野尻智紀の超が付くストイックさの源泉はバンドーンにあり? 共に王者となった今「またストフェルと同じチームで戦いたい」

野尻智紀は、2016年にスーパーフォーミュラでストフェル・バンドーンとチームメイトとなったことで自らの考え方を見直すきっかけになったといい、またいつか同じチームでレースがしたいと語った。

ストフェル・バンドーン(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)

 2021年のスーパーフォーミュラでチャンピオンに輝き、今季も最終鈴鹿大会を残してタイトルに王手をかけているTEAM MUGENの野尻智紀。2014年のデビュー以来、様々な紆余曲折を経て強さを手に入れた野尻だが、2016年にストフェル・バンドーンとチームメイトになったことも転機のひとつになったようだ。

 当時、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGからスーパーフォーミュラにデビューして3年目だった野尻は、チームメイトに前年のGP2(現FIA F2)王者であるバンドーンを迎えた。F1ドライバー予備軍としてこれ以上ない実績を引っさげて来日してきたバンドーンに、野尻はいくつかのカルチャーショックを覚えたという。

 彼は昨年スーパーフォーミュラ公式サイトで公開されたインタビューの中で次のように語っていた。

「ストフェルはこれまで誰も教えてくれなかったことをやっていました。だから”こういう風に走るんだ”と、すごく好奇心が湧いてきて、そこから僕も走りに対してより考えるようになりました」

「たとえ1周のタイムが同じでも、やっていることが全然違うんですよ。ちなみに、今でもストフェルのデータロガーの紙は持っています(笑)」

 

Photo by: Yasushi Ishihara

 そんな野尻に、バンドーンをチームメイトに迎えての1年について改めて話を聞いた。すると野尻は、バンドーンのレースに対するストイックな姿勢を間近で感じ、それが自らの考え方に影響を与えるきっかけになったと明かした。現在はスーパーフォーミュラのドライバーの中でも1、2を争うほどストイックなことで知られる野尻だが、その源泉はバンドーンと戦った1年にあるのかもしれない。

「正直それまで、明確にチームメイトに差をつけられたということがありませんでした。もちろん(それまでのチームメイトに対しても)セッションによっては負けることもありましたが、明確に『これ無理だろ』という差を感じたことはありませんでした」

 野尻はそう振り返る。

 

「あの時の僕にとっては大変な時期でしたが、こういう風に走らせるんだ、こういう風に仕事を進めるんだ、ということが勉強になりました」

「彼は少し結果を出したところで満足していませんでした。あの時の僕は優勝から遠ざかっていたので、表彰台に乗っただけで嬉しいなと思っていました。でも彼は優勝してもすぐに、次の優勝に向けてどうするべきか課題を見つけて取り組んでいました」

「当時の彼はそんなに遊んでいる印象もなかったですし、F1に向けて死に物狂いでやっているというのを感じられました。そこは見習うべきだなと思いましたし、そういったものを間近で見られたことは良かったと思います。自分はまだまだ本気になれていないな、というのを実感しました」

「例えば走りに対しても、『こんなもんだろう』『これ以上は厳しいだろう』と自分自身で線を引いていたところがありました。でも彼が一番近くにいてくれたことで、自分の中に新たなベンチマーク(指標、目標)が見えました」

 バンドーンは同年のスーパーフォーミュラでルーキーながら2勝を挙げ、タイトル争いにも絡む活躍でランキング4位に。翌2017年にF1フル参戦デビューを果たした後フォーミュラEに転向し、2021-2022シーズンは見事ワールドチャンピオンに輝いた。

 その後はお互いその舞台は違えど、野尻とバンドーンはシングルシーターの世界でキャリアを重ねた。そして片や世界選手権、片や日本の最高峰カテゴリーで頂点に立ったのだ。

 

Photo by: Masahide Kamio

「欲を言うなら、また彼と戦える時が来ればいいなと思いますね」

 野尻はそう切り出した。

「それも違うチームではなく、同じチームで」

「向こうはそんな風に見ていないかもしれませんけどね(笑)。でも僕は負けていた側なんで、彼に対してどこまで追い付いたのかも知りたいです」

 
 
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