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モータースポーツを支える企業

株式会社スリーボンド【第1回】

モータースポーツを支える企業は多々あるが、中でも株式会社スリーボンドの歴史と功績は大きなものがある。1970年代からドライバーやチームの支援を始め、現在では自前のチームを持ってレースを戦う。しかし、単純に勝ち負けに拘るわけではない。ジェンダー問題からおもてなしまで様々な局面に独特のスタンスで取り組む。今回から4回に分けてその真髄に迫る。

Koudai Tsukakoshi, ThreeBond DRAGO CORSE

Koudai Tsukakoshi, ThreeBond DRAGO CORSE

株式会社スリーボンド

キーワードは理解、信頼、友情

 モータースポーツはスポーツか、という議論が長い間続いている。そもそもスポーツとはラテン語のdeportareを起源とする。「憂いを拭い去る」、あるいは「楽しむ」という意味がある。長い時間をかけてフランス語のdesporter、英語のsportに変化したと言われる。日本では大正末期にスポーツという言葉が一般化され、戦後になって我が国発祥の武道もスポーツと呼ばれるようになった。

 そもそもスポーツは肉体を駆使して競うことに意味を見いだす。これは特に日本のストイックな精神によく似合い、スポーツは肉体と精神の鍛錬の場として学生時代から盛んに奨励される。そんな構造の中に自動車という機械を使用するモータースポーツを含めること自体難しい話かもしれないが、その自動車を操るドライバーを人間としてみた場合、彼/彼女は明らかに1人のアスリート意外何者でもない。彼/彼女がレースカーを運転する時に必要とされる精神力、肉体力は想像を遙かに超えて、経験したことのない者には理解は困難かもしれない。しかし、彼らがアスリートであることは、他のスポーツ選手と精神的、肉体的な能力を比較したとき、決して劣らないばかりか勝る点が多々あることで実証されている。分かり易い例を上げよう。気温50℃を超える灼熱の運転席で、2時間にもわたって他車と先を争いながら走り続ける。走り始めた時と2時間経過した時のラップタイム(サーキット1周のタイム)がほとんど同じ。これがドライバーというアスリートである。

野球、ゴルフ、そしてモータースポーツ

左上:陳志忠には40年近く支援を続ける 右上:全国屈指の強豪である野球部 左下:米ツアー4勝、米ツアー賞金王(09年)、世界ランキング1位(10年)の申ジエ。日本ではなんと26勝! 右下:国内トップフォーミュラで活躍した清水正智

左上:陳志忠には40年近く支援を続ける 右上:全国屈指の強豪である野球部 左下:米ツアー4勝、米ツアー賞金王(09年)、世界ランキング1位(10年)の申ジエ。日本ではなんと26勝! 右下:国内トップフォーミュラで活躍した清水正智

Photo by: 株式会社スリーボンド

 アスリートを支援する企業は数多くあるが、ThreeBondもそのうちの一社といえるだろう。ThreeBondは会社創業に際してスポーツを通して社員の親睦を図るという意味から野球部を創設、継続的な活動を経て、実業団、つまり社会人野球に発展していった。現在も軟式野球部を有し、全国大会の常連である。工場勤務の社員から始まった野球だが、時と共にその他の部署にも部員は拡散しいていき、いまではThreeBond社を横断する活動を行う。ThreeBondと野球は切っても切り離せない。

 野球選手は素晴らしいアスリートだ。その高い運動能力があって初めて打ち、走り、守り、投げることが出来る。その躍動こそアスリートの宝物だ。野球ほど肉体を酷使しないが、ThreeBondが大切にするもうひとつのスポーツがある。ゴルフだ。ThreeBondはゴルフにも深い理解を示し、現在4人のプロゴルファーをサポートする。台湾出身の陳志忠、韓国出身の申ジエ、そして安田彩乃、宮田成華。ゴルフは肉体と精神、その両方の強さが兼ね備わっていないととても成功は覚束ない。しかし、ThreeBondのゴルフへの取り組みは少し違う。

 それは陳との付き合いを見ればよくわかる。1985年に彼の支援を開始して以来、40年近く経ったいまも続けている。その間、成績には当然波がある。山があり谷がある。それでも支援は止めない。これは、ThreeBondの支援が成績がすべてではないことの証明だ。

 陳と違い、申はスポーツは結果がすべてという。だがThreeBondが申と契約したのは結果だけを基準にしたものではない。2015年、土砂降りのコースで美味しそうにおにぎりを食べる申の姿を、ThreeBondの経営陣のひとりがテレビで見たのが支援のきっかけだ。厳しい条件下でもなんたるメンタルの強さだろう、と感激した。素晴らしい実績はこうした精神的強さがあって初めてかなうものだ。成績もさるものながら、強いメンタルとそれを誇示しない申の人間性に惹かれての支援である。まさにスポーツの真髄を見抜いての両者の関係と言えるだろう。ThreeBondが追いかけるのは、その人のスポーツに取り組む姿勢である。そして、モータースポーツ。ThreeBondとモータースポーツは特別な関係かもしれない。そのきっかけは野球やゴルフとは少し異なる。

カタカナで“スリーボンド”

 ThreeBondの創業は1955年。創業者が、自動車から路上に落ちたオイルを見て、この漏れを防げば資源の節約にもなる、延いては日本経済の復興に貢献できるはずだと考え、オイル漏れを防ぐ液状ガスケットを開発したのがビジネスの始まりだ。その後工業用接着剤の製造に移行、現在は領域を広げて接着剤、シール剤、ロック剤、防錆潤滑油などの工業科学製品を手がける業界トップの企業に成長した。同社は自動車関連、輸送機器、建築、建材、電器関連企業とのビジネスを広く展開するが、主力製品は自動車エンジンのシーリング剤であり、同社がトップ企業に成長することが出来たのも自動車産業のおかげであると明言する。そして、創業者は自動車業界への恩返しという意味を込めて、自動車レースに参加する人達を支援した。自動車レースは参加する人達の手によって厳しい環境で自動車を走らせ、自動車技術の開発に多大な貢献をしている。そこに少しでもThreeBondが手を差し伸べることが出来れば、これ以上の喜びはない。創業者は常にその気持ちを忘れることはなかった。

株式会社スリーボンドのモータースポーツを初めとするイベントを統括する営業本部・宣伝企画部部長 足立守氏

株式会社スリーボンドのモータースポーツを初めとするイベントを統括する営業本部・宣伝企画部部長 足立守氏

 ThreeBondが自動車レースにスポンサーとして参入し始めた1970年代。スリーボンドのロゴが入ったレースカーの走りを雑誌を見てうっすらと記憶しているのが、現在モータースポーツを始めとするスポーツ支援活動を管理する営業本部・宣伝企画部部長の足立守だ。

「スーパーカーブームの小学生時代に“スリーボンド“とカタカナで社名を車体に描いたクルマが走っていたのを覚えていたことが入社のきっかけの一つ」と言う。

 国内のレースでは人気絶頂だった富士GC(グラチャン)シリーズで、そこに参戦していた高橋国光選手を支援の黄色のクルマに大きく黒い文字でスリーボンドと描かれていた。1970年代といえば日本のモータースポーツもヨーロッパに追い付こうと必死だった頃だ。

「私は国光さんしか知りませんでしたが、調べて見るとその前にも酒井正選手、後には清水正智選手も支援しています。国光さんのころまではThreeBondではなく“スリーボンド”と、カタカナで社名が描かれていました」(足立)

1975年の富士GCで高橋国光が乗るマーチ745。大きな文字で”スリーボンド”と描かれており、同社のモータースポーツに賭ける意気込みが伺える。

1975年の富士GCで高橋国光が乗るマーチ745。大きな文字で”スリーボンド”と描かれており、同社のモータースポーツに賭ける意気込みが伺える。

Photo by: 株式会社スリーボンド

おもてなしはオリンピックだけじゃない

 ThreeBondのモータースポーツへの取り組みは、ドライバーやチームへの支援から自前のチームを所有し、自前のエンジンを開発してレースに参加するようになった。いかに自動車関連技術製品を製造販売している会社とはいえ、流石に社内からもレース活動への反対意見も聞こえるようになるが、「取り組みの姿勢を説明すると社内の理解は十分にあるということが分かりました」(足立)とのこと。創業者の意志は、長い年月が経っても消えることはない。

 しかし、時代の移り変わりに足並みを揃えて、ThreeBondのモータースポーツとの関わり方にも変化がみられた。2000年代に入ると、モータースポーツ活動を営業ツールとして使う方針が示され、レース活動をビジネス展開の場と考えるようになった。現在展開しているホスピタリティ・サービスはそのひとつだ。

「パドックにホスピタリティのテントを張っておもてなしをしています。我々の本業のお客様や支援してくれるスポンサーやパートナー企業の方が見えて、そこが商談の場になることもあります。レースはコース上だけではないという視点で、より広範な活動が出来ればいいと考えています」(足立)

レースの週末、サーキットに設置したモーターホームでホスピタリティサービスを行う。スポンサーやパートナー企業の関係者が集まりビジネスの話になることも。

レースの週末、サーキットに設置したモーターホームでホスピタリティサービスを行う。スポンサーやパートナー企業の関係者が集まりビジネスの話になることも。

Photo by: 株式会社スリーボンド

 こうした活動は欧米ではごく普通に行われているが、我が国ではモータースポーツに限らず希である。弁当文化の日本には、オープンスタイルでのおもてなしというのは馴染みが薄いのかもしれない。しかし、イベント会場などではビジネスに繋がる場としてこれからポピュラーになるかもしれない。ThreeBondの活動はその先駆けだ。

 スポーツの持つ、勝ち負けだけではないソーシャルな時空を有効に活かす術を、ThreeBondは知っている。それは、モータースポーツに携わる長い時間、野球やゴルフといったスポーツを知る深い理解、そして社会全体に向けた開かれた目があって初めて可能になることだ。彼らの今後の活動が我が国のモータースポーツに与える影響は、決して小さくないはずだ。(第2回に続く)

もてなしは細部に宿る。テーブルナプキン一枚、カトラリーの質まで拘るのがスリーボンド流

もてなしは細部に宿る。テーブルナプキン一枚、カトラリーの質まで拘るのがスリーボンド流

Photo by: 株式会社スリーボンド

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