ルノーと別れ、トヨタの次世代エースに。実力で再びチャンスを掴んだフェネストラズ
2年前にルノー育成ドライバーから外されたサッシャ・フェネストラズは、キャリアの危機に立たされていた。しかし、彼は今や日本国内のトップカテゴリーで、トヨタ陣営の次世代を担う存在となっている。
2017年、サッシャ・フェネストラズはフォーミュラルノー・ユーロカップでチャンピオンを獲得し、一躍注目を集めた。同カテゴリーは過去にピエール・ガスリーやランド・ノリスがチャンピオンを獲得しており、F1への登竜門のひとつと認識されているからだ。
その活躍が認められたフェネストラズはルノー・スポール・アカデミーの一員となり、ルノーF1の育成ドライバーとして2018年のユーロF3に参戦した。しかし、ミック・シューマッハーやユーリ・ヴィップス、アレックス・パロウら実力者がひしめく同年のユーロF3でフェネストラズはランキング11位に終わり、それと同時にルノー育成からも外されてしまった。
メーカーの支援を失ったことは、フェネストラズのレース活動において大きな打撃となった。彼にはヨーロッパでもう1年レースを戦う資金がなく、レースを引退することさえ考えたという。
そんなフェネストラズは最終的に、活躍の場を日本に求めた。2019年はB-MAX Racing with motoparkから全日本F3に参戦することを決めたのだ。日本で評価を落としてしまうヨーロッパ出身のドライバーも多く、それはリスクのある選択であったに違いない。しかし今となっては、その選択が“大正解”だったと言っても過言ではないだろう。
カローラ中京 Kuo TEAM TOM’Sの宮田莉朋との激しいタイトル争いの中でフェネストラズは、20戦中18戦で表彰台を獲得するなど抜群の安定感を見せ、全日本F3のチャンピオンに輝いた。さらにそれと並行して参戦したスーパーGTのGT300クラスでも、56号車リアライズ日産自動車大学校GT-Rを駆り、安定して上位に食い込んでみせた。
当然のことながら、その走りは多くの関係者の目に留まった。そしてフェネストラズは2020年、トヨタのドライバーとして、スーパーフォーミュラ、スーパーGTのGT500クラスという国内トップカテゴリーに参戦することが決まった。スーパーフォーミュラはKONDO RACING、スーパーGT(GT500)は36号車TGR TEAM au TOM'Sからの参戦だ。
■強力な体制、チームメイトがモチベーションに
#36 au TOM’S LC500
Photo by: Masahide Kamio
日本での最高峰カテゴリーに参戦することが夢だったというフェネストラズは、スーパーGT、スーパーフォーミュラそれぞれについて、少し興奮気味に話してくれた。
「僕の目標は、スーパーフォーミュラと(スーパーGTの)GT500にステップアップすることだった。でも、その時がこんなに早くやってくるとは思っていなかったよ!」
「もちろん、とても嬉しく感じている。夢が叶ったし、レースをするのがとても楽しみだ。トヨタが僕をプロのドライバーにしてくれたんだ」
「(スーパーGTでドライブする)トムスの36号車は、トヨタの中でも“ナンバーワン”と言ってもいい。そんなマシンにいきなり僕を乗せてくれるということは、本当に信じられないことだ。1年前の僕にそれを言っても信じないだろうね」
「スーパーフォーミュラについては、話しているだけで笑顔になってしまうんだ(笑)。本当に素晴らしいマシンで、F1に最も近いと思う。鈴鹿のレースペースでは3秒くらいしか差がないんじゃないかな」
「(ルーキーテストで初走行した際は)信じられないほど大きなパワー、ダウンフォースを楽しんだ。カーボンブレーキのマシンも初めてだったけど、これまでとはかなり違うフィーリングだった」
フェネストラズは今季、スーパーGTでは関口雄飛、スーパーフォーミュラでは山下健太とチームメイトになる。どちらも数多くの実績を残してきたドライバーだが、フェネストラズはそんなふたりと競い合えることをポジティブに考えている。
「僕のチームが他のチームと比べてどの位置にいるか分からないので、順位の目標は設定していない」とフェネストラズは語った。
「出来る限り早くチームメイトと同じレベルに到達し、それを超えることが僕の目標だ。スーパーGTとスーパーフォーミュラでチームメイトになるユウヒとケンタは、日本で最高のドライバーたちだ。とても面白いシーズンになると思う」
■日本でのレースキャリア継続に意欲も「F1への道は閉ざされていない」
サッシャ・フェネストラズ(B-Max Racing with motopark)
Photo by: Jun Goto
プロフェッショナルなドライバーとして報酬を受け取りながら、スーパーGTやスーパーフォーミュラに参戦することは、莫大な金額を支払いながらヨーロッパのシングルシーターレースに参戦を続けるよりも、魅力だと感じるドライバーも多い。事実、日本を拠点にするヨーロッパ出身のドライバーも多く、ロニー・クインタレッリやアンドレ・ロッテラーなどがその代表格だと言える。
フェネストラズはこれまでにも、日本で長期的なキャリアを築くことに意欲を示していると語ってきた。ただ、F1を目指して将来的にヨーロッパに戻る可能性もゼロではないという。
「(F1への道が)閉ざされているとは思わない」とフェネストラズは語った。
「日本に行けば、F1へのルートから少し離れてしまうことは分かっていた。でもスーパーフォーミュラからF1に行ったドライバーもいる。どうなるかは分からないんだ」
「(2020年に)良いシーズンを過ごして全てがうまくいった場合、F1へのルートが戻ってくる可能性もゼロではない。ただ、まずはここで結果を残す必要がある」
「今年、僕がどれくらい活躍出来るか次第だ。でも、これまでに言ってきたように、僕は日本でのレース活動にもとても満足している」
Be part of Motorsport community
Join the conversation記事をシェアもしくは保存
Top Comments
Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.
フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。