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レーシングカーは奥が深い! トップエンジニアでも”計り知れない”世界

開幕が迫る2021年シーズンに向けて、富士スピードウェイで行なわれたスーパーフォーミュラの合同テスト。トップエンジニアをしても、レーシングカーは奥が深く、まだまだ計り知れないのだという。

タチアナ・カルデロン Tatiana Calderon(ThreeBond Drago CORSE)

写真:: Masahide Kamio

 いよいよ開幕が近づいた2021年のスーパーフォーミュラは、開幕戦の舞台となっている富士スピードウェイにおいて3月23日から2日間のスケジュールで今年第2回目、そして開幕前としては最後となる合同テストを行なった。

 国内モータースポーツにおいては、最高峰に位置付けられるカテゴリーが2つあって、フォーミュラカーとスポーツカー、それぞれの最高峰がトップカテゴリーとして位置付けられてきた。例えば1970年代は全日本F2000選手権と富士グランチャンピオン(GC)シリーズ、80年代は全日本F2/F3000選手権と全日本耐久。ここには全日本ツーリングカー選手権(JTC)などもあって微妙な部分もあったが、94年に全日本GT選手権(JGTC。現スーパーGTシリーズ=S-GT)が本格的に始まって以降は、これがスポーツカーレースの最高峰として確立。トヨタと日産、ホンダの3メーカーが鎬を削りながら発展の一途を続けて現在に至っているのはご承知の通り。

 その一方でトップフォーミュラは、全日本F3000選手権が発展して誕生したフォーミュラ・ニッポン(FN)から現在のスーパーフォーミュラ(SF)へとトップカテゴリーが繋がれてきている。このような状況の下でドライバーには、2つのカテゴリーで活躍していることがトップドライバーの証、とされてきた。星野一義さんを筆頭に関谷正徳さんや鈴木亜久里さんといったお歴々はもちろん、FNとS-GTで何度も王者に輝いた本山哲や松田次生らも2つのトップカテゴリーで活躍してトップドライバーと認められた経緯がある。念のために注釈をつけておくと、今シーズンもS-GTでNISMOのエースナンバーを背負って走る松田は当然現役なので”さん”の敬称は省略したが、今年GT300で実戦復帰する本山にも敬意をこめて敬称を省略している。ということで話は戻る。

 ドライバーが、2つのトップカテゴリーで活躍して初めてトップドライバーと認められるなら、ドライバーとともにクルマを仕上げていくエンジニアも、2つのトップカテゴリーで活躍して初めてトップエンジニアとして認められるということになるだろう。

 今回はそんなトップエンジニアに、開幕前に行われるSFとS-GTのテストの違いについて訊ねてみた。SFでは合同テスト(以前は公式合同テストと称していた)と呼んでいるがS-GTでは公式テストと呼んでいる、といった言葉遊びではなく、本質的な違いについてなので為念。

 話を聞かせてくれたのはSFでNo.12 タチアナ・カルデロン(ThreeBond Drago CORSE)を担当している伊与木仁チーフエンジニア。S-GTでは昨年、TEAM KUNIMITSUのチーフエンジニアとしてNo.100 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐)のタイトル獲得に貢献したことで知られているが、株式会社本田技術研究所 SAKURAの佐伯昌浩Honda GT プロジェクトリーダーが「最終戦で山本選手が『2位で完走するよりも勝負したい。行かせてください!』と無線で言ってきたとき『じゃあ行っていいよ!』と即断した。あれには感動しました」と言ってエンジニア賞だと評価していた名匠だ。

 タチアナがSFで活躍しているかは論が分かれるところだが、以前……大変古い話で恐縮するのだが……鈴木亜久里が全日本F3000でチャンピオンを獲得してF1にステップアップを決めた時のチーフエンジニアだった、と言えばトップフォーミュラで活躍した、と納得してもらえるだろうか。

 さてSFとS-GTのテストの違いだ。S-GTではテストの最大のテーマがタイヤの選択と確認であることは広く知られている。これはタイヤメーカーの開発競争が行なわれているからで、GT500クラスでは大多数のチームに供給しているブリヂストンに、ミシュランとダンロップ、ヨコハマの3メーカーが2~3チームに供給して挑戦を続けている。だからテストでは、予選/決勝の本番に向け、当日のコンディション(主に気温と路面温度)を想定して一発のタイムが出せ、なおかつ本番を戦うに十分なロングライフを持っているかどうかを確認することが最大のテーマとなっている。

 それではタイヤがヨコハマのワンメイク(正確にはワンスペック)のSFでは、何がテストのテーマになっているのだろう? そんな素朴な疑問を投げかけてみたら「クルマを知ること」と、これまた素朴な答が返ってきた。

「SFは去年から久しぶりに始めたので、チームとしても、正直自分自身でもSF19というクルマがまだよく解っていないんです。それでは去年、チャンピオンを獲ったNSX-GTを解っていたかというと、それも正直疑問が残る。まだまだわかってなかった部分もあるんじゃないか」と伊与木エンジニア。

 そして「こんなコンディションで、ここをこう変えたらクルマ(の挙動や反応)がこう変わった。そんなデータが少ないからテストでいろいろ試してみるんです」と続けた。考えてみればアジャストできる軸がいくつもあるから、その組み合わせは無限大。だから、ダンパーを1ノッチ固めたら……なんて考えている一般人のレベルでは計り知れないくらい「レーシングカーは奥が深い(伊与木エンジニア)」ということになる。

 だから伊与木エンジニアは口にしていなかったが、SF14からSF19に車両変更しながらずっとSFを戦ってきているチーム/エンジニアにとってもまだまだ計り知れない部分があるということなのかもしれない。

タチアナ・カルデロン(ThreeBond Drago CORSE)

タチアナ・カルデロン(ThreeBond Drago CORSE)

Photo by: Masahide Kamio

 また伊与木エンジニアはSFとS-GTの違いについて、こんな興味深い話を打ち明けてくれた。「S-GTでは、特にGT500ではメーカーのスタッフと一緒にやっていくので彼らが持っているデータを参考に進める部分があるけれど、SFではチームの了解は必要だけど、自分がこれまでやってきて(自分の中に)蓄積されているデータで思ったようにできる」というのだ。

 ただその一方で「いろいろなことで“デジタル化”されていくので、その流れから振り落とされないようにしていくので精一杯」とも。レースを取材するライターやカメラマンも、デジタル化の名のもとに周辺の状況が変化していく中で、機材を変えながら、新しいソフトウェアを使いこなせるように頑張っているのだが、間違いなくそれよりもはるかに高いレベルで頑張っているであろうことは想像に難くない。分厚いノートに細かい数字をメモしていくのが“かつての”エンジニア像だったが「今や皆、タブレット(端末)持っているからね」と伊与木エンジニア。

 さて、最後になったが伊与木エンジニアが担当しているタチアナの評価も訊いてみた。外観からは首が厳しそう、との印象があるのだが「テストなどで2日間で4セッション、計8時間走ると少し厳しいかもしれないけど、レースではたぶん何の問題もないと思うよ」とのこと。

 そして成績に関しても「クルマに慣れたら中団まではいく。しかしそこから先は難しいかな。そこから先はセンスの問題もあるから。海外で走ってきた成績を見て、そう判断している。でも、ここまで(速く)走っている女性ドライバーは、これまでいなかったと思う。自分としてはそう評価しています」と、現状からすれば上々の高評価。

 そして「だけど、彼女が中団を走って何回もポイント取るようになったらエンジニアの評価がまた高くなるよね」と、彼らしいジョークで締めくくった。伊与木エンジニアの評価が高まるかはともかく、タチアナの今シーズンにも注目してみたい。

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