スーパーフォーミュラ 第8戦:SUGO

優勝争いに影響与え、波紋を呼んだセーフティカー。運用は規則通り……一方で“モヤモヤ”解消のため改善を求める声

スーパーフォーミュラ第8戦SUGOのレース中盤に出動したセーフティカーは、優勝争いの展開に直接影響を与えたため、波紋を呼んだ。ただ規則上は問題のない運用であったようだ。

戎井健一郎

公開日時: 2026/08/09 12:56

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Safety car

写真:: Masahide Kamio

 スポーツランドSUGOで行なわれたスーパーフォーミュラ第8戦“東北大会”は、レース途中で出されたセーフティカー(SC)の運用を巡って紛糾。優勝を逃したイゴール・オオムラ・フラガ(PONOS NAKAJIMA RACING)は憮然、勝った福住仁嶺(NTT docomo business ROOKIE)も素直に喜びきれない、後味の悪いレースとなってしまった。

 まず、レースの流れをおさらいする。序盤はポールシッターの野尻智紀(TEAM MUGEN AUTOBACS)を、太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)とフラガが僅差で追いかける展開。野尻と太田はレース折り返しを迎える前にピットインしてタイヤ交換を済ませており、見た目上のトップはフラガ。7秒後方に福住、10秒後方に岩佐歩夢(TEAM MUGEN AUTOBACS)を従えていた。岩佐までの上位3台は、タイヤ交換義務を消化していなかった。

コースオフでSCの原因となったロマン・スタネックの車両

コースオフでSCの原因となったロマン・スタネックの車両

写真: Masahide Kamio

 そして27周目、複数のマシンがストップしたことで、イエローフラッグが出される。セーフティカー出動が濃厚なシチュエーションだったため、フラガはここでピットイン。コントロールラインをピットレーン上で通過し、トップで28周目を迎えた。そしてピット作業中にセーフティカー出動が宣言され……フラガは野尻と太田の前でコースに復帰することに成功した。事実上のトップ浮上、まさに思惑通りだっただろう。

 そんなフラガの眼前に、周回遅れのチャーリー・ブルツ(TEAM GOH)を従えるセーフティカーの姿が現れ、バックストレートで完全に追い付いた。しかし、そこに福住と岩佐の姿はない。彼らふたりはSCにキャッチアップされなかったためプッシュを続けたまま1周を周り、ピットイン。悠々とフラガの前に立ったのだ。

写真: Masahide Kamio

 そもそも福住と岩佐はフラガと同じ27周完了時にピットストップするという選択をしなかったわけだが、そこにはそれぞれに背景がある。

 まず福住に関しては、石浦宏明監督から「セーフティカーが出たらピットイン」という指示が出ており、SCが出されたタイミングでは28周目の1コーナーあたりにいた。一方の岩佐は、小池智彦エンジニアから27周完了時にピットインの指示が出されたが、この時岩佐はホームストレートを立ち上がっているタイミングであり、ピットレーンに向かうには手遅れであった。かくしてふたりはフラガより1周遅くにピットインする形となり、セーフティカーのキャッチアップから“逃れる”ことにも成功した。

 セーフティカーはフラガではなく福住をキャッチアップすべきだったのではないか? これが今回のレースの一番の争点である。確かにトップで28周目に入ったのはピットレーン通過中のフラガであるが、タイヤ交換中のフラガをステイアウトの福住が追い抜いてトップに立っているからだ。そして、SCは先頭車両を捕まえるのが“通例”となっているのも確かだ。

 レース中、そしてレース終了直後、当事者たちは非常に感情的になっていた。3位に終わったフラガはパルクフェルメでのインタビューで、普段の温厚な表情を一変させ「本当にありえないです。僕がなぜここ(3位)にいるのかも分からない」とコメント。「イゴールが本当に不憫」と語っていた4位の太田も、マシンを降りるや否や単身でコントロールタワーに乗り込もうとしてアスリート委員会委員長の山本尚貴に制される場面があった。

 ただし、この運用はレギュレーション上は問題のないものであったことは記しておく必要がある。

 スーパーフォーミュラにおけるセーフティカーの運用は、国際モータースポーツ競技規則 付則H項に準ずる。そのH項2.10.9の欄にはこう記されている。

写真: Masahide Kamio

「セーフティカーはオレンジライトを点灯させながらピットレーンからスタートし、レースの先頭車両の位置に関係なくトラック上に合流する」

 要するに、セーフティカーはコースの安全を保つために発令後は速やかにコースインをして競技車両をコントロールすることが先決であり、まず先頭車両を抑えなければならないといった条文は存在しないということだ。

 そして別の条文では、セーフティカーと先頭車両の間に車両がある場合は、競技長からの指示によって送り出しができるとされている。つまりセーフティカーは、まずコースに合流してブルツ、フラガらの隊列をキャッチアップ。そしてその隊列の最後方に“先頭車両”の福住が追い付いたため、その前にいる車両を送り出したということだ。

 NAKAJIMA RACINGの伊沢拓也監督もこの件についてSNSを更新。「私のミスジャッジでイゴールの勝てるレースを落としてしまいました。申し訳ありません。SCはトップを抑えるものだと勘違いしてたのが原因です。ちゃんと理解してたのが#14(福住)と#1(岩佐)だったと思います」と綴った。

レース後、伊沢監督らが話し合う

レース後、伊沢監督らが話し合う

写真: Masahide Kamio

 セーフティカーがコースインするタイミングも味方につけつつ、SC出動後にピットインする堅実な戦略で勝利を手にしたROOKIE Racingの仕事の価値は毀損されるべきではない。その一方で、多くの関係者やファンから聞かれる「モヤモヤするレースだった」という声も、単なる感情論で片付けるべきではないだろう。

 レース後にドライバーがメディアミックスゾーンで取材に応える際には上記の情報が整理されておらず、太田らも「何が正しくて何が間違っているのかも分からない」「気持ち任せに発言するのは控えたいですが……」と前置きしながらコメントしていた部分もある。その中でも、「もしかしたらルールが正しかったのかもしれませんが、全くスッキリしない、すごくモヤモヤしたレースになってしまいました」と心境を述べた。

 7位に終わった坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)も「非常に残念で仕方がない」とレースを振り返る。彼が指摘する点は、セーフティカーがキャッチしたドライバーが誰だったかだけではない。SCの出動が遅れた点も、先頭車両をキャッチできず混乱を生んだ遠因になったのではないかと話す。また先頭車両を抑えることを明文化することも選択肢のひとつに挙げた。

写真: Masahide Kamio

 そしてレース運営を行なう人々を慮りながら、このように提起した。

「運営側は色んなところから情報が入ってくるのでそれを処理するのは大変だと思いますが、人手が足りなさすぎるかなと。ブルーフラッグ対応、セーフティカー対応する人……今は宮沢さん(宮沢紀夫レースディレクター)が頑張って色々やってくれているのですが、ひとりじゃ追いきれないと思うので、これは今後の課題になってきます」

「起きた事象に対して対処することが多すぎるし、アタック妨害した車両へのペナルティなど様々なケースのルール化が曖昧で、ケースバイケースのことが多すぎて、ドライバーが気持ちよく走れないんです。『この場合はこう』と決めてくれたら、その中でやるので」

「僕がイゴール選手の立場なら発狂していると思います……(苦笑)。この結果は誰も気持ちよくないと思うので、早急にどうすべきかを話し合って、『なんとなくこれでいいや』で終わらないように、ちゃんと(教訓を)活かせるようにしてほしいと思います」

 

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