誇らしげな“AYASE PRIDE”の文字。綾瀬市との提携に夢膨らますB-Max Racing組田代表「いつか夏祭りで“公道ラン”を」
本拠地である綾瀬市と「綾瀬市の活性化に向けた連携協力に関する覚書」を締結したB-Max Racing Team。組田龍司総代表は、いつか公道を閉鎖してのデモランを開催したいと、その夢を語った。
10月25日、スーパーフォーミュラに参戦するB-Max Racing Teamが、本拠地である神奈川県の綾瀬市と「綾瀬市の活性化に向けた連携協力に関する覚書」を締結した。綾瀬市役所で行なわれた締結式では、連携を強めることになった経緯や、両者が今後目指すところなどについて語られた。
事の始まりは、今から約半年前の5月。4月のスーパーフォーミュラ第3戦鈴鹿で初優勝を飾ったB-Max Racingが、綾瀬市の古塩政由市長を表敬訪問したのだ。
B-Max Racingを率いる組田龍司総代表は鈴鹿戦の後、チームの広報担当から「優勝報告に行きましょう」と提案されたという。当初は「いやいや、そんなの聞いてくれるのかな」といった不安もあったようだが、打診をしたところ市が快諾。表敬訪問が実現した。
サーキットを訪れ、本山哲監督(左)、組田総代表(右)と話し込む古塩市長
Photo by: Masahide Kamio
古塩市長も、B-Max Racingの事業母体であり、組田総代表が社長を務める屏風浦工業の存在はかねてより認知していたものの、B-Max Racingの存在はこのタイミングで知ることになる。以来、古塩市長はモータースポーツが持つ魅力と環境対策への取り組みに触れ、その後B-Max Racingによる地元高校での特別講義やオープンファクトリー(工場見学)といったイベントの開催に繋がっていった。
そしてこの度、その連携をより一層強化しようと覚書の締結に至った訳だが、初顔合わせから半年というスピードで覚書を交わすまでに至った背景に何があったのか? 綾瀬市の担当者は次のように話す。
「B-Max様から、綾瀬市のPRのために、車両に無料でデカールを貼るというご提案をいただきました。そのため、市としてもB-Max様の想いだけにとどまらず、今回のような協定という形を作って、今後に繋げた方が良いものになるのではないかと考えました」
B-Max Racingが提案したというデカールは、今週末に鈴鹿サーキットで行なわれる最終ラウンドから早速お披露目される。しかも貼られる場所は、フォーミュラカーの中でも最も目立つ場所のひとつとも言えるサイドポンツーン。ドライバーの松下信治と同じ赤のレーシングスーツに身を包んだ市のマスコットキャラクター『あやぴぃ』と共に、『AYASE PRIDE』の文字が誇らしげに刻まれている。
本来であればステッカー掲載のために巨額のスポンサーマネーが必要なサイドポンツーンという枠を、無償で提供するというB-Max Racing。とはいえここは元々屏風浦工業のロゴが掲載されていた場所である上、お世話になっている綾瀬市をPRして自動車産業を活性化させたいという想いがあることから、無償掲載に抵抗はないと組田総代表は言う。
綾瀬市役所で行なわれた締結式。左から本山監督、松下、古塩市長、組田総代表、上野禎久JRP社長
Photo by: Motorsport.com / Japan
「屏風浦工業も長い間綾瀬市さんにお世話になっていますし、そこ(のスポンサーロゴ)を振り替えることに特段大きな影響、こだわりはありません。どうせなら目立つところがいいだろうと、大きくどかんと行こうよということです」
「綾瀬高校で講演をした時、若者の自動車離れと言われる昨今の中で、地域の人たちにモータースポーツを通じて自動車に興味を持っていただきたい、自動車産業に従事する人が増えたらいいなという思いを抱きました。そんな中で、今回のような形で自動車産業に関わりの深い綾瀬市をPRできるなら、というパッションに基付く行動でした」
また集まった記者からは、このステッカーを来季以降も掲載する予定はあるかという質問が飛んだが、組田総代表は「金銭的な話以外にも副産物的なメリットがあると思っているので、1年で止めることは考えていません。継続して長くやることがお互いにメリットを生むと考えています」と答えた。
財政的な支援が絡む、いわゆるスポンサー的な関係ではなく、お互いがお互いを広報・PRするような形で提携を続けていくという予定だという両者。週末のスーパーフォーミュラ最終ラウンドでは古塩市長も来場予定であり、年内には市役所庁舎での車両展示も計画されているなど、既に様々な形での連携が予定されている。
締結式に出席した松下も、レーシングドライバーとして新たなモチベーションを見出したようだった。
「僕はプロのレーシングドライバーとして、結果を出すことでキャリアアップしたり、メーカーやチームに喜んでもらえることだけを考えていました」
綾瀬高校では講演を実施
Photo by: B-Max Racing
「でも今は僕が結果を出すことで、地域の方々など、今までは枠の外にいた人にもアスリートとして影響を与えられるということはモチベーションになります。同時にプレッシャーにもなりますが、最終戦で来年に繋がる良い走りがしたいです」
記者からの質問も一通り終わり、締結式が終了を迎えようとしていたところ、組田総代表が「ちょっと最後にいいですか」と一言。自らの野望について明かした。
「これは僕の夢というか要望ですが、夏祭りなどの時に公道を閉鎖して、スーパーフォーミュラのマシンに松下を乗せて一般の人の前で“公道ラン”をすることが夢です。ぜひその実現に向けて市の方にはご尽力いただけたらなと思います。東京でもF1(のデモラン)なんかやってるじゃないですか。そういうのを綾瀬市でもやりたいなと思っています」
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