サクセスウエイト制のスーパーGTで求められる「重くなっても戦えるクルマづくり」スバルはパートナーとの連携を武器に

スーパーGTに参戦するチーム・メーカーにとって避けられないのが、サクセスウエイトによる車重増加。彼らはどのようにして、この不可避な足枷と向き合っているのだろうか?

サクセスウエイト制のスーパーGTで求められる「重くなっても戦えるクルマづくり」スバルはパートナーとの連携を武器に

 スーパーGTにおいては、レース成績に応じてウエイトの搭載を義務付ける『サクセスウエイト』システムが導入されており、各車両は好成績を残せば残すほど、その重量が重くなる。終盤戦には搭載ウエイトが半減、あるいは完全撤廃されることになるが、基本的には車両の重量増加にうまく対処したチームが、シリーズチャンピオンに大きく近付くこととなる。

 スーパーGTの参戦チームは、チャンピオンを目指す上で避けられない重量増加とどう向き合っているのか? GT300クラスに参戦し、昨シーズンも搭載ウエイトが上限の100kgまで到達した61号車SUBARU BRZ R&D SPORTを率いる小澤正弘総監督に話を聞いた。

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 第一に、車両は重量が増えると“遅く”なることは周知の事実だが、具体的に運動性能の面でどういったデメリットがあるのかについて、小澤総監督が説明してくれた。

「タイヤで出せるコーナリングパワーを一定だと考えた場合、重量が増えた分だけ速度、つまり遠心力を下げないと釣り合いが取れなくなります。つまり、コーナリング性能は重量が上がった分だけ落ちてしまいます」

「そしてもちろん、エンジンパワーは一定なので、物理方程式に従うような形で加速も落ちます」

 これらの説明を総合すると、重量増加による運動性能の面での主なデメリットは『コーナリング性能低下』と『加速力低下』のふたつということになる。ただ、後者に関しては致し方ない部分があるにしても、前者に関しては“タイヤとのマッチング”によってある程度打ち消すことができると小澤総監督は話す。

 スバルは2015年シーズンからダンロップタイヤを使用している。昨年61号車スバルは第5戦富士の段階でウエイトが上限100kgに到達したものの、同レースでは予選4番手、翌戦鈴鹿でも予選2番手を記録するなど、その足枷を感じさせないパフォーマンスを見せた。これはタイヤとのマッチングがうまくいったことが要因にあると彼らは考えている。

 つまり、サクセスウエイトと向き合う上で考慮しなければならない重要点は、タイヤということだ。

SUBARU R&D SPORT

SUBARU R&D SPORT

Photo by: Masahide Kamio

「マシンが重たくなるとその分荷重が増えますので、それに耐えられる剛性のタイヤを用意しておく必要があります。その辺は我々もダンロップさんとの付き合いが長いので、エンジニア同士での会話もしっかりできています」

「去年もウエイトを積んだ時でもそれほど遅くなりませんでしたが、これはタイヤの性能が大きいと思います。荷重がかかればかかるほど仕事をしてくれるタイヤであれば、重くなってもそれほど影響はない訳です。重たくなって加速力が落ちても、コーナーでは遅くなっていない。これはやはりタイヤとのマッチングの良さが要因だと思います」

「(ダンロップと)タイヤの開発をずっと一緒にやってきて、みんなが同じ方向に向いて良いものが作れているんじゃないかなと思います」

 各レースごとにマシンの重量が大きく変化するというのは、スーパーGTの特色のひとつでもある。ポイントを稼ぐ度、それに伴って増加した重量に対処する必要がある訳だが、悲願のタイトル獲得を目指すスバルは「100kgのウエイトを積んだ状態でいかに戦えるか」に焦点を当てている。

「100kgのウエイトを積んで、なおかつ燃料満タンの時にどう対応できるかが重要です。去年もサクセスウエイトは上限までいきましたし、今のGT300の規則だとあっという間に上限まで行ってしまいます」と小澤総監督は言う。

「重たくなった時のことを視野に入れて、車もタイヤも開発してきました。ですので、『重たくなった時にどう対処しよう』というよりは、そもそも重たくなった状態で戦えるような車作りを進めてきたんです。オフシーズンのテストでは、最大積載量まで持ってきた時のスプリングレートやサスペンションジオメトリーなどのデータを収集し、それをベースにセットアップやウエイト位置の調整をしてきました」

 またドライバー側も、ウエイトを多く積んだマシンをドライブする際はいつも以上に走らせ方を工夫している。山内英輝は次のように語ってくれた。

「マシンが重くなればなるほど、一気にトラクションをかけるとリヤのグリップが抜けてしまいます。パワーのあるマシンであれば、いつものようにV字を描くようにコーナーを曲がれば問題ないと思いますが、ローパワーなマシンの僕たちは、手前から綺麗にトラクションをかけて、“丸く”コーナーを曲がることを意識しないといけません」

 61号車BRZは54kgのサクセスウエイトで第5戦SUGOに臨んで見事優勝し、ランキングトップに。次戦は上限100kgのウエイトを積むことになるだろう。彼らは“コーナリングマシン”の強みを活かしながら「重たくてもしっかり戦えるマシン」で王座を目指していく。

 

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