スーパーGT 富士公式テスト

冷たく降る雨の裏で、今年もアツいスーパーGTウエットタイヤ戦線。各社の新トレッドパターンがあらわに……ミシュランはGT500席巻したパターンをGT300でテスト

今年もスーパーGTの各タイヤメーカーが力を入れて開発しているウエットタイヤ。新たなトレッドパターンも多数確認されたが、公式テストでの各社の動きをまとめてみた。

戎井健一郎

編集: 2024/03/24 12:51

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Michelin tyre

 岡山国際サーキットと富士スピードウェイで2度に渡って開催されたスーパーGT公式テストは、いずれも雨がちな天候となった。多くの関係者がドライコンディションでメニューを満足に進められなかったことを残念がったが、テストではブリヂストン、ヨコハマ、ダンロップ、ミシュランが持ち込んだ様々なトレッドパターンのウエットタイヤを見ることができた。

 まずGT500クラスでは、ウエットコンディションで圧倒的な強さを誇っていたミシュランが供給を休止し、今季からGT300クラスのみの供給となった。したがって、ブリヂストン、ヨコハマ、ダンロップの3メーカーで争いが繰り広げられることになる。

 まず、GT500では15台中12台にタイヤを供給し、シリーズ9連覇が至上命題とも言えるブリヂストン。彼らは、昨年のテストで投入したパターンを想起させる、斜めの溝が折り重なるように入れられたタイヤを持ち込んできた。

 これまで雨量の多い路面で強さを発揮してきたブリヂストンは昨年、“ちょい濡れ”のダンプ路面でのタイヤ性能低下という課題を解決すべく、新たなトレッドパターンのタイヤをテストで投入した。そのタイヤは一定の手応えを得たようだが、「水量が多い際のパフォーマンスが落ち過ぎていた。それでも他社さん対比では劣っていなかったと思っていますが、安全第一ということを考えて(BSタイヤ開発責任者 山本貴彦氏)」ということで実戦での導入は見送られた。

Bridgestone tyre

Bridgestone tyre

 そして今回のテストで持ち込まれたパターンのタイヤも、同じような方向性のように見えるが、よく見るとパターンに若干の違いも見受けられる。1年の時を経て新たに投入されたタイヤに関しては、ドライバーからそのパフォーマンスについてポジティブな声が聞かれている。

 16号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GTの大津弘樹は「今回(模擬予選)のように、雨量が多くもなく、乾いていくようなコンディションにマッチしていて、ロングランしていく中でも安定して速く走れるタイヤ」だとコメント。14号車ENEOS X PRIME GR Supraの福住仁嶺も「思った以上に使えているかなと。ロングランもしましたが、急激に(性能が)落ちるような感覚もなかったので、意外と悪くないなという印象です」と語り、改善を実感しているようだった。今年こそ実戦投入なるかに注目だ。

 ヨコハマは、昨年からちょい濡れ路面を重視したタイヤ開発を進めている。雨量が多いタイミングではやや苦戦しているようにも見受けられるが、ヨコハマとしてはそもそも実際のレースでは雨量が多過ぎると赤旗中断になるケースが多いため、雨量の少ない状況で強いタイヤ開発に注力すべきと考えている。実際、岡山テストでのダンプ路面のセッションでは、ヨコハマユーザーの24号車リアライズコーポレーション ADVAN Zがトップタイムを記録するなど、確かなパフォーマンスを見せている。

ダンプ路面で強さを見せるヨコハマタイヤ

ダンプ路面で強さを見せるヨコハマタイヤ

写真: Masahide Kamio

 ヨコハマのトレッドパターンは、縦溝をメインに、細かい横溝が入れられたもの。これまではGT500クラスでのみこのパターンが採用されていたが、今回のテストではGT300でもこのパターンがテストされている。

 これは実戦での投入を前提とした動きとのことで、通年で1種類と決められているパターンの登録まではまだ猶予があるとはいえ、GT500とGT300のパターンが同じとなる可能性は高そうだ。横浜ゴムのスーパーGTタイヤ開発を率いる白石貴之氏は「よりダンプ路面に注力した方がいいだろうという方向性はGT300も同じ。現状として(GT300の従来パターンが)厳しいわけではないですが、より上を目指す開発をする中で、新しい方が取り分があるなと考えました」と語っていた。

 そしてダンロップも、従来とは異なるパターンのタイヤが目撃された。新パターンのタイヤは、これまでの左右対称なものから、左右非対称なものに。住友ゴムでスーパーGTタイヤの開発を率いる安田恵直氏は、「昨年から開発していて、ところどころでテストしていました」と話し、さらにもうひとつ新しいパターンがあり、2種類のパターンをテストしていると明かす。

ダンロップの左右非対称パターン

ダンロップの左右非対称パターン

写真: Masahide Kamio

 左右非対称の新パターンは、タイヤの内側(車体側)に縦溝が3本入れられており、それ以外は両端に横溝が入れられた、ヨコハマや昨年までのミシュランと似たコンセプトに感じられる。これはダンプ路面を意識したものかと安田氏に問うと、「ダンプ路面での強さも欲しいし、多少水量が多くてもコース上に残れるようなパターンを考えると、ああいう形になりました。弊社にある市販のGT-R用のパターンをベースに、シミュレーションを活用してシフトさせました」との回答だった。

 縦溝のあるイン側で排水性能、設置面積の多いアウト側で旋回性能を発揮するというコンセプトだという新パターン。現在はパターンが変わることによるコンパウンドの合わせ込みを探っている状況とのことで、「同じようなパターンだと同じようなコンパウンドでいけますが、例えばもう少し硬いものが使える、もしくは必要になるなど、そういった場合もあります」と安田氏は説明した。

 そして今季からスーパーGTはGT300のみの活動となり、3台にタイヤを供給するミシュランは、昨年までGT500で左右非対称パターン、GT300で左右対称の旧パターンを使用していた(GT500もかつてはこちらを使用していた)が、今季からはGT300でかつてのGT500のパターンを採用することを検討中で、テストでは両パターンの比較テストを実施した。

右列に立てかけられているタイヤは、昨年までのGT500のパターン

右列に立てかけられているタイヤは、昨年までのGT500のパターン

写真: Motorsport.com / Japan

 そもそも、GT500とGT300でパターンを分けていた理由について、日本ミシュランのモータースポーツダイレクターである小田島広明氏は次のように説明する。

「従来のパターンは、GT500でも良い結果が出ていました。(2022年に)新しいパターンをGT500でも導入したところ、より良い結果が出ましたが、(従来パターンでも)戦闘力は十分あったので、GT300は従来のものにとどめていました」

「パターンを変えると、コンパウンドや構造などを変える必要が出てきますし、パラメータも多くなりますが、GT500の場合は開発のステップを細かく踏むことができるので、色んなチャレンジができます。一方でGT300はテストの機会が少ないので、ステイをしようということでした」

「GT500の供給も終了して、(新パターンも)ある程度煮詰まってきている中で新パターンで走らせてみましたが、十分良いタイムが出ます。材料が少ないので300にも導入するかは悩んでいるところですが、今回比較をして決してネガティブではないという結果は出ているので、結論は出ていませんが、前向きには考えています」

 もちろん、タイヤは溝の入り方だけではなく、コンパウンドや構造との合わせ技で性能が決まる。小田島氏は、他のメーカーも追随する左右非対称パターンは溝が少なく見える一方、雨量が多い時にも対応できるようなコンパウンドや構造にしているとのこと。「両パターン共に狙っているところはそれほど変わらないですが、アプローチが違うということです」と説明した。

 ミシュラン不在のGT500のウエット戦線で覇権を握るメーカーは? GT300の勢力図はどうなる? もしかすると、ドライコンディションよりも気になる要素が多いかもしれない。

 

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