野尻智紀、的確なリスク管理で連覇にマジック1。“今季ワースト”の4位は「誰と戦っているのか」を見極めた結果
スーパーフォーミュラ第8戦で4位に入り、連覇に王手をかけている野尻智紀。この結果には、彼の「戦う相手を間違えない」姿勢が表れている。
写真:: Masahide Kamio
モビリティリゾートもてぎで行なわれたスーパーフォーミュラ第8戦で、TEAM MUGENの野尻智紀は3番グリッドからスタートして4位でフィニッシュした。驚くべきことだが、この結果は彼にとって今季ワーストタイの順位だ。
ここまで8戦を終えて、優勝1回、2位2回、3位3回、4位2回。もはや決勝で大崩れする姿が想像できないほどに、今季の野尻は安定している。獲得ポイントも113に乗せ、鈴鹿での第9戦・第10戦を残してランキング2番手のサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)に32点差をつけている。現状の点差を鑑みると第9戦でタイトルが決定する可能性が高く、連覇に向けてまさに“マジック1”が点灯しているような状況だ。
今回の第8戦でも、野尻は堅実であった。大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)、フェネストラズに次ぐ3番グリッドの野尻は、スタートでフェネストラズの前に出て2番手に。ペースが芳しくない大湯の背後につけて走っている中で、後続の関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)が10周終了時にいち早くピットインし、フレッシュタイヤに履き替えてプッシュしていた。しかし野尻はこれを見てすぐに反応することはせず、15周終了時にピットイン。結果的に関口と、同じく早めのピットインをしていた牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)の先行を許す形となった。
結果的にこのレースを制したのは関口だったが、彼の勝因のひとつには、6番手を走っていた彼のアンダーカット狙いのピットストップに対して上位陣が誰もカバーしなかった、ということがあるだろう。例えば、関口の翌周に野尻や大湯がピットインしていれば、関口の前でコースインしていただろうし、仮に関口がそれらのドライバーをオーバーテイクできたとしても、その攻略に手こずれば、平川亮(carenex TEAM IMPUL)らステイアウト組にオーバーカットされたかもしれない。
今回のレースで最も早くピットに入った関口が優勝、最も遅くピットに入った平川が2位に入ったことを考えると、野尻もそういった極端な戦略を採っていれば第2戦の富士以来、久々の勝利に手が届いた可能性もあるだろう。しかし、彼らにその選択肢はなかったようだ。
野尻はレースを次のように振り返る。
「大湯選手に引っかかるような形だったので、ピットに入ろうかなというところでしたが、僕たちはサッシャ選手を気にしてレースをしていました」
Tomoki Nojiri, TEAM MUGEN
Photo by: Masahide Kamio
「だから関口選手に対する対応が遅れた……というよりも、対応はしようと思えばできたのですが、そこで入るとそれはそれでリスキーでした。関口選手は裏でバックマーカーに引っかかっていたとも聞きますし、そこで入るという決断は僕たちの中ではなかったと思います」
ランキング2番手、すなわちタイトル争いでの現状の最大のライバルであるフェネストラズを意識したレース運びをしていたという野尻。彼はさらにこう続ける。
「何が一番大事なのか、というところをしっかりと考えてレースを進めていくことが大事だと思います。今回のレースはサッシャ選手に対して厳しくチェックに行きました。『戦う相手を間違えない』ということです」
「鈴鹿でも『誰と戦っているのか』をしっかり意識して、僕たちはシーズンをマネジメントしているんだというところをレースで表すことができれば、結果はついてくると思います」
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