メーカーの垣根なんてない!? トヨタの中嶋一貴がニッサンZを駆る……富士24時間での驚きオファーの舞台裏
スーパー耐久富士24時間レースでは、中嶋一貴がナニワ電装TEAM IMPUL Zをドライブすることになった。メーカーの垣根を超えたこのオファーの舞台裏を、中嶋と星野一樹監督が語った。
写真:: Masahide Kamio
各メーカーのワークス格のドライバーがカーボンニュートラルを目指した開発車両で参戦したり、海外のドライバーがゲスト参戦したりと、ひときわ豪華なラインアップで開催されるスーパー耐久第2戦富士24時間レース。その中でも今回最もファンを驚かせたであろうトピックスが、中嶋一貴のTEAM IMPULからの参戦だ。
元F1ドライバーでル・マンウィナーの中嶋は、ドライバーとして第一線から退いた現在はTOYOTA GAZOO Racingヨーロッパの副会長を務めている。そんな中嶋が18年ぶりにスーパー耐久に帰ってくる……しかも、乗るのはトヨタ車ではなく、日産Z GT4だというのだから、ファンが驚くのも無理はない。
欧州でのF3やGP2(現FIA F2)、無限ワンメイク時代のフォーミュラ・ニッポン(現スーパーフォーミュラ)でのテスト走行を除けば、一貫してトヨタエンジンのマシンをドライブしてきた生粋のトヨタドライバーである中嶋。今回の富士24時間参戦のきっかけとなったのは、TEAM IMPULの星野一樹監督の何気ないツイートからだった。
「もうこうなったら、24時間はドイツのカズキさん、乗ってくれないかなあ笑」
星野一樹、平峰一貴、大木一輝という“3人のカズキ”を擁してスーパー耐久に参戦することを2月に発表した際、星野はそうつぶやいた。これに対して中嶋の公式Twitterは「ニュルの24時間ではどうでしょうか?!笑」と返答したが、この時点では具体的な進展はない状態だった。
事態が大きく進展したのは、4月に富士で行なわれたスーパーフォーミュラ開幕戦の時だった。この時中嶋は日本に帰国していたが、5月末の富士24時間には、ACO(フランス西部自動車クラブ)のピエール・フィヨン会長をアテンドする役割で来場することが決まっていたのだ。
「4月のSF富士の時、たまたま日本に帰ってきていました。グリッドを歩いている時に一樹さんと話していて、『本当に富士来れる事になったんですけど、本当にやっちゃいますか?』って(笑)」
そんな中嶋の問いかけに『良いの!?』と前のめりに返答した星野。ただもちろん、このようなチーム編成にはトヨタ・日産両社の理解が必要となってくる。しかし、中嶋がグリッドで引き連れていたトヨタの関係者も、まさにふたつ返事だったという。
「超えなきゃいけないハードルがいっぱいあるなと思い、その場にいるトヨタさんに『どうなんですか?』と聞いたら『うちとして万々歳だよ、モリゾウ(豊田章男会長)さんも絶対良いって言ってくれるよ!』とのことでした(星野)」
「その場にいたTGRの方々もノリノリでしたね(中嶋)」
Photo by: Masahide Kamio
その後、星野からその旨を伝えられた日産サイドもオファーを快諾。かくして、“4人目のカズキ”がIMPULに加わることになった。中嶋も「メーカーの垣根は、最初からなかったのかもしれないですね」と振り返る。
星野が中嶋にオファーを打診したのは、決してただのおふざけではない。根底には、モータースポーツをもっと盛り上げたいという思いがあった。星野はそういった思いを理解し、協力してくれた両メーカーに感謝したいと語った。
「中嶋一貴がIMPULでZに乗るって、盛り上がるし、ファンも見たいじゃないですか。これが実現できたことは、色んな意味での“第一歩”だと思います。両メーカーの皆さんには本当に感謝しています」
また中嶋も、レースの楽しさを伝えるために、自分自身がレースを楽しむことで見る者を楽しませたいと語った。
Photo by: Masahide Kamio
「まずは自分自身が楽しんで、たくさんの人に楽しんでもらって、笑顔になってもらえるようなレースにするのが一番ですね」
「今回の話もそうですが、お祭り的な要素のある富士24時間だからこそ見られるものもあると思います。液体水素のクルマに乗られるモリゾウさんと同じ場で走れるのも僕自身楽しみですし、こういう富士24時間ならではのものを楽しんでもらえればと思います」
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