サード脇阪寿一監督「関口と共に、もっと違うことができなかったかを考え、未来に繋げていく」
スーパーGT第2戦富士で13位となった#39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra。脇阪寿一監督は、真後ろを走っていた3号車の高星明誠がクラッシュしたことについて、関口ともっと別のことができなかったのか、考えていきたいと語った。
富士スピードウェイで行なわれたスーパーGT第2戦の決勝レースで、#3 CRAFTSPORTS MOTUL Zの高星明誠が大クラッシュを喫するという事故があった。
高星は当時、前を行く首位#39 DENSO KOBELCO SARD GR Supraの関口雄飛を追っていたが、関口が避けたスロー走行しているGT300クラスの#50 Arnage MC86を避けきれず、左リヤに接触しながらスピン……ガードレールに激突し、マシンが大破してしまった。幸いには高星には骨折など大きな怪我はなかった。
当時の状況について関口は、50号車のスリップストリームをギリギリまで使おうとしていたと語った。
「その前のプリウスもそうですし、スリップストリームをギリギリまで使おうというのが、自分の狙いでした」
当時の39号車サードは、最後尾からのスタートながら、戦略が功を奏して首位に立っていた。しかし後続の3号車CRAFTSPORTSと37号車KeePer TOM'Sの方がペースは良く、プレッシャーをかけ続けられていた。
そして迎えた58周目、最終コーナーを立ち上がった関口の39号車の真後ろには、3号車と37号車が並び、スリップストリームからオーバーテイクを仕掛けようとしていた。それを封じるべく関口は、ピットインしようとしている#31 apr GR SPORT PRIUS GTのスリップストリームを使い、その後50号車アルナージュのスリップストリームも使った。
ただその時の50号車は、ピットレーン入り口を過ぎたところでギヤに問題が生じてしまい、シフトアップできない状態にあった。そのためコースの右側をスロー走行していたわけだ。時速は100kmに満たなかった。
一方の関口は300km/h近い速度で接近。ギリギリのところでラインを左に振った。しかしその真後ろにつけていた高星にとっては、あまりにも速度差がありすぎ、突如目の前に現れた50号車を避けるために十分な時間はなかった。結局ステアリングを左に切ったもののMC86の左リヤに接触しながらコントロールを失い、コース左のガードレールに激突してしまった。
#39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra
Photo by: Masahide Kamio
「後ろの高星選手は、(50号車が)見えなかったみたいで反応が遅れ、急ハンドルを切ったことによって多分ぶつかってしまったのだと思います。身体が大丈夫だと聞いているので、それはよかったと思います」
この件についてチームの脇阪寿一監督は、今後同じようなことが起きないようにしていきたいと語った。
「高星選手との件は、(関口のドライブが)危なかったと言う人もいるかもしれません。僕はこのチームの監督ですし、関口雄飛は我々の大切なドライバーです。ですから、彼のことは守ってやりつつも、二度とああいうことが起こらないようにしていきたいと思っています」
そう脇阪監督は語る。
「高星選手が無事だったのは本当によかったです。関口のスピリットとしては良い部分もあるし、少し危ないこともあったかもしれません。関口ともう少し違うやり方ができなかったのかということも考えながら、未来に繋げていきたいです」
「我々はクルマを使って戦っています。ですから、今後ああいうことが起こらないようにどうすべきかというところも、技術の上げどころだと思います。そこは徹底的に取り組んでいきたいです」
「一瞬のことでしたが、今は映像があります。その映像を分析しながら、我々にしか分からないこともあるので、その中できっちりとやっていきたいと思います」
「でも何よりも、高星選手が無事で本当に良かった」
前述の通り今回の39号車サードは、予選からうまく行かず、最後尾グリッドからのスタート。スタート直後には他車と接触してダメージを負ってしまった。それもあってペースが上がらず、苦しい戦いを強いられた。
しかし1回目のピットストップを全車の中で最も遅らせたことが功を奏した。39号車がピットインしたまさにそのタイミングで、GT300クラスのマシンのクラッシュによりセーフティカー(SC)が出動。これにより一気に3番手までポジションを上げることができたのだ。そして再スタート時には関口が前を行くトムスの2台にプレッシャーをかけ、このトムス2台が1コーナーでオーバーラン。これにより首位に躍り出ることになった。
脇阪監督は、自分たちに与えられた環境でできることをしっかり準備したことが、ポジションアップの要因だったと語る。
「我々は自分たちに与えられた環境で何ができるかを考えて準備をしていました。それでSCがドンピシャのタイミングで出てくれた。そのための準備をしていたことで、呼び込んだラッキーだったと思います」
「あんまり言いたくはないですけど、勝負に行く前に、自分たちがラッキーを手にできるかどうか、そのための準備を徹底できるかどうかだと思います。それができた中で、神様がたまに贈り物をくれる……そういうことだと思います」
「その贈り物を手にできる確率は、準備している者としていない者では違いますよね」
「色々なことがありましたが、新生サードとして、全員野球を謳って我々にしかできないレースをしました。今回のことをラッキーだと片付けるならそれでいいですが、我々も周到に準備してやっていることですからね」
関口も、事前のシミュレーションをしていたことが、ポジションアップに繋がったと語った。
「色々なシチュエーションを考えていました。一発逆転を狙うためには、SCが出るとか、そういうイレギュラーなことが起きないといけなかった。でも、それが起きた時にどうしようかということは、シミュレーションしていたんです。それがうまくいきました」
ただせっかくのポジションアップも、赤旗中断中の”ミス”により手放してしまうことになった。
赤旗中断となった際、ドライバーが降車する許可が下った時に、関口選手が自らのマシンを触ってしまったのだ。これが作業規定違反となり、ドライブスルーペナルティが科される……ただそれを消化するタイミングはなかったため、トップでチェッカーを受けつつも40秒のタイム加算ペナルティ。前述の13位になった。
「ペースは悪かったんですが、戦略でトップに立ったのに、触って失格になってしまったのが勿体無くて……申し訳ないです」
そう関口は語る。
「カナードかな……壊れてたので落ちないかなと、指でちょんちょんとやっただけなんです。解釈の違いで、それが作業と取られてしまったのがすごく残念です」
「でもルールはルールですから、それを受け入れてまた頑張りたいと思います」
これについては、脇阪監督がダメージをチェックするよう、関口に指示をしたのだという。
「クルマから降りられるというアナウンスをもらったので、どこが壊れているのか、自分の目で確認しなさいと僕が指示をしました」
そう脇阪監督は明かす。
「それで触ってしまった。あれは僕のミスかなと思います」
「そういう結果的な部分と現実と、次までに課題をきっちりと分析して、次に進みたいと思います。今日のポジティブもネガティブも全て、成長の糧になるように分析し、次に繋げていきたいなと思います」
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