スーパーフォーミュラ 第1戦・第2戦もてぎ

追い求めてきたのは“強さを上回る速さ”——野尻智紀、SF参戦100戦を突破。今噛み締める「10年やって初めてプロ」という言葉の意味

トップフォーミュラ参戦100戦目を迎えた野尻智紀は、自らがプロとして必要とされる限りは走り続け、200戦目を目指したいと語った。

戎井健一郎

公開日時: 2026/04/07 7:07

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Tomoki Nojiri, TEAM MUGEN AUTOBACS

写真:: JRP

 2026年のスーパーフォーミュラ開幕戦もてぎで、TEAM MUGEN AUTOBACSの野尻智紀はシリーズ参戦100戦目を迎えた。レース後にはこれを記念した記者会見が実施され、ホンダ・レーシングの渡辺康治社長や、トヨタ自動車の会長で日本自動車会議所の会長でもある豊田章男氏らが祝福に訪れた。

 野尻は2014年にDOCOMO TEAM DANDELION RACINGからスーパーフォーミュラにデビューすると、同年のSUGO戦で初優勝を記録。以降はなかなか勝利に届かないシーズンが続くが、2019年にTEAM MUGENに移籍すると一気に開花し、2021年、2022年には2年連続でシリーズチャンピオンに輝いた。

 今やホンダを代表するドライバーのひとりとなった野尻だが、2021年にスーパーフォーミュラ王者になるまで4輪カテゴリーでシリーズチャンピオンを獲得した経験はなく、若手時代は苦悩の日々を過ごした。

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写真: Masahide Kamio

「長らく結果が出ない時期がありました。その中で、僕の何を信じてくださっていたのか僕には知ることはできませんが、何かしら評価をいただいて、チャンスをいただけたからこその100戦だと思っています」と野尻は言う。

「正直、僕を乗せないという決断は容易かったんじゃないかという時期もあったと思いますが、それでも毎年僕を起用してくださって感謝の気持ちでいっぱいです」

 現在野尻はトップフォーミュラ参戦13年目で、今年37歳となる。彼は自分の実力が及ばなくなった時はレースシートから降ろすという決断をしてほしいと語った一方で、その時が来るまでは走り続け、200戦目を目指したいと述べた。

「次は200戦を目指したいという気持ちも当然ながらあります。プロの選手として常に高いパフォーマンスを示し続けたいという気持ちが、200戦を目指したいというところに繋がっています」

「プロの選手として自分がものすごく努力して、それでも及ばなかった時『野尻は乗せない』『野尻じゃないドライバーの方がいい』という判断が下されるべきだと思っています。その判断が下されるまで必死に頑張り続けるというのが、僕のプロとしての理想でもあるのかなと」

「ダメだったらその時はいつでもドライな判断をしてくださっていいと思っていますので、その時まで必死に走り続けたいです」

 野尻のレーシングドライバーとしての魅力は、やはり“速さ”。通算のポールポジション獲得回数23回は、1996年以降のフォーミュラ・ニッポン/スーパーフォーミュラ時代では歴代1位であり、2022年には10戦中6回のポールポジションを獲得したこともある。

 この“速さ”は野尻本人もこだわっているところであり、ポールから逃げ切り勝ち切ることこそが、速さの証明だという美学を持っている。これを彼は「強さを上回る速さ」と表現した。

「とにかく速く走ることが1番だと思ってやってきました」

写真: Masahide Kamio

「その結果が予選でポールをたくさん獲らせてもらったことに繋がっているのかなと思う反面、予選が速くても勝てないレースもあるというのも事実で。そこも自分の考え方が(反映されている部分が)ひとつあるのかなという気がします」

「やっぱり僕は、ポールを獲って逃げ切って勝ちたいですね。それが1番速いことの証明だと思います。強さを上回る速さを僕は欲しています」

 中でも一番嬉しかったポールポジションを問われると、野尻は「リアム・ローソンのやつかな(笑)」とおどける。2023年の最終ラウンド、タイトルを争うローソンとアタックの位置取りで緊張が走った予選は今も語り草となっており、会見場もどっと湧いた。実際には2024年のSUGO戦で不調から立ち直って獲得したポールが一番印象に残っているという。

 過去のインタビューでは、苦悩の若手時代にレースを辞めたいと思ったことが何度もあったと明かしていた野尻。当時の自分にアドバイスできるとしたら何を伝えたいかと問うと、こう答えた。

「そうだな……とりあえず『頑張ってやってよ』というのと、『君が思ってるよりそんなすぐに上手にはならないからね』ということです(笑)」

「なかなか自分の技量というのは上がらないもので、日々自分が嫌になる瞬間はあるんですけど、それも含めての競技なので、そういったものを乗り越えないといけないと思っています。その辺りはここ5年くらいの方が、(考え方が)プロっぽくなったのかなと思います」

「育成ドライバーとしてジュニアカテゴリーを走っている時に、『10年やったら初めてプロだよ』みたいなことを言われたことがありました。今振り返ると、10年くらいやらせてもらった時に、このスポーツにどれだけ多くの人が携わっていて、そのおかげで自分が走らせてもらっているということをより自覚するようになりました」

「皆さんに注目していただいて走り続けることが、このスポーツをやっている選手の使命だと思いますし、それをどれだけ自覚できるかが大切だと思います。そういったところが、『10年やったら〜』という言葉の意味だったのかなと思います」

 

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