光輝く34号車NSXのホイール。美しさだけでなく熱対策の意味合いも?

#34 Modulo KENWOOD NSX GT3のホイールは銀色に光り輝いているが、それには美しさだけでなく、実用的な意味合いもあった。

Modulo KENWOOD NSX GT3のホイール

Modulo KENWOOD NSX GT3のホイール

吉田知弘

 今季からスーパーGTのGT300クラスに参戦している#34 Modulo KENWOOD NSX GT3。そのホイールは美しく銀色に輝き、異彩を放っている。

 このホイールは、ホンダの純正オプションパーツを手がけるホンダアクセスが、#34 Modulo KENWOOD NSX GT3専用に開発したホイール。ベースとなるデザインはGT500でも使われている同社製のホイールと同じだが、GT3用に若干のモディファイが施されている。

 しかし、なんといっても目を惹くのは、前述した通りその色だ。ただシルバーで塗られているだけではなく、メッキ加工されたように輝いているのだ。

 この処理は、アルミニウムの陽極酸化被膜(=アルマイト)加工を施したものであり、特有の硬質な膜に覆われることで塗装したホイールよりもダストやデブリが刺さりにくく、掃除しやすいという。しかし、この処理の狙いはそれだけではないようだ。

 マシンに装着されたホイールの内側には、ブレーキディスクとパットが存在する。ブレーキを作動させれば当然関係するパーツは発熱し、周辺に存在する別のパーツに影響を及ぼす。ホイールも当然その影響に最もさらされ、温度が上昇……ホイールの温度が上昇すれば、その内部の空気の温度も上がり、膨張し、結果タイヤの内圧が上がってしまうことになる。

 光り輝くホイールは、この影響を減らすという効果を狙っているという。実はスーパーGTに限らず、F1でもホイールの内側にメッキやアルマイト加工を施し、鏡面のように仕上げることがある。これらの処理も、ブレーキ熱がタイヤの内圧に影響するのを、極限まで引き下げるための施策なのだ。

「光っているホイールだと、反射して熱が伝わりにくいという傾向にあります」

 そう説明するのは、ホンダアクセス商品企画部の松永孝二氏である。

「通常の黒いホイールでも、中だけ違う色にしていたりします。この銀色のホイールは、そういう効果も期待しているんですよ」

 製造を担当したエンケイの担当者にさらに話を訊くと、次のような答えが返ってきた。

「熱を、赤外線も含めて反射させています。F1用ホイール(※エンケイは長きにわたり、マクラーレンにホイールを供給している)でも、ブレーキの熱をリムに吸わせないための策として、ピカピカに磨くということをやっていました。今回はその応用です」

「実際に使ってみないとその効果は分かりませんが、特に夏場の暑い時期には、威力を発揮すると思います」

「赤外線を反射してやれば、ピークの熱は下げられるだろうという考え方です。それによってタイヤの内部温度の変動幅を狭めることができ、内圧をある程度安定させることができます」

 ほんの僅かなタイヤの内圧変化が、マシンのパフォーマンスに大きな影響を及ぼしてしまう可能性がある昨今のレーシングシーン。ホイールが鏡のように熱や赤外線を反射することで、タイヤの内圧が変化する可能性を減らしているわけだ。

 しかし熱を吸収しないということは、その分ブレーキの加熱につながるのではないか……という疑問も生じる。これについて尋ねると、エンケイの担当者は次のように説明した。

「基本的には、マシンは走っていますので、空気の流れでどんどん冷やされていきます。ピークの熱さえカットしてしまえば、効果はあると思います」

 またマシンの側面方向から見ると、スポークは非常に細いように見える。しかしこのスポーク、実は奥行き方向に長くなっており、肉抜きまでされている。

「これは表面積を増やすための処理です」

 そうエンケイの担当者は説明する。

「空気の中をこのスポークが回転することで、放熱という効果はあります。この表面からの放熱と、アルマイト加工による熱反射効果……この両者での相乗効果を狙っています」

 ただ美しいだけではない、Moduloブランドのレーシングホイール。究極の速さを競うレーシングマシンは、その美しさの中にまた違った意味合いを内包している。

 今シーズンもいよいよ夏場に差し掛かり、今週末の鈴鹿以降、7月のタイや8月の富士などは、灼熱が予想される。そこでこの光輝くホイールが、威力を発揮するかもしれない。

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