今季初の有観客戦を迎えたスーパーGT。感染拡大防止との両立にGTA坂東代表が“覚悟”
スーパーGTを運営するGTアソシエイションの坂東正明代表は、第5戦富士で行なわれた会見でスーパーGTの新型コロナウイルス感染拡大への対策の現状や、今季のGT300クラスのウエイトハンデに関する規則変更について説明を行なった。
写真:: 吉田知弘
先週末に富士スピードウェイで開催された『たかのこのホテル FUJI GT 300km RACE』で、シーズン後半戦に突入した2020年のスーパーGT。前半の4大会を無観客で開催してきた同シリーズも、この第5戦からは観客を迎え入れての開催となり、好天に恵まれた富士スピードウェイには多くのファンが詰めかけ、スタンドやコースサイドといった思い思いのエリアに陣取って、久々の観戦を楽しんでいた。
4日(日)には、スーパーGTを統括するGTアソシエイション(GTA)の坂東正明代表が登壇する定例会見が実施。取材記者を前に会見と質疑応答が行われた。
メインテーマは、①スーパーGT関係者に対するPCR検査、②今後の観客数に関する規制緩和、そして③GT300のウエイトハンデに対する規則変更、の3つ。そのひとつひとつに坂東代表が丁寧に答えるという形で会見は進行していった。
●自動車メーカーや関連企業のサポートでPCR検査を実施
GTAでは前回の第4戦もてぎ大会の終了後、昭和大学病院の協力を得てスーパーGT関係者へのPCR検査を実施している。
検査対象は、第5戦に参加してパドックに入場するドライバーや各エントラントのスタッフから、スポンサーなど関係企業スタッフを含むスーパーGT関係者全員。取材に訪れるメディアも対象となり、総勢1,295名にもなった。
なお、都合によりこのタイミングでの検査を受けられなかった135名は、大会前に各自で検査を受けたとのこと。そしてこの1400名余りの中で唯一人、陽性と判断された受検者もいたようだが、坂東代表は「陽性の結果が出た方は、これまでのスーパーGTの4大会には参加しておらず、今回の第5戦から参加される予定だった方でした」と説明した。
「これまでのスーパーGTの4大会に参加していた方の中には陽性者はひとりもいなかったという結果が出たわけで、感染症対策の基本である自己管理が確実に行われていたことの証明になったと考え、大変嬉しく思っています」と安堵の表情で語っている。
振り返って見れば、各大会の2週間前から毎日検温し、症状確認フォームに記入して送信するなど参加者各々が健康状態を自己管理するという、感染症対策の基本が忠実に実行されてきたことは大きい。しかし、それを一括管理してきたGTAのスタッフの努力も見逃すことはできない。
それが評価されたのか、今回のPCR検査には国内の自動車メーカーや自動車関連企業が「日本のモータースポーツを支える」という立場で協力したそうだが、これもファンにとっては心強い限りだ。
●モータースポーツにおいて感染症拡大防止策をしっかりと講じたイベントを作り上げる
開幕から前回のもてぎまで、無観客で大会を開催してきたスーパーGTだが、今回の第5戦『たかのこのホテル FUJI GT 300km RACE』からはようやく、観客を迎えての開催となった。
政府が定めたところによると、収容人数の50%以内、というのが屋外イベントの入場者制限となっているのだが、これに比べて今回の約5000人と言う数字は低いように感じられる。
そんな疑問に坂東代表は「やっとお客様をサーキットにお迎えできた、と大変うれしく思っています」と語り始めた。
そして約5000人と言う数字に関しては「富士スピードウェイのスタンド席のキャパシティで“三密”を避けた座席の取り方をすると、今回の数字が上限ぎりぎりというところです」と付け加えている。
スタンド席だけでなく、コースサイドの芝生エリアを含めて考えると、入場制限をもっと緩和しても“三密”の状況にはなり難いのでは、とも思われるが、そこにはGTAならではの“覚悟”があった。その辺りに関しても坂東代表は話を続けた。
「我々GTAは“モータースポーツにおいて新型コロナウイルス感染症拡大防止策をしっかりと講じたイベントを作り上げる”という責任を持って仕事に取り組んでいます」とし、今後の大会においての観客入場数については「各レースのオーガナイザーである各サーキットと連携を取りながら検討していきたいと」と結んでいる。
坂東代表は「そもそもGTAは“お客様にサーキットへ来ていただける魅力的なイベントを作りたい”という思いから、このスーパーGTを運営している」と語る。
その基本的なスタンスからすれば、今回のように『パドックエリア1Fに入場できるのはPCR検査を受けて陰性であったスーパーGT関係者のみとし、関係者と観客の導線をはっきり分けた運営』や『観客がパドックに入れるようにはなっておらず、ピットウォークもキッズウォークもない、トークショーなどのステージイベントも来場者向けには作られていないイベント』というのは本来の理念に大きく矛盾する(坂東代表)はずだ。
その一方で、今後しばらくは新型コロナとともに生きていく新たなスタンダードを築いていく必要があり、モータースポーツにおいて感染症拡大防止策をしっかりと講じたイベントを作り上げるという信念との間でジレンマに悩まされることになるのだろう。
●GT300クラスは今年から、搭載するハンディウエイトの係数が“3”に。その狙いは
今シーズンのスーパーGTは、3メーカーが揃って、クラス1規定に準拠した新型車両を投入したGT500にスポットライトが当たることが多いのだが、実はGT300に関しても大きなレギュレーション変更があった。
これまでウエイトハンデは、シリーズ第6戦まで(正確には参戦6戦目まで)が獲得ポイント×2㎏(係数2)とされていたが、今シーズンは係数が3に変更されたのだ。
これに関して坂東代表は「FIA-GT3のマシンの車重は大体1,300㎏、JAF-GT300は1,150〜1,200㎏というところです。車重が重いと相対的な比率が低くなって、ウエイトハンデをたとえば10kg増やすにしても、車重が重いクルマへの効果は車重が軽いクルマに対するものより薄い。そうしたことから、昨年までのポイントの2倍から3倍へと係数を引き上げた」と変更の理由を説明し「狙っていた効果は確実に出ていると思います」と胸を張った。
ただ開幕戦でポールポジションからスタートして優勝し、21ポイントを獲得したら、第2戦ではいきなり63㎏のウエイトハンデを搭載することになり、ウエイトが急激に増えることで安全性を危惧する声も聞かれる。
しかしこれに対して坂東代表は「FIA-GT3車輌は世界の自動車メーカーが作り上げたものなので丈夫。これまでのレースの内容からしても、現在のレベルであれば大丈夫」と評価した。
またJAF-GT300への係数変更の影響については次のように語り、こちらも大きな問題はないとの認識を示した。
「モノ作り・クルマ作りが主眼のJAF-GT300車両は、車重の軽さが強みであるぶんFIA-GT3車両よりも(ウエイトハンデの)影響が大きいと懸念されるかもしれませんが、今回の予選でも100kgのウエイトを積んでいるBRZ(#61 SUBARU BRZ R&D SPORT)が予選でクラス4位に入ってきているように、きちんとやることをやっていれば大丈夫だということが示されていると思います」
さらによりシビアになってくるであろうブレーキングについても「GT300車両は最高速がGT500車両より低く、ブレーキへの厳しさはGT500ほどでなく、現在のレベルであれば問題はない」としている。
ただし現時点ではウエイトハンデの最大積載量は100㎏までとしているが「これ以上ウエイトを重くしていくと、ブレーキ的にもタイヤ的にも難しくなっていくと思っているので、そうしたところを考慮して今後の規則作りに取り組んでいくつもりです」と続けた。
考えてみれば今回の第5戦富士でも予選では、ともに100㎏のウエイトハンデを搭載しているFIA-GT3車両の#65 LEON PYRAMID AMGとJAF-GT車両の#61 SUBARU BRZ R&D SPORTが、それぞれ予選3位と4位につけており、65号車は決勝でも3位入賞を果たしている。そして何よりもレースがバトルで大いに盛り上がったのだから、係数3への引き上げはレースを面白くする“カイゼン”だったと判断すべきだろう。
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