スーパーGT

なかなか決まらないスーパーGT・GT500新車両規則。環境対策、コスト削減……“三社三様”のメーカー間で妥協点を見出せるか

スーパーGTのGT500クラスでは、次世代の車両規則に関する話し合いが行なわれているが、車両のコンセプトに関する結論が出ていない。3メーカーそれぞれ事情が異なることから、そのバランスをとることは容易ではないようだ。

戎井健一郎

公開日時: 2025/08/20 8:08

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Start action(GT500)

写真:: GTA

 トヨタ、ホンダ、日産の3メーカーがしのぎを削るスーパーGT・GT500クラス。2020年から『Class1』と呼ばれる車両規則が導入されて現在に至るが、次世代車両に関する話し合いは未だまとまらずにいる。

 元々DTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)との共通規則として誕生したClass1は、DTMが2021年よりGT3車両によるカテゴリーとすることに舵を切ったことでスーパーGT単独のレギュレーションになった。その後2024年から新規則に移行するという話も当初はあったが、結局しばらくは現行規則を継続するという流れに。2025年の開幕に向けては全車のモノコックが新調された。

 スーパーGTのプロモーターであるGTアソシエイション(GTA)は現在、「環境対策」「コスト削減」をテーマにした次期GT500車両の導入時期については2030年を目指すと表明している。そしてそのためには遅くとも2026年までに各メーカーとの議論を決着させ、そこから設計・製作・テストを経て“デッドライン”の2030年に間に合わせたい構えだ。

 では、議論に時間がかかっている理由は何なのか? GTAの坂東正明代表は今季第2戦の会見で、次のように語っていた。

「次期GT500車両に何を求めるか、BEV(バッテリーEV)なのかHEV(ハイブリッド)なのか、燃料はどうするのか……。そういったところを決めて図面を描いて部品を選んでプロトタイプを製作して……という流れになっていきます。これらの流れには基本的に5年かかりますが、今の状態で5年後の環境が見えるかと言われたら、なかなか難しいです」

 またホンダ・レーシング(HRC)の佐伯昌弘ラージ・プロジェクトリーダー(LPL)も、近い将来に向けた方向性が議論の中で定まってきていないと述べた。

「仮に2030年にターゲットを置いた時、『どんなカテゴリーにするべきか』『こういうレースがやりたい』というものが議論の中で見えてこないのが難しいですね」

「その時の日本の景気もそうですし、各メーカーが商売としてやりたいことに対してのこのカテゴリーのあり方が、なかなか見えてこないのが難しいところです」

 方向性が定まらない理由として最も有力と考えられるのが、3メーカーの“事情”の違い。トヨタ、ホンダ、日産はそれぞれ、モータースポーツ活動に対するスタンスや予算規模など“三社三様”。その中で環境面・コスト面の落とし所をどこに作るか……それは簡単なことではないだろう。

 日産系GT500チームの総監督を務める日産モータースポーツ&カスタマイズ(NMC)の木賀新一氏はこう語る。

「やはり三者三様で、予算や体制の事情が違っていますから、そこがなかなかうまく収束していかないですよね」

「予算の潤沢なところに引っ張られてしまうと、ついていけなくなってしまいますから、そこのバランスをうまくとりながら話していく必要があります」

求められるコスト削減

 そもそも現在のGT500は、そのコストが上昇傾向にあると言われる。それは車両コスト、そして開発コストの両面だ。

 HRCの佐伯LPLは、車両価格の高騰について「円安も進んでいる中、DTMとの共有部品も毎年値上がりしているんです。同じ物を買っているのですが、始まった当初と比べると1台あたりの金額は相当上がってきています」と説明する。

 では、パーツを輸入せず国内で製造すれば問題は解決するのか? これについてHRCで車両開発を統括する徃西友宏氏曰く「以前の輸送コストだと、とてもじゃないけど国産化できないくらい」本来は輸入の方が低コストであり、輸送費が増加した今でも両者のコスト差は「微妙なライン」だという。加えて、国産化にあたっては型を新造するなどの高額な初期投資が必要なことを踏まえると、国産化が良い解決策だとは断言できないようだ。

 徃西氏はこう続ける。

「輸入品の状況が好転してくれればと思っています。仮に、国産化した後に(為替や輸送コストが)以前の状況に戻ってしまうと……」

「国産化は品質や性能の面で良いところもたくさんありますが、人件費等の関係でコストが下がることはないので、この先5年10年安定的に使いたい共通部品となると、そのメーカーをどうするかは悩ましいですね」

 またNMCの木賀総監督は、車両コスト以上に開発コストがメーカーにとって厳しいのではないかと指摘する。実際、最近のGT500は空力開発を2年周期で解禁するという制限を設ける形で、コストを抑えようとしている。ちなみに2025年シーズンは、オフの空力開発が凍結されたシーズンだった。

 木賀総監督は、空力開発の凍結期間をさらに長くしたり、エンジン開発の凍結をすればコスト削減に繋がるとしながらも「ただ、それだと(ライバルに対して)出遅れてしまった時に追いつけないのも困ってしまいますから、そこはうまく妥協点を見出さないといけませんね」と話した。

 いずれにせよ、GTAはトヨタ、ホンダ、日産の「3メーカーが揃っていること」が次期車両投入に向けての前提条件だと明言している。現在のタイムライン的には、残された議論の時間はあと1年と少し……今後どのような“落とし所”に着地していくのだろうか?

 

 

 

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