雨のSF富士で予選トップ3に入ったブラウニングとオサリバン。知られざる数奇な“腐れ縁”|英国人ジャーナリスト”ジェイミー”の日本レース探訪記
日本を拠点に活動する英国人ニュースエディター、ジェイミー・クラインによるモータースポーツコラム。今回のテーマは、スーパーフォーミュラ第6戦で予選トップ3に入ったふたりのイギリス人、ザック・オサリバンとルーク・ブラウニングについて。
Zak O'Sullivan, TEAM IMPUL
写真:: Masahide Kamio
先月富士スピードウェイで開催されたスーパーフォーミュラの瑶子女王杯で、日本のトップフォーミュラ史上初めての出来事は起こりました。もちろん、トップ3記者会見で虫が出た話ではないですよ!
私が言いたいのは、土曜日に行なわれた第6戦の予選順位についてです。ここではザック・オサリバンがポールポジション、ルーク・ブラウニングが3番手を獲得しましたが、イギリス人ドライバーが予選トップ3にふたり入るというのは、どうやら初の事例のようです。
スーパーフォーミュラでは、全日本F2000選手権と呼ばれていた1975年のブライアン・ヘントン、ピーター・ゲシンを皮切りに、数多くの英国人ドライバーが参戦してきました。ただ、1992年にエディ・アーバインとアンドリュー・ギルバート=スコットが共にグリッド2列目に並んだという事例こそありますが、予選トップ3にふたりという事例はなし。決勝に関して言えば、2002年にラルフ・ファーマンとリチャード・ライアンが共に表彰台に登った例があるのですが。
イギリス人ふたりが上位からスタートした決勝レースでは、オサリバンが太田格之進に敗れながらも2位という見事な結果を残しました。そこで今回は、改めて彼とブラウニングのこれまでの歩みを振り返り、ふたりの未来に想いを馳せるのも悪くないと考えました。
オサリバンとブラウニングは共に、イギリス国内で4輪レースのキャリアをスタートさせました。最初に参戦したのは共にジネッタ・ジュニア選手権というスポーツカーのレース。同カテゴリーは14歳という若さで参戦できることもあり、若手ドライバーの登竜門として長年ポピュラーな存在です。あのランド・ノリスもここからキャリアをスタートさせています。
ブラウニングは2017~2018年、オサリバンは2019年にジネッタ・ジュニアで経験を積みました。ちなみにオサリバンはこの年に年間2位に入っているのですが、チャンピオンは奇しくも後にスーパーフォーミュラでKONDO RACINGのシートを争うことになるジェームズ・ヘドリーでした。
ブラウニングとオサリバンが初めてサーキット上で直接対峙するのは、2020年のイギリスF4でした。この年ふたりはタイトルをかけて争い、戦いはブランズハッチで行なわれた最終ラウンドまでもつれ込みました。
結果は4ポイント差でブラウニングがチャンピオン。最終レースは雨によって短縮されハーフポイントになりましたが、もしこれが通常通りフルポイントになっていたら、このレースを制したオサリバンに王座が転がり込んでいました。また、当時のふたりはコース上で接触することも多く、仲もあまり良くなかったといいます。
翌2021年はオサリバンはGB3にステップアップしてタイトルを獲得する一方、ブラウニングは資金難もあってドイツのADAC F4で足踏み。ただGP3のオウルトンパーク戦にはスポット参戦し、優勝を記録しました。ちなみにこのラウンドでもふたりは接触がありました。
オサリバンはGB3チャンピオン獲得によって英国オートスポーツBRDCアワードを受賞し、ウイリアムズ育成ドライバーとなりました。ブラウニングはそれを追いかけるような形で、2022年のGB3を制し、同じくオートスポーツBRDCアワード受賞→ウイリアムズジュニア入りを果たしました。
年齢的にはブラウニングがオサリバンの3歳年上ですが、ここ5シーズンはブラウニングがオサリバンの後を追うような形でステップアップを続けてきました。それはFIA F3、FIA F2、そして現在のスーパーフォーミュラでも同じです。しかもスーパーフォーミュラでも、オサリバンが抜けたKONDO RACINGにブラウニングが加入する形となりました。
ただ、ふたりの間にある大きな違いを挙げるとするならば、ブラウニングがウイリアムズF1チームのリザーブドライバーまで上り詰めた一方、オサリバンは2024年のF2でのARTグランプリの戦闘力不足と自身の資金難も重なり、この年限りでウイリアムズから放出されてしまったということです。
かつてはピリピリしていたふたりの関係も、今でははるかに友好的なものになっています。その背景には、共に日本でレースをしているということもあるでしょう。ヨーロッパのシングルシーターから日本へと活動の場を移した外国人ドライバーなら誰もが直面する困難や苦労を、ふたりは共有しているのです。
スーパーフォーミュラではオサリバンが1年先輩ということになりますが、ここまで7戦を終えた時点で、両者のポイント差はわずか5点です。最終的にどちらが上回るのかは非常に興味深いところです。
もっとも、来年以降、ふたりの道は再び分かれる可能性が高いと言えます。
ブラウニングは今なおF1昇格を目指しており、来季のウイリアムズのレギュラーシートに空きが出ることを期待しているのは言うまでもありません。可能性があるとすれば、カルロス・サインツJr.がチームを離れる場合だけでしょう。いずれにしても、たとえより魅力的なシートが空いていたとしても、ブラウニングがスーパーフォーミュラに2年目も参戦することに大きな関心を持つとは考えにくいです。
またアメリカでは、ブラウニングはインディカーのチームからも関心を集めていると報道されていますが、本人は交渉が行なわれていることを否定しています。
一方のオサリバンについては、来季も日本で戦う可能性が高そうです。
彼はスーパーフォーミュラのドライバーとしての生活に馴染んできただけでなく、スーパーGTのGT300クラスにもCarGuy MKS Racingから参戦しており、GT500へのステップアップにも強い意欲を示しています。
またオサリバンはフォーミュラEではエンヴィジョン・レーシングのリザーブドライバーも務めています。フォーミュラEは来季から高速のGEN4マシンへと移行しますが、オサリバンが日本で好パフォーマンスを続けて自身の評価を高めることができれば、2028年以降に同シリーズへ移籍する可能性も出てくるでしょう。
今後もスーパーフォーミュラの海外での認知度が高まり続ければ、将来的にイギリスから日本へやって来てレースを戦うドライバーは、さらに増えていくことでしょう。しかしながら、ブラウニングとオサリバンほどキャリアが密接に絡み合ったふたりが再び現れる可能性は低いのではないでしょうか。
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