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BoP”50kg”という壁を乗り越えろ……土屋武士が2018年に見た景色

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BoP”50kg”という壁を乗り越えろ……土屋武士が2018年に見た景色
執筆:
2019/02/17 8:14

「打倒ワークス」としてスーパーGT(GT300クラス)に挑戦を続けるつちやエンジニアリング。チームを率いる土屋武士監督が2018シーズンを振り返る。

土屋武士監督 #25 HOPPY 86 MC
#25 HOPPY 86 MCの松井孝允と土屋武士監督
#25 HOPPY 86 MC(坪井翔)
#25 HOPPY 86 MC
#25 HOPPY 86 MC
#25 HOPPY 86 MC
#25 HOPPY 86 MC
#25 HOPPY 86 MC
#25 HOPPY 86 MC
#25 HOPPY 86 MC
#25 HOPPY 86 MC
松井孝允(#25 HOPPY 86 MC)
土屋武士, #25 HOPPY 86 MC
坪井翔, #25 HOPPY 86 MC
#25 HOPPY 86 MC
#25 HOPPY 86 MC
#25 HOPPY 86 MC
#25 HOPPY 86 MC
#25 HOPPY 86 MC(松井孝允/坪井翔)
#25 HOPPY 86 MC

 2018シーズンはGT300クラスで未勝利に終わったつちやエンジニアリング。しかし、チームを率いる土屋武士監督は「面白い1年だった」と前向きに捉えていた。

 昨年、#25 HOPPY 86 MCとして参戦したつちやエンジニアリング。メインスポンサーがホッピーになったことでマシンのカラーリングも大きく変更され注目を集めた。

 ドライバーは在籍4年目を迎えた松井孝允と期待の若手である坪井翔。2016年以来となるシリーズチャンピオンの可能性も期待されていたが、最高位は第3戦鈴鹿の2位。2015年にスーパーGTに復帰して以来、初めてシーズン未勝利で終わった。

 それでも土屋監督は現在のチームのテーマである「昨日の自分に負けない」という部分では、しっかりと全うできた語った。

「2018年は、優勝ができなかった部分(悔しい気持ち)はありますけど、うちのテーマである“若い職人たち”を育てていく部分と、あとはひとりひとりが“昨日の自分に負けない”というテーマを追い続けたという部分では、全うできたかなと思います。2017年よりも成長できていると思いますし、日々それを感じながらやってこられました」

つちやエンジニアリングに立ちはだかった「50kg」という壁

 実は2018シーズン、つちやエンジニアリングは大きな困難に立ち向かっていた。第3戦鈴鹿からBoPが変更されマザーシャシー勢に対して50kgの車両重量増加が言い渡された。

 ただでさえ、圧倒的なパワーを誇るGT3勢に比べて非力な部分があるマザーシャシー勢。その中でつちやエンジニアリングは毎回知恵を振り絞り勝つための戦略を準備してきていた。その辺は抜かりがないように徹底している土屋監督をもってしても、今回のBoPでは「無理」という答えしか出てこなかったという。

「運良くいろんなことが絡み合えばうまくできたかもしれないけど、僕はエンジニアなので……理論的に考えても全く無理と思う中でレースをしていました」

「ドライバーは決勝でいつも抜かれて、バトルをさせてもらえないレースが多かったです。(まともにレースができないことに対して)すごく悔しい表情をしているのを僕も見ていました」

「正直、夏ぐらいまでモチベーションをどこに持っていっていいか全然わかりませんでした。争う相手はマザーシャシーしかいないという状況でしたからね。うちは『打倒ワークス』をテーマにしていつもやってきましたけど、(BoPでの50kg増により)そんなことも言えない状況になっちゃいました」

「(2019年に向けた打開策など)色々考えましたが、今は自分たちができる最大限のことをやろうというので、もっとこのクルマを突き詰めることに集中しました」

 そう語った土屋監督は、このBoPの状況下で速くするためにどうすればいいかを考えはじめ、行動に移した。その結果、シーズン中盤に劇的な変化が見えはじめた。

「自分の中でも『もっと速くするためにはどうしたら良いか?』『もっとタイヤを使い切るには?』『もっと乗りやすくするにはどうしたらいいか?』ということをドライバーと一緒にどんどん突き詰めていって、セットアップに関しても新しい領域が見えました」

「できる限りのことをしてきた中で、僕たちが苦手としていた富士でポールポジションを獲れたし、SUGOで70kgのウエイトハンデ(BoP分も含めると合計120kg)を積んで予選2位が獲れました。やっぱり自分たちがやってきたこと、そして坪井(翔)と(松井)孝允ふたりの成長が形に現れた予選だったなと思います」

無理をしすぎてもダメ……

 土屋監督も語るように特にシーズン後半での予選の活躍は目を見張るものがあった。この勢いなら決勝でも結果が出ても不思議ではないのだが、BoPで重くなったマシンで速さを求めた分、“無理”を強いることもあったという。

「自分たちのパフォーマンスを引き上げれば何とかなるんじゃないか?という希望を持ちながら、自分たちのエネルギーにして頑張ることができました。ただ、最大限やって決勝では正直いつもギリギリまで攻めていたので、ミスをしてしまったりとか……無理をしていたなというのは反省点のひとつとしてありました」

「2018シーズンの中で、唯一自分の中で悔いが残るとしたら……オートポリス戦です」

 土屋監督が挙げた第7戦オートポリス。ポールポジションスタートからトップを死守しピットストップを行なった#25 HOPPY 86 MCは、フロント2本のみ交換するという戦略をとった。しかし、これは“失敗”だったという。

「その時に交換したのがフロントの2本でしたが、その判断だけが自分としては悔いが残る部分でした」

「いつも戦略の部分ではしっかり準備をして、練りに練っていつもチョイスしています。ただフロントタイヤの件は(戦略を完璧に遂行するための)準備ができていなかったのにそれをチョイスしてしまいました。言ってみれば自分の能力不足というのがそこで痛感しました」

「悔いは残りますが、それは自分の能力なので、大きな糧にして自分を成長させようという部分では、いい失敗だったかなと思います」

 最終的に松井と坪井を擁して臨んだ2018シーズンは未勝利に終わってしまったが、土屋監督はこの1年を前向きに捉えていた。

「結果的に、重くしてもらったおかげ見えたものがたくさんあったし、知見が増えました。これが(今まで通り)軽かったら、ここまで無理しなかったです」

「こういう時でも、やるべきことから少しでもズレるとリザルトは全くついてこないという事を学びましたし、やるべきことはしっかりやるけど無理をしすぎてもダメなんだなということを学んだ1年でした」

昨日の自分に負けない。前年の自分たちを圧倒的に上回る……

 リザルトとしては未勝利だったが、チームとしての“強さ”はチャンピオンを獲得した2016年の時よりも、遥かに進化しているという。

「2016年の自分たちが全く敵わないような今の自分たちがいます」

 土屋監督はそう語る。

「これで2019年はどうしたいか、と言われたら……またシーズンを終えた時に2018年の終わりの自分たちを圧倒的に超えられる自分たちになっていければいいなと思っています」

「そうすれば、おのずと新しい景色が見えてくるし、それがレースをやっている意義、自分たちのチームの存在意義でもあります。そうやって若い職人が育っていくと思います」

「GT3は技術的な部分のトライができず“レースをするクルマ”です。でも、JAF-GTやマザーシャシーは技術者を育てる要素が色濃くあるカテゴリーです。やっぱり日本のモノづくりの部分もそうだし、レース屋に生まれた自分としては、そこを追いかけていきたいですね」

「願わくば、それがみんなに応援されるチームでありたいと思っています。プライベーターは応援されないと消滅してしまう現実があります」

「そういう意味では、これからも自分たちの信じた“やるべきこと”を全うしていく。それで自分たちがどこまで成長できるかっていうのは一番楽しみだし、(ドライバーやチームスタッフに対して)実際にGT300でのリザルトが自分たちの表現する場所ではない、自分たちの成長をモチベーションにしようって言い続けてきました」

「もちろん目標は勝つこと、チャンピオンを獲ることです。それは昔から変わらないし当たり前なことです。でもGT300でチャンピオンを獲ることが目的ではなくて、自分たちが成長していくことが目的です。それをブレないでやり続けることが大事だと思っています」

 現体制でスーパーGT参戦を開始して以来、つちやエンジニアリングは常に大きな壁にぶち当たり、その都度乗り越え続けてきた。

 2015年には非力なマシンでもライバルに打ち勝つべく、タイヤ無交換作戦ができるようなタイヤ開発とマシンのセットアップに着手。2016年には努力が実りチャンピオンを獲得したが、その直後に父の春雄氏が病にかかり、治療のために現場を一時離脱。つちやエンジニアリングの大黒柱がいない中、翌シーズンへの準備をしなければならなかった。

 2017年には順調にポイントを積み重ねチャンピオン獲得も確実視されていたが、第6戦鈴鹿でマシンが横転し大破。第7戦タイへの出走を間にあわせるべく、懸命な修復作業を行なった。そして2018年はBoPで50kgも増加した車体重量でも諦めずに試行錯誤を続け、特にウエイトハンデが重くなるシーズン後半に2度のポールポジションを勝ち取った。

 こうして様々な困難を乗り越えることで、彼らのテーマである「自分たちの成長」を続け、強さを蓄えてつづけてきたつちやエンジニアリング。きっと、2019年も“新たな壁”が彼らの前に立ちはだかるだろう。

 それを、土屋監督を中心にどのようにして乗り越えてくるのか……非常に楽しみな2019シーズンになりそうだ。

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この記事について

シリーズ スーパーGT
ドライバー 松井 孝允 , 坪井 翔
執筆者 Tomohiro Yoshita