スーパーフォーミュラ 第4戦:富士
SF決勝後のグリッドでパーティを初開催……発案者の大湯都史樹にその思いを聞く。新規ファン開拓の鍵となるのは「サーキットに来る理由」
スーパーフォーミュラ第4戦富士ではレース後のホームストレートで“グリッドパーティ”が開催された。その発案者である大湯都史樹は、今回のような取り組みをブラッシュアップすることで、非レースファンを含めた多くの人たちがサーキットに行くきっかけを増やしたいと考えている。
戎井健一郎
公開日時: 2024/07/26 3:20
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写真:: Motorsport.com / Japan
週末を通して5万人近い来場者を集め、近年稀に見る盛り上がりを見せた第1回瑶子女王杯スーパーフォーミュラ第4戦。白熱のレースが終了した富士スピードウェイでは『アフターレース・グリッドパーティー』が初めて実施され、ファンや関係者がホームストレート上に詰めかけた。
ホームストレートもといパーティ会場では、参加者がフリードリンクやキッチンカーの食事を片手に、ステージでの様々なトークショーや、DJサウンド、そしてライブなどを楽しんだ。さらにステージ上には参戦する全ドライバーが集結。パーティチケットを購入したファンだけでなく、グランドスタンドにも多くのファンが残ってその様子を見届けていた。
野尻智紀はトークショーで観客を煽り、場を大いに盛り上げた
写真: Motorsport.com Japan
実はこのイベント、発案・提案したのは参戦ドライバーのひとりである大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)だった。モータースポーツを盛り上げたいという気持ちが人一倍強く、これまでにも自身で様々なイベントを企画して多くの人たちを楽しませてきた大湯が、またひとつ大きなアクションを起こした。
大湯が大切にしているのは、モータースポーツと接点がなかった人たちに、いかにレースに興味を持ってもらえるか。そのため彼のビジョンは既存の枠にとらわれない。「超理想だけを言うなら、渋谷のスクランブル交差点で、クルマやカートを使ったレースをやれたらいい」と語る大湯はこれまで、初心者でもカートの楽しさに触れられる“カート運動会”を開催したり、東京のど真ん中でイベントを開催して人気お笑い芸人をゲストに呼ぶなど、単なるファンイベントとは一線を画した試みにトライしてきた。
そして今回、大湯はアフターレース・グリッドパーティーの開催に一役買ったわけだが、その狙いも、モータースポーツ好きではない人たちも含めて多くの人がサーキットに来るための“きっかけ”を作ることだったという。
また、今回は1回目の開催ということもあり、従来グランドスタンド裏のイベント広場で実施していたトークショーの発展形のようなフォーマットとなった。大湯としてもこの形に満足しているわけではないが、「まずやってみる」ことができたのは非常に大きなことだったと感じている。
大湯はmotorsport.comに対し、次のように語った。
「今回はトークショーメインのような形になりましたが、本来であれば色々なアーティストやDJがずっと場を盛り上げていたり、何かのパフォーマンスが行なわれていたり……(というのが理想)。そこは何でもいいんです」
大湯(中央)はビール片手にトークショーに参加。レース後のリラックスした雰囲気のドライバーが見られるのも魅力のひとつ
写真: Motorsport.com Japan
「サーキットは広く使えますし、色んなことができる場所です。そこで何かしらのイベントが夜に行なわれることで、それを見たい人がサーキットに来る……そういう場を作りたいという思いがあります」
「ただ今回は『とりあえずやってみよう』ということです。まずやってみないことには、内側にいる人たちも『良くなるよね』という確証を得られないですし、予算もかけられません。でも瑶子女王もいらっしゃってましたよね! そこにも驚きましたし、グラスタで見てくださっている方もいました」
「今回僕が何かをできたということはないですが、こういった提案に運営側の皆さんが動いてくれたことは、僕自身ありがたかったですし、共感してくれた人が多かったことがまず嬉しかったですね」
「これだけ多くの人が集まって楽しんでくれたことは、スーパーフォーミュラ、そして日本のレース業界の大きな一歩になったんじゃないかなと思います」
広大なサーキットを使ってできることは「たくさんある」
写真: Motorsport.com Japan
そもそもモータースポーツファンであっても、実際にサーキットに足を運ぶことのハードルは高いと言わざるを得ない。多くのサーキットが山奥にあり、公共交通機関などで気軽に来場することが難しいからだ。シャトルバスを運行したりと一定の対策は取られているが、その対策にも当然限界はあるだろう。
しかしアクセスの悪い場所であっても、サーキットに行く動機、理由付けを強力かつ広範なものにすることができれば、どうだろうか。例えばレース以外のコンテンツが充実していれば、レースファンはレースに興味のない友人も誘いやすくなるだろうし、自家用車がなくとも大勢でレンタカーを借りてまでサーキットに来てくれるかもしれない。
「何せここまで来るんですからね、そもそも。映画館じゃないので」と大湯は言う。
「音や環境のことなどを考えたら、サーキットがこういう場所にしか作れないこともある意味必然だと思います。ただ『これがあるから』『ここに来てでも』という感じで、サーキットに来る理由があることが大切です」
「そのために、この敷地を使ってできることはたくさんあります。場所を考えても音の問題はクリアしているわけで、野外ライブだってやろうと思えばできます。予算の問題などはありますが、できる環境はあります」
「当然メインイベントはレースですが、サーキットに色々な楽しみがある中で、レースも好きになってもらえばいいと思います。今回のイベントはそれの本当に“走り”。満足度は僕の中で低いですが、その“走り”ができたことが何よりだと思っています」
若い人が“イケてる”と思う環境を
また大湯は、ファミリー層だけでなく、もっと若年層にフォーカスしたPRをしていくべきだという考えを持っている。その根底には「若者がブームを作る」という考えがある。
「当然、年配の方などが来やすい環境を作ることも大事ですし、子供たちに来てもらうことも大事ですが、若い人が“イケてる”と思う環境を作らないと、そもそも広まらないです」
大湯はそう語る。
「ブームは若い人から始まりますから。そういった人たちが行きたい要因を作ることがひとつ大事なことです」
消費者の意思決定において、“体験価値”が重要視される昨今。サーキットが持つポテンシャルというのは、我々が思っている以上に大きいのかもしれない。
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