ジョホールバルの歓喜、アレジ初優勝……サッカー&F1実況で知られる長坂哲夫アナが久々の“モータースポーツ実況”「ガソリンの匂いで時間が逆戻りした」

かつてF1やサッカーをはじめとするスポーツ中継の実況担当として活躍した長坂哲夫アナウンサーが、『Fサーキット2023』のフォーミュラカー走行で実況を担当。久々の“モータースポーツ実況”で、当時の記憶が蘇ってきたという。

長坂哲夫アナウンサー

 Jリーグ・川崎フロンターレの主催試合にて、スーパーフォーミュラの車両が場内トラックや園内道路を走行し、大盛り上がりとなった『Fサーキット2023』。ドライバーを務めた関口雄飛や、JRP会長としてシリーズのPRにやってきた近藤真彦と共に、その盛り上がりに一役買ったのが、フリーアナウンサーの長坂哲夫氏だ。

 長坂氏と言えば、フジテレビのアナウンス部在籍時に様々なスポーツ中継で実況を務めた。サッカーでは、日本代表がワールドカップ初出場を決めた試合、いわゆる“ジョホールバルの歓喜”で、岡野雅行のゴールデンゴールによる劇的勝利の興奮を伝えたことでも知られる。

 また1990年代中盤から2000年代初頭にかけては多くのF1グランプリ中継で実況を担当。初実況は、ジャン・アレジが涙の初優勝を果たした1995年カナダGP。以後世界各国を転戦して現地取材し、臨場感あふれる実況でレースを盛り上げた。

アレジが優勝した1995年のF1カナダGP

アレジが優勝した1995年のF1カナダGP

Photo by: Sutton Images

 2009年にアナウンス室を離れてからは長らくフジテレビの報道記者として活動した後、2022年春に早期退職。フジテレビ時代に携わった防災関連の活動を引き続き模索している中で、スポーツ中継のオファーも舞い込むようになったという。そして現在、MLBや総合格闘技のRIZIN、さらにはJリーグの実況を務めている。

 長坂氏は昨年秋にフロンターレのイベントで実況を務めたという縁もあり、今回のオファーを受けたという。Fサーキットはモータースポーツとサッカーのコラボイベントだが、モータースポーツとサッカー両方で実況経験があり、近藤会長とはフジテレビF1中継時代からの旧知の仲である長坂氏は、まさにこれ以上ない人選であったと言える。イベントトークショーでも、近藤会長との軽妙なやりとりで会場を沸かせていた。

長坂アナウンサー、近藤会長、関口によるトークショー

長坂アナウンサー、近藤会長、関口によるトークショー

Photo by: Takahiro Masuda

 アナウンス室を離れる直前にもF1実況を担当したこともあるが、モータースポーツの実況からはそれ以来約15年ほど離れていたという長坂氏。レースではなくデモ走行イベントとはいえ、フォーミュラカーがエンジン音を轟かせて大観衆の下で駆け抜ける姿を、久々に“実況”した訳だが、F1中継に携わっていた当時のことがフラッシュバックしたという。

「ガソリンの匂いやオイルの焼ける匂いを嗅いだ時に、時間が逆戻りして、あの時の感覚になることができました。マシンとクルーが会場に入ってきた時は、自分の中でも興奮や胸の高鳴りがありましたね」

 長坂氏は今でも、F1中継を視聴するなどモータースポーツを追いかけているようで、「仲間の感覚というとおこがましいですが、ついついそういった感覚で見ていました」と語る。曰く、スポーツの中でも特に実況が難しいモータースポーツに「育てられた」という意識も強いという。余談にはなるが、件のトークショーでは近藤会長も、モータースポーツを「自分を成長させてくれた場所」と表現していた。

「モータースポーツは自分の中でのDNAというか、自分を育ててくれたスポーツだと思っているので、切っても切れない関係ですね」と長坂氏は言う。

「モータースポーツは自分が実況したスポーツの中でも一番難しいです。実際には生身の人間が汗水かいているけど、ドライバーはコクピットの中でヘルメットのバイザー越しに目が見えるだけなので、考えていることや表情を実況しにくい。それでも操っているドライバーを主語にして、その人たちの奮闘ぶりやチームの戦略など、人間ドラマという部分をいかに出すかに苦労していました」

 そんな長坂氏に、「もし今後モータースポーツのレース実況の仕事が舞い込んできたら」という話題を向けると、次のように話した。

赤寅をドライブする関口

赤寅をドライブする関口

Photo by: Takahiro Masuda

「声をかけていただければ自分も意気に感じますし、やるとなったらきっちりと勉強したいです」

「その日頼まれてすぐにできる訳ではないので、足しげくサーキットに通って、皆様にお届けするに値するものができるのであればやらせてもらいたいし、そういう欲はあります」

「とはいえ、今実況されている方々も素晴らしいと思います。『自分だったらこう喋るな』という見方は意外としていなくて、純粋に楽しんで見ています。だから歳とったのかな、とも思いますが(笑)」

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