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スーパーGT 第1戦 富士

試練を乗り越え待望の開幕。現場で感じたスーパーGTの”スゴさ”

厳重な新型コロナ対策の下、無観客で開催されたスーパーGT開幕戦。富士スピードウェイは、普段とは全く雰囲気が違っていた。

Starting Grid

 新型コロナウイルス蔓延に伴って緊急事態宣言が発令されたため、2020年のスーパーGTのシーズン開幕は延期されていた。しかし無観客ながら、富士スピードウェイで7月18日、19日にようやく開幕を迎えることとなった。

 ドライバーやチームやファンはもちろん、自分のような取材者にとっても待ちに待った開幕戦ではあるが、いつもとは少々勝手が違った。

 2011年、東日本大震災が発生した際も、スーパーGTは開催自粛を行なったが、各所で混乱は続く中ではあったもののシーズン再開が決まったときには何か重荷を下ろしたような、晴れやかな気分に切り替わったものだった。しかし今回はそうはいかなかった。

 まず、開幕戦が無観客で開催されることが発表された段階で、我々取材者に対しては、年間取材パスの有無に限らず取材許可人数を70人に限定すると告知があった。通常、富士スピードウェイでスーパーGTが開催されればプレスルームには270人ほどの取材関係者が集う。それを70人に絞るというのだからほぼ1/4の人数である。

 取材申請も、通常筆者のようなフリーランス取材者は個人で行なうが、今回は雑誌などの媒体単位で健康管理者を定めた上で行なわなければならなかった。さらに、70人に選ばれ取材が許可された人間は、7月はじめからイベント当日まで2週間にわたって毎日、午前中のうちに検温と体調についてレポートの提出を義務づけられた。ここで異常があれば、残念ながら取材許可は取り消される。またレースウィークに入ってからは、オンライン会議で取材当日の注意点に関するミーティングが行なわれ、改めて最終的な問診票の提出もしなければならなかった。こうした健康管理は現場に関わるドライバーやチームのクルーに対しても同様だったと聞く。

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 新型コロナウイルス蔓延は収束するどころか、一部では再び増加する傾向を見せている中で開催されるビッグイベントである。自分はおよそ人から管理されることを嫌う人間ではあるが、二重三重に講じられた感染防止策には、絶対にスーパーGTを感染クラスタにはしないという強い意志を感じたので、面倒ではあったけれども従った。

 レースウィークの金曜日、小雨の降る中、おそるおそる富士スピードウェイへ向かった。入場ゲートではまずフェイスガードをつけた係員からクルマの窓越しに体温測定を受けた。「ああ、いつもと違うんだな」と身が引き締まる思いがした。

 通常金曜日は搬入日で、パドックはこれから始まるレースに向け緊張感や期待感にあふれているものなのだが、今回は雨が降っていることもあってひっそりとしているので驚いた。

 感染防止のパーテーションごしに取材受付をしてプレスルームにたどりつく。プレスルームは、ソーシャルディスタンスを確保するために座席が前後左右1列おきになっていて、いつもとは違う雰囲気で落ち着かない。これからいよいよ開幕戦だという浮かれた気分にはとてもならない。

 搬入が進むパドックを眺める。いつもはトランスポーターから足の踏み場もないほどの資材が荷下ろしされて設営が行なわれ賑やかになるのだが、今回はひっそりガランとしたものだ。

 実は今回、各チームともピット入りするスタッフの人数が必要最小限の16人に制限されていた。ゲストの人数もその16人に含まれるので、どのチームもゲストを招待せず、そのゲストを接待するためのホスピタリティーブースも設営しないことにしたのだという。いつもはパドックを華やがせるホスピタリティーブースがないと、パドックのなんと殺風景なことか。その殺風景な景色の中、マスクを着用した少人数のスタッフが、自分のピット内で黙々とレース準備を進める。

 公式予選の行なわれる土曜日には、違和感はより顕著になった。無観客開催なので当然ながらまったくファンの姿は見えない。レースクイーンもいない。いつもは神出鬼没に歩き回るくま吉の姿もない。スタンドがガランとしているばかりかピット裏も人通りがなく、通常なら早朝からにぎやかに流れる観客向け場内放送も行われないので場内は静まりかえっていて、まるで平日のテストに来たような雰囲気だ。

 GTA関係者は「やりすぎかもしれないけれどもこれで十分という保証はどこにもない。正解がわからないまま手探りで開幕にこぎつけた」と語る。絶対に感染者を出さないという決意、スーパーGTは社会にそれだけ影響力のあるイベントであるという自負と責任をひしひしと感じた。

 意外だったのは、普段は「自分たちがサーキットへ来るのはレースに勝つためであって、ファンサービスのために来るわけではない」と言ってはばからない人物が「無観客のレースは張り合いがない」ともらしたことだった。

 かく言う自分ですら、いつもはまっすぐ歩くこともできないほどの日曜日の人出を取材者としては邪魔に感じていたのだが、こうなってみるとそれがいかに思い上がった感覚だったかと反省した。あの人出は、スーパーGTにとってなくてはならないものだったのだ。場内の大型ディスプレイには、誰が見るともなく、来場できなかったファンやレースクイーンをはじめとする関係者からの激励ビデオ映像が流されており、それを見て柄にもなく胸が熱くなった。

 そこにあって見慣れたもののありがたみは、見えなくなったときにわかる。「あれ? 自分は今までこんなにすごいレースを眺めていたのか」と、サーキットを走るレーシングカーを見て改めて感じ入った。こうした試練をつきつけられたことは、スーパーGTにとって、あるいは自分にとって、決して悪いことばかりではなかったのではないかと思ったりもした。

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