逃した太田格之進の“完璧だった”レース運び

トップ走行中、トラブルによるスピンでレースを終えた太田格之進。残り3周でチームメイトの牧野任祐からの猛攻を防ぎ切った時点で、勝利を確信していたという。

Kakunoshin Ohta, DOCOMO TEAM DANDELION RACING

Kakunoshin Ohta, DOCOMO TEAM DANDELION RACING

写真:: Masahide Kamio

 サーキット中からどよめきと悲鳴が上がり、そして涙がこぼれた。スーパーフォーミュラ第5戦もてぎで、チームメイトの牧野任祐を従えてトップを走っていた太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)は、残り2周の90度コーナーでスピンしてレースを終えた。しかも原因はミスではなくトラブル。不運としか言いようがない形で勝利を逃した。

 太田のスピンアウトが皮肉にもドラマティックで見る者の涙を誘うシーンとなったのは、太田自身が完璧なレース運びで今大会の“主人公”たる活躍をしていたことと無関係ではないだろう。

 2番グリッドからレースをスタートさせた太田は、序盤から首位の山下健太(KONDO RACING)をロックオン。ピットストップのウインドウオープンとなる10周目に山下がピットに向かわなかったのを好機と見るや、ピットに飛び込んでタイヤを交換。山下を“アンダーカット”することに賭けたのだ。

 その戦略は見事的中し、その後ピットに入った山下は太田の後ろに。しかしライバルは別に存在した。チームメイトの牧野だ。牧野はフレッシュタイヤの利点を活かして太田との差をみるみる縮めていく。一方ロングスティントを強いられている太田は、タイヤがタレてふらつくマシンを懸命にコントロールしてプッシュを続けた。

 しかしその差もついにはなくなり、残り3周でサイドバイサイドの戦いに。共にオーバーテイクシステム(OTS)を作動させながらの戦いとなったが、太田はヘアピン、90度コーナーとギリギリのところで牧野を抑えた。これでお互いのOTS残量はほぼゼロとなり、守る太田としては楽な状況になった……矢先のことであった。

 残り2周の90度コーナー、太田はコントロールを失ってスピン。止まったマシンは再び動き出すことはなかった。

 このスピンはスロットル系のトラブルによるもので、突然起きたことだという。太田は次のように説明する。

「(90度コーナーへの)ブレーキングからダウンシフトをする際にスロットルが戻りませんでした」

「スロットルペダルが奥に抜けてしまって自分の足のところからいなくなってしまった感じで、全開のままというわけではありませんでしたが、減速しきれずにコーナーに入っていきました。僕はスロットルペダルを踏んでいない状況ですが、スーパーフォーミュラは電子スロットルですから、スロットルがオンになったりオフになったりしていたのだと思います」

 上記の通り、完璧なレース展開を見せていた太田。それだけに落胆の色は隠せない。

Kakunoshin Ohta, DOCOMO TEAM DANDELION RACING

Kakunoshin Ohta, DOCOMO TEAM DANDELION RACING

写真: Masahide Kamio

「作戦もクルマも自分のドライビングも良かったと思います。残り3周で(牧野を)抑えた時は、僕の方がOTS残っていましたし正直勝ったと思いました。完璧と言ってもいい仕事をチーム共々やったと思います」

「ちょっと……さすがに(気持ちが)落ちますね。今は本当に無の状態です。なんでこんなことがファイナルラップ目前で起きるのかという感じです。レースのことは一瞬忘れたいと思うくらいですが、すぐにスーパーGT(鈴鹿戦)がやって来るので、頑張ります」

 今回の太田の戦いぶりに関しては、優勝した牧野も「今日は格之進のレースだった」と認める。そういった言葉も、傷心の身にとっては慰めにはならないのか? 太田にそう尋ねると、「いや、そんなこともないです」と一言。牧野には感謝していると語った。

「僕たちはライバルでありつつ、プライベートでも会う仲でもあるので、彼がそうやって言ってくれる事には元気付けられる部分もあります」

「僕としても(牧野に対して)素直におめでとうという気持ちです。彼には感謝しかないです」

 

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