【特集】心と体を整える『パーソナルトレーナー』:話し相手にもなる“お兄ちゃん”、椿野修平トレーナーの存在が福住仁嶺の安定剤に
今季から福住仁嶺を担当する椿野修平トレーナー。彼の存在は、福住にとってどんな影響を与えているのだろうか?
写真:: Masahide Kamio
近年、スポーツ界ではメンタルヘルスの重要性がフォーカスされることも多くなっており、その結果として多くのトップアスリートが専属のトレーナーをつけ、身体面や精神面でのケアを受けるようになった。これはモータースポーツの世界でも例外ではなく、パドックに目を向けると、パーソナルトレーナーと共に歩くドライバーの姿もしばしば見受けられる。ではモータースポーツにおいて、パーソナルトレーナーはどんな役割を果たしているのだろうか?
スーパーフォーミュラを戦うドライバーの中で、今季からパーソナルトレーナーを帯同させているのが、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGの福住仁嶺だ。彼は第2戦鈴鹿の際、motorsport.comの取材に対し「今年からサーキットではトレーナーがついてくれていて、僕の肉体的、精神的なケアをしてくれています。メンタルに関しては、様々な要因で意識が変わってきていると思います」と語っていた。
それも実を結んでか、第4戦SUGOで悲願の初優勝を達成した福住だが、motorsport.comはその2日前、福住とそのパーソナルトレーナーである椿野修平トレーナーにインタビューを敢行。パーソナルトレーナーの存在が彼にどういった影響を与えているのかなどについて話を聞いていた。
「去年から知り合いの紹介で、フラックス・コンディショニングスという代官山にあるジムに通い始めました。そこで最初に出会ったのが椿野さんで、ずっとパーソナルトレーニングをしていただいていました。ここ2年は結果が良い時もあれば悪い時もあって、流れを変えるという点でも今年からトレーナーをつけたいと考えていましたが、椿野さんは僕の体のこともよく分かっていただいているので、今年から(スーパーフォーミュラでの帯同を)お願いするようになりました」
Nirei Fukuzumi, DOCOMO TEAM DANDELION RACING
Photo by: Masahide Kamio
そう経緯について語った福住。オフには共にテニスで汗を流すなど、椿野トレーナーとはプライベートでも交流がある様子。「頻繁に会っているという訳ではありませんが、SNSのネタになると思ったので(笑)」とおどける福住だが、椿野トレーナーとは年齢が4つしか違わない(椿野トレーナーが4歳年上)ということもあって、同世代ならではの空気感がふたりからは感じられた。椿野トレーナーも「年齢も近いので、お兄ちゃんじゃないですけど、そんな存在でありたいと思っています」と話した。
大学卒業後すぐにこの仕事をスタートさせたという椿野トレーナーだが、モータースポーツの世界に関わるのは初めてで、慣れない部分も多々あったという。
「他のスポーツとは体の使い方が全然違います。目や首のトレーニングはモータースポーツ特有だと思いますし、そこはかなり勉強しました」
Nirei Fukuzumi, DOCOMO TEAM DANDELION RACING
Photo by: Masahide Kamio
そう語る椿野トレーナー。レース期間中のウォーミングアップやマッサージ、栄養指導など多岐に渡って福住をサポートしており、必要があれば移動の際の運転手も務める。福住の言葉を借りれば「なんでも屋さん」だ。
また椿野トレーナーは福住と帯同する際、その体調や体のダルさ、睡眠時間などについて事細かく質問し、それらをグラフ化しているとのこと。「実は鈴鹿でポールを獲った時はすごく体調が悪かったんです」と福住が言うように、ドライバーのその日のバイオリズムとレースでの結果には必ずしも相関関係があるとは言えないが、椿野トレーナーは福住がどんな時にパフォーマンスを発揮できるのか、手探りながら分析を重ねているようだ。
そんな福住は今季から椿野トレーナーのサポートを受けることで、どういった点で恩恵を感じているのか?
「走行後のケアをしてもらうことで体のリフレッシュができますし、話し相手にもなってもらえるのもありがたいです」と福住。
「単純に、走行が終わってから夜ご飯を食べている時に『うめぇ!』って話ができるだけでも大分違うじゃないですか(笑)。メンタルの浮き沈みのようなものもかなり変わってくると思いますし、そういうところは一番助かっています」
モータースポーツに限らず、プロのアスリートは大会期間中、我々が想像し得ないレベルで強いプレッシャーとストレスに晒される。そんな中で、気兼ねなく話せて、自分を常にサポートしてくれる存在が隣にいる……その事実そのものが、メンタルを安定させる上で非常に大きな意味があるようだ。
Nirei Fukuzumi, DOCOMO TEAM DANDELION RACING
Photo by: Masahide Kamio
もちろん、プレッシャーやストレスと戦っているのはアスリートだけではない。今を生きる全ての人たちにとって、ココロとカラダを整えることは人生における大きなテーマのひとつではないだろうか。
日常でプレッシャーやストレスと戦う全ての人たちに、何かアドバイスがあれば……その問いに対し、椿野トレーナーは次のように答えてくれた。
「僕の中では、オンとオフをちゃんと区別できることがポイントになってくると思います」
「例えばレースでも、クルマに乗っている時はオンの状態ですが、オンの状態のまま寝ようとしても、体は興奮状態になっているので絶対に寝れないですよね。そういう時は僕がケアをして(福住を)オフ状態にしようとしていますが、そういうことを意識するだけでメンタル面はかなり変わってくると思います」
その椿野トレーナーのコメントを受けて、福住も続けて口を開いた。
「僕はまだそれができていないんだと思います」
「(オフ状態に切り替えるために)僕も色々試したりしているんですよ。よく寝られるような匂いのするスプレーを買ったり……それは僕の妻が試してくれていることなんですけど」
そう照れ臭そうに話してくれた福住。パーソナルトレーナー、そして妻。公私共に心強い味方が増えた。SUGOでの勝利は、2021年が彼のレースキャリアにとって大きなターニングポイントとなったことを示しているのかもしれない。
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