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悲しみを乗り越え……6年ぶりに優勝し、次へと前進を始めたチームルマン

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悲しみを乗り越え……6年ぶりに優勝し、次へと前進を始めたチームルマン
執筆:
2019/07/09 10:39

スーパーGTタイ戦で勝利し、6年ぶりとなるGT500クラス優勝を飾ったチームルマン。脇阪寿一監督をはじめ多くのチームスタッフには、この勝利を報告したい人がいた。

 2019スーパーGT第4戦タイ。GT500クラスでの激戦を制し、見事トップチェッカーを受けた#6 WAKO’S 4CR LC500(大嶋和也/山下健太)は、6年ぶりの優勝だった。

 #6 WAKO'S 4CR LC500は第3戦鈴鹿で3位表彰台を獲得すると、第4戦タイでは予選でコースレコードを更新する速さをみせポールポジションを獲得。決勝では前半スティントから大嶋が堅実な走りを披露した。周回遅れを処理する際に一度はトップを譲ったものの、ピットストップでメカニックが迅速な作業を見せて逆転に成功。後半スティントは何度もTOM’S勢に並びかけられるシーンがあったが、そこを山下が意地でブロックしトップを守り切りチェッカーフラッグを受けた。6年ぶりの優勝を飾った瞬間だった。

 同じレクサスLC500を駆るTOM’S勢の猛追を振り切り、念願の勝利を飾った6号車。パルクフェルメで歓喜する大嶋と山下のもとに満面の笑みで加わる脇阪寿一監督の姿があった。

 レース後「ずっと支えてくれたWAKO’Sさんをはじめ、スポンサーの皆様、そしてファンの皆様に感謝している」と語った脇阪監督だが、この勝利を報告したい人がもうひとりいた。2018年のシーズン途中に突然の病で他界した故・山田健二エンジニアだ。

 レース後、チームルマンのピットを訪れた際、チーム関係者のひとりが「日本に帰ったら健二さんのところへ報告に行こうと思っています」と話してくれた。

 体制は新しくなっているものの、マシン上部のドライバーネームが書かれている部分の隣には、今でも山田エンジニアのステッカーが貼られている。それが山田エンジニアに対する想いはまだ消えていないという何よりの証だ。

#6 WAKO'S 4CR LC500

#6 WAKO'S 4CR LC500

Photo by: Masahide Kamio

「クルマに健二さんのステッカーを貼っているんですが、実はレース前にそれが外れかけていたんです。だから『ちゃんとつけておけよ!』って(メカニックに)言ってスタートしました」

 そう語ったのは脇阪監督。スーパーGTのドライバーを引退し2016年に監督に就任して以降、山田エンジニアのマシン作りには大きな信頼を寄せていた。それだけに脇阪監督にとっても、当時の訃報は辛いものだった。

 しかし、それ以降もチームをひとつにするべく邁進してきたのが脇阪監督だ。

「健二さんもそうですし、その間(2018年第2戦以降)を協力してくださった(田中)耕太郎さんを含め、本当に協力してくれた皆んなに感謝したいなと思います」

「今は阿部(和也エンジニア)が頑張ってくれていますけど、(マシンには)健二さんの感覚が残っていますし、健二さんの息が多くかかったクルマですからね。本当に感謝です」

 また、山田エンジニアのもとで何年もスーパーGTを戦ってきた大嶋もレース後は笑顔を見せるとともに、何かを“乗り越えた”ような表情をしていたのが印象的だった。

「本当に、やっと勝てたという感じで……嬉しいですね。健二さんが突然いなくなっちゃってから大変でしたけど、今年は阿部さんが入ってきてくれて、彼も健二さんがやっていた流れを分かっていました。本当に(健二さんのやり方も良く知っている)阿部さんがきてくれて助かっています」

 今年からチームルマンに加入した阿部和也エンジニアも、実はホンダ系チームへ移る前に山田エンジニアと一緒に組んだ時期があったという。

「健二さんとは最後の1年だけ一緒に仕事しました。その時僕はメカニックではなくてデータエンジニアみたいなことをしていて、健二さんがトラックエンジニアをしていました。でもあの時の僕は(エンジニアとして)まだまだでしたけどね」

 わずか1年という短い時間だったが、その中でも山田エンジニアから教わったことがあったとのこと。そして、その“技”は今でも役立っているという。

「唯一、健二さんから教わったことで今でもやっているのは、アライメントのやり方ですね」

「健二さんが教えてくれたアライメントのやり方はすごく理に適っているので、それはTEAM MUGENにいた時もずっと使っています。やっぱり、いいものは盗むに限ります」

悲しみを乗り越え、前進を始めたチームルマン

阿部和也エンジニア(#6 WAKO'S 4CR LC500)

阿部和也エンジニア(#6 WAKO'S 4CR LC500)

Photo by: Masahide Kamio

 6号車がトップでチェッカーを受けるシーンを見て、筆者も「きっと山田エンジニアも喜んでいるはず……」と頭の中で思いを巡らせた。だが、チームは前に進み始めているということをレース後に阿部エンジニアを取材して改めて感じた。

 阿部エンジニアは、ホンダ系チームから移籍したとあって開幕前から注目を集めていたが、自ら“山田エンジニアの後任”ではなく“チームルマンの優勝請負人”にならなければならないと、強い覚悟を持って今シーズンに臨んでいた。

「僕は(チームを)変えるために色々言っています。言っているからには成績を出さないと周りからは反感しかないです。でも、これだけ言って成績を出せば、周りは何も言えなくなると思います」

「実はそれって、けっこう綱渡りなことなんです。正直しばらく勝てていないという状況の中で、結果を出すために(みんなを)叩き直さなきゃいけない部分もあります」

「でも、ただ叩き直すだけだと周りはついてこなくて(みんなが)グルになって反抗してきますが、言って結果を出すと周りも従わざるを得なくなります。それをやるには個人的には成績を出すしかないという事は僕も分かっていましたし、TEAM MUGENにいた時もそうしていました」

 チーム加入当初からマシンセッティングや戦略を考えることだけでなく、メカニックたちの意識改革も行ってきた阿部エンジニア。彼にとっても、今回は大勝負の1戦だったのだ。

「そういう意味では今年“結果を出さなきゃいけない”という立場で呼ばれてホンダから移籍してきたわけですし、ここに来た時からGTでは『WAKO’Sさんに勝たせてくれ、優勝をプレゼントしてくれ』と言われ続けていました」

「その中で今回のタイはすごく狙っていたので……今回の優勝は本当にホッとしました。WAKO’Sさんのためにそうだし、会社のためにもそうだし、最終的には僕のためにもですね」

 昨年チームを襲った大きな悲しみを乗り越え、脇阪監督と阿部エンジニアを軸とした新たな体制が機能しつつあるチームルマン。次回の第5戦富士では70kgのウエイトハンデを背負うため、ライバルと比べると厳しい戦いも予想されている。だが、それらも乗り越えてしまいそうな勢いと底力が今のチームルマンには感じられるのも確かだ。

 今回掴んだ“優勝”という大きな結果が、きっと今後の彼らにとって確固たる自信になっていくのは間違いないだろう。

#6 WAKO'S 4CR LC500(大嶋和也、山下健太、脇阪寿一監督)

#6 WAKO'S 4CR LC500(大嶋和也、山下健太、脇阪寿一監督)

Photo by: Masahide Kamio

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この記事について

シリーズ スーパーGT
イベント 第4戦:タイ
ドライバー 大嶋 和也 , 山下 健太
チーム Team LeMans
執筆者 Tomohiro Yoshita