カルソニックGT-Rの5年ぶり優勝で“ホッとした”星野監督。平峰の成長にも太鼓判「NISMOから声が掛かるんじゃない?」
スーパーGT第5戦で勝利した12号車カルソニック IMPUL GT-Rの星野一義監督が改めてレースを振り返り、その際感じたドライバーの成長や今後の意気込みなどを語った。
写真:: 皆越 和也
スーパーGT第6戦SUGOから半月が経ったが、同レースで優勝したカルソニック IMPUL GT-Rの星野一義監督とは表彰台前でひじタッチはしたものの、当日十分に話ができなかったこともあり、後日改めて連絡を取り、話を訊いた。
「とにかくホッとした。その一言だよね。何とかスタッフが頑張ってくれた」と星野監督は開口一番に答え、さらに続けた。
「SUGOのレース前にシミュレーションをしてみたけれど、8号車(ARTA NSX-GT)や64号車(Modulo NSX-GT)などNSXが速いと予測していたので、何とか予選では2列目までに入りたいと思っていた。そして8号車、16号車(Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT)に続く3番手になった。決勝ではヨーイドンしてみると8号車が速い! (スタートドライバーの松下信治は)一瞬16号車を抜いて2番手に上がったけれどゴミを拾ったらしく、抜き返されてさらに17号車(Astemo NSX-GT)にも抜かれてしまった」
しかし松下は4番手に落ちても諦めずに前を追い、20周目の2コーナーで17号車NSXを、21周目のハイポイントコーナーで16号車NSXをかわし2番手に順位を上げた。しかし、この時点でトップを走行する8号車とは16秒もの差があった。
「松下が良く抜き返してくれた。そしてSUGOでは必ず何かが起きてセーフティカー(SC)が入るから、予期せぬ出来事がないようにとはスタッフたちに言っていた。ドライバー交代やタイヤ交換などピット作業の練習は搬入日の夕方もやっているけれど、あれは緊張感のない作業だから、ウォームアップ走行などプレッシャーのかかる時もミスなくやるようにして、とにかくミスをなくそうとしたんだ」
83周レース中盤の31周でトップの8号車NSXがピットイン。最初のスティントを担当した松下は33周でピットインして平峰一貴に交代した。2台の差は34周目に10秒1で、バックマーカーに引っかかったりしたこともあり36周目には13秒9になっていた。そこから平峰の追い上げが始まる。
#12 カルソニック IMPUL GT-R
Photo by: Masahide Kamio
平峰は1周あたり1秒以上詰めていき、39周目には9秒8、43周目には5秒6……19号車スープラが車両火災のためにSCが導入される直前の46周目には、その差は2秒7まで縮まっていた。もう平峰にはトップが見える位置にいたはずで、レース後の記者会見で逆転する自信はあったのか尋ねると「はい、もちろんです。それがIMPULのレースですから!」と平峰は力強く答えた。
そしてその直前には8号車NSXにピット作業時の規定違反があり、ピットロードのドライブスルーペナルティが出されていた。しかもSC先導中のペナルティ消化はできないにもかかわらず、8号車NSXはピットロードを通過し、さらにピットロード出口の赤信号も見落としてコースへ戻ってしまい、翌周にまたピットインするなど大混乱。優勝戦線から脱落することになった。リスタート後、平峰は17号車NSXや1号車STANLEY NSX-GTなどの追撃を受けることなく独走状態に持ち込んだ。
「平峰が成長した。SC後も他と接触しないでミスなく走った。良いドライバーになってくれたよ。平峰はレース中、全く喋らない。ラジオ(無線)で聞いているけれど、100%クルマの性能を引き出して走っているというのが伝わってくる。集中しているから、こちらからも何も話すなと言った。僕も現役時代はそうだったしね」
「平峰も松下も元々はホンダの育成ドライバーで、そこから外れたことで根性がある。そのうちNISMOから声が掛かるんじゃないの? NISMOは何でも欲しがる読売ジャイアンツだから(笑)。ウチからNISMOに行ったドライバーは、ブノワ(トレルイエ)、本山(哲)、(松田)次生、ロニー(クインタレッリ)らがいる。原石を磨いて光らせるのがIMPULの仕事みたくなっているけれど、それでいいんだよ」
今回の優勝で日産勢の中でポイントリーダー(全体では実質5番手)となり、次戦オートポリスでは燃料リストリクターが入りサクセスウェイトは29kgとなる。
「オートポリスでは1リス(燃料リストリクター1段階ダウン)入るしアップダウンのあるコースだから正直しんどいけれど、3位以内に入りたいと思っている。もう何もかもが崩れそうな時に優勝できて、また戦うぞって気力が湧いて来たからね。それと優勝後、ドライバーとメインスポンサーであるマレリの本社へあいさつに行って、会長と社長に優勝を報告してきたよ。カルソニックというブランドを車名にそしてカルソニックブルーというカラーを残してくれて、本当に感謝しています。もう甘えてはいられない。チーム力もアップしたし、思い切り戦うよ!」
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