スーパーGT 第8戦:もてぎ

王座逃した最終戦終え、一点を見つめる山本尚貴。その脳裏には何が「レースのこと、これからのこと。色々です」

スーパーGT最終戦を3位で終え、シリーズタイトルを逃した山本尚貴。レース後はひとりきりとなり一点を見つめていたが、その時彼は何を考えていたのか。

戎井健一郎

公開日時: 2025/11/02 11:08

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Naoki Yamamoto, #100 STANLEY CIVIC TYPE R-GT

写真:: Motorsport.com / Japan

 GT500クラスは6台による王座争いとなった2025年スーパーGT最終戦。ホンダ勢で唯一のタイトルコンテンダーで、ポイントリーダーの1号車au TOM'S GR Supraを8.5ポイント差で追いかけていた100号車STANLEY CIVIC TYPE R-GTは、タイヤ無交換の奇策に出るなど死力を尽くしたが4位フィニッシュ(12号車TRS IMPUL with SDG Zの失格で3位繰り上がり)。山本尚貴、牧野任祐組の5年ぶりタイトルとはならなかった。

 7番グリッドからスタートした決勝レースでSTANLEYは、GT500では非常に珍しいタイヤ無交換作戦を採った。これでライバルよりもピット作業の時間を10秒以上短縮することに成功し、一躍トップに浮上した。

 しかしながらフレッシュタイヤを履くライバルに対してポジションをキープするのは難しく、牧野はライバルau TOM'Sにトップの座を奪われると、4番手まで後退。ただその後はライバルと遜色ないペースに安定し、そのままのポジションでフィニッシュした。

 この驚きの作戦を採用した経緯について、星学文エンジニアは次のように説明する。

「我々のスタートタイヤは、無交換でも問題ないという実績があるタイヤだったことが大前提にあります。そして我々100号車としては、チャンピオンの条件的にも、とにかく(au TOM'Sの)前に出ないといけない状況でした」

写真: Masahide Kamio

「そんな中で計画・シミュレーションなどをした結果、戦略的にはいくつもパターンがありましたが、あの状況であれば無交換で確実に前にいけて、なおかつもう少し耐えられるのではないかと思っていました」

「ライバルがタイヤ交換後の数周で(追い抜く前に)ニュータイヤのグリップを使い切ってくれて、そこから同じようなペースで走れば勝算があるんじゃないかと思い、採った戦略でした。実際、最終的には39号車(STANLEYの後ろでフィニッシュした39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supra)と同じペースで耐えることができました」

 星エンジニアも山本も、レース結果を後から振り返れば、セオリー通りタイヤ交換をしていればau TOM'S、12号車TRS IMPUL with SDG Z、23号車MOTUL AUTECH Zによるトップ争いに加われたのではないかと考えている。ただ、その当時最も考えられる逆転のシナリオを模索した結果だとして、ふたりとも後悔はない様子だった。

 ただ、レース直後の山本は何人たりとも近寄れないような雰囲気を醸し出していた。最終戦後の喧騒渦巻くピットロードで山本はプラットフォームにひとり腰掛け、どこか一点を見つめていた。やがてピットウォールの椅子へと移り、しばしひとりの時間を過ごした。

写真: motorsport.com Japan

 山本は、今シーズンのタイトルを逃したドライバーの中で、誰よりも悔しがっているように見えた。それも想いの強さゆえか……。暗闇をライトが煌々と照らす中、撤収作業が続くパドックに居残っていた山本に話を聞いた。

「どの年もタイトル争いができる環境で乗らせてもらっているので、今年特に(想いが強かった)ということはありません。いつも1番を狙って頑張っている中で負けてしまったので、悔しくないわけはありません」

「僕のどの姿を見てもらっていたかは分かりませんが、色々と考えてました」

 色々、とは——。

「レースで負けちゃったこと。レースで負けた過程、経緯。あと、これからのこと。色々ですね」

 少しはにかんだ山本。“これからのこと”という言葉は当然引っかかる。尊敬する先輩・伊沢拓也の引退に際し、セレモニーで伊沢が自分の名前を挙げたことに感激した山本は「ああいう伊沢さんのコメントを聞いちゃったので、もうちょっと頑張ろうかなと」と話すが、少なくとも“これからのこと”について自分の中で見つめ直したいものがあるのは確かな様子だ。

 来シーズンのことについてコメントを求めると、山本はこう語った。

「レース終わって、一旦リセット、一旦色々と整理しようかと思っています」

「新しいクルマ(プレリュードGT)の開発にも携わっていますし、来シーズンに向けてはもう動いているので、立ち止まってはいられません。ただ(シーズンオフは)良い機会なので、これまでのこと振り返りながら、これからのことを色々決めつつ……という形で動いていけたらと思います」

 

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