”最強自動車決定戦”を目指す『鈴鹿10耐』:モビリティランド社長に訊く

鈴鹿サーキットは、鈴鹿1000kmを今年で止め、来年から「鈴鹿10時間耐久レース」を開催する。その意義をモビリティランド山下社長に訊く

 3月4日、鈴鹿サーキットは会見を開き、今年限りで伝統の『鈴鹿1000km』を終了させ、2018年からは新たに『鈴鹿10時間耐久レース(仮称)』を開催することを発表した。

 この『鈴鹿10時間耐久レース』は、世界各国でレースを戦うGT3車両と、日本のスーパーGTを戦うGT300クラスに参戦するJAF-GT勢、マザーシャシー、GT3車両が一堂に会し戦う「GT世界統一戦」とすることが目指されている。

 鈴鹿1000kmといえば、現在のスーパーGTの中でも1〜2を争う人気を誇り、しかも今年で開催46回目となる歴史もある。そんな1000kmの名を捨ててまで、『鈴鹿10時間耐久レース』を立ち上げることを決めた背景には、どんな理由があったのか? 鈴鹿サーキットを運営する、モビリティランドの山下晋社長に訊いた。

耐久レースとしての鈴鹿1000kmの意義 

1966年鈴鹿1000km
1966年鈴鹿1000km

Photo by: Mobility Land

 「元々鈴鹿1000kmというのは明らかに耐久レースで、しかも国内外の様々なクルマが走っていた。しかし、今はクルマが高性能化し、チームの能力も上がったことで、1000kmは短時間で走り切れてしまう。それでは、お客様にとってもドラマというような要素が希薄になってきているなと思っていました」

  今回の決断について、そう山下社長は説明する。また山下社長は、二輪の耐久レースの頂点である”鈴鹿8耐”との比較もしたという。

「2輪の8耐も、色々と変遷はありましたが、日本の2輪の耐久レースの頂点として、お客様、エントラント、メディア、そして地域の皆様にも、しっかりと認識されているというレベルにあると思います。しかしその8耐と比べた時に、”鈴鹿1000km”が同じレベルかどうかと考えた時に、そこまでは行っていないというのもありました。8耐が夏の2輪のお祭り、フェルティバルだと考えた時、それと同じレベルの”4輪レースの夏のお祭り”を構築したいと思いました」

「もちろん、鈴鹿1000kmは多くのお客様に評価され、愛着を持っていただいる方も多くいる。我々としても、最も長く開催しているレースだということもあり、愛着はあります。ただ、冷静に見た時に、8耐と同じレベルかどうかという疑問がありました」

 そう語る山下社長は、鈴鹿1000kmは鈴鹿1000kmとして存続させ、新しい”鈴鹿10耐”は全く別のイベントとして立ち上げることも検討したという。

「(鈴鹿10耐を)新たなイベントとして立ち上げるということももちろん考えました。ただ、耐久レースをやるというシチュエーションを考えた時に、やはり開催時期は夏だと。1000kmを別の時期に移して開催するということも不可能ではないですが、日没の時間なども考えると、これもなかなか難しい」

 鈴鹿1000kmの開催を断念する理由、それは興行成績が振るわないからということでは決してないと山下社長は言う。

「興行成績で苦労しているということは、決してないです。ビジネスとして、今の鈴鹿1000kmは十分成功しています。逆に新しい”鈴鹿10耐”の方がチャレンジングだし、もしかしたらチャレンジングの枠を越えているかもしれない。でも、我々のサーキットで、4輪の耐久らしいドラマのあるレースをやりたいんです」

「モビリティランドでは、鈴鹿でF1、もてぎでMotoGPと、スプリントの頂点レースを開催しています。そして2輪では8耐という頂点レースをやっていますから、4輪でもやりたかった。そういう欲張りな話です」

自動車の世界一決定戦 

『鈴鹿10時間耐久レース』記者会見に出席した山下晋モビリティランド社長とステファン・ラテルSRO代表
『鈴鹿10時間耐久レース』記者会見に出席した山下晋モビリティランド社長とステファン・ラテルSRO代表

Photo by: Motorsport.com

 ”鈴鹿10耐”は、JAF-GTマシンやGT3マシンなどが出走できることになる。なぜこのカテゴリーを選んだのか? 山下社長をこう説明する。

「鈴鹿1000kmの原点に戻るという中で、様々なメーカーの様々な車種が参加できるようにしたいという考えがありました。そして、日本勢vs海外勢という構図を演出したかった。それがやりたいんですよ」

「GT500やDTM、つまりクラス1規定のレースをやったとして、参加してくれるメーカーさんがどのくらいいるのか分からない。しかしGT3ならブランパンやGTアジア、IMSAなどでたくさん走っている。その中に、スーパーGTを運営するGTアソシエイションさんや、ブランパン耐久シリーズなどを統括するSROさんに協力していただいて、GT300のマシンも出られるようにしたい。もちろん、エントラントさんにはこれからお願いしなければいけませんが、GT300勢と欧米のGT3勢がガチンコで戦う、そういうレースを成立させることができるだろうと考えました。それにより、鈴鹿1000kmの原点に戻ることができると考えています」

「自動車の世界一決定戦をやろうよという考えに近いです。ここ鈴鹿で行われた日本グランプリで、ポルシェvsスカイラインの伝説的な戦い(1966年)がありました。その時のことを語り継ぐのは、”ポルシェvsスカイライン”という車名なんですよね。そういうことだと思います」

「もちろん、ドライバーの皆さんの力が必要ないだなんて、言っているわけではありません。スペシャルなイベントを生み出して、そこにスペシャルなドライバーに乗っていただく。そんなレースにしたいと思っています」

将来的にはBOPなし、タイヤも完全自由に!?

スタートシーン(GT300)
スタートシーン(GT300)

Photo by: Yasushi Ishihara

  GT3やJAF-GTによるガチンコ勝負の耐久レース。現時点ではBOP(性能調整)が行われ、しかもタイヤもワンメイクになる公算が高いが、本当の意味での”ガチンコ勝負”を実現するためには、BOPの撤廃も視野に入れたいと山下社長は言う。

「BOPなしのレースの方が面白いのではないかという気持ちは、どこかにあります。でも、現時点でBOPなし、タイヤもフリーとした場合、参加してくれるチームが非常に限られてしまう可能性がある。『勝てないから出ない』と。なので当初は、BOPとタイヤのコントロールは必要だと思っています」

「まずはエントリーしてくれる方が増える方法でやりたいです。それが(将来的に)ベストかどうかはわかりませんが、現時点ではベストだと思います」

 発表以降”鈴鹿10耐”には、エントラントからポジティブな話が寄せられているという。ただ、伝統の”鈴鹿1000km”の名がなくなることについては、特にGT500参戦中のメーカーから、少なからずネガティブな意見も聞かれるようだ。

 ただ鈴鹿サーキットでは、1000kmに代わる新たな”スーパーGTのレース”を開催すべく、検討を進めているという。山下社長は語る。

「1000kmに代わりうるレベルにある、鈴鹿ならではのスーパーGTレースを開催させていただきたいと思っています。単に時期を変えて開催するということではなく、そこにしっかりと鈴鹿ならではの要素を入れます。現時点ではお話できることはありませんし、我々だけで決められるものではありません。しかし、普通に開催するつもりはありませんよ」

将来の”モビリティ”に活きるレースを

Podium celebration
Podium celebration

Photo by: Suzuka Circuit

 鈴鹿が新しい”頂点”のレースとして位置付けようとしている”鈴鹿10耐”。彼らは夏に開催することにこだわっている。それには、理由がある。

「鈴鹿10時間耐久を8月に開催するというのは、それが夏休みだからという理由があります。我々はひとりでも多くの子供達が、モータースポーツに接する機会を作っていきたいんです。そして、将来モータースポーツの素晴らしさであったり、クルマやバイクの楽しさを理解できる大人を、ひとりでも増やしたいと思っています。この10年間、そういうことをコツコツとやってきました。今後もそれをやり続け、世界トップクラスのレースをお見せしたいと思います」

 そう、未来のモータースポーツファン、そしてモビリティに対する理解者を増やしていきたいのだと、山下社長は語る。そしてまた、鈴鹿サーキット、そしてホンダを創業した本田宗一郎の考えが根底にあるという。

「鈴鹿サーキットは、本田宗一郎さんの考えが根底にあります。レースは、モビリティの発展に間違いなく寄与する。空力だって、直接ではなくとも、市販車にフィードバックされます。今後もそういう構図は変わらないですから」

 第1回目の鈴鹿10時間耐久レースは、「第47回サマーエンデュランス」(通算開催回数は”鈴鹿1000km"から継続)として、2018年8月23日(木)〜26日(日)に開催される予定だ。鈴鹿サーキットは、この「鈴鹿10耐」に世界中から50台以上の参戦台数を集めることを目標としている。GT3及びGT300クラスマシンによって繰り広げられる”日本vs海外”の熱い戦いは、一体どんなレースになるのだろうか?

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シリーズ スーパーGT
記事タイプ 速報ニュース