デロイトと組んだトムスは、一体何を目指しているのか?

デロイト トーマツとの提携を発表したトムス。トムスはこの提携により、どんなことを実現しようとしているのか? 同社の谷本勲社長に話を訊いた。

デロイトと組んだトムスは、一体何を目指しているのか?

 トムスは3月30日、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社(以下デロイト社)と、「モビリティ領域における包括的な協業に関する契約」を締結したことを発表した。これに伴い、父にジャン・アレジ、母に後藤久美子を持つジュリアーノ・アレジがドライブするスーパーフォーミュラ・ライツに参戦するトムスの36号車は、デロイト社のロゴが入れられた特別カラーリングを纏うことになる。

 デロイト社は、国内最大級のビジネスプロフェッショナルグループであるデロイト トーマツ グループの一企業で、ファイナンシャルアドバイザリーサービスを担い、M&Aやクライシスマネジメントを主要な事業領域とする。そんなデロイト社と組むことで、トムスはどうレースに役立てていこうとしているのだろうか?

 会見の中で両者は、「グローバル人材の育成」と「レースデータ分析」を主に行なっていくと説明したが、具体的にはどんなことが目指されているのだろうか?

「3年前にトムスに加わった際、データをもっと活用できるのではないかと思ったんです」

 トムスの谷本勲社長は、デロイト社との協業でどんなことを目指すのかという問いにそう答えた。

「今は集めているデータのうち、10%も使えていないと思います。それは単純に、使える領域が限られているし、それを深堀りできていないと思います。例えばタイヤは典型的で、タイヤと路面と気象のデータ……それぞれを組み合わせたモノは分析できていないんです」

「データを取るということはできると思います。しかし、その後でそれをどう料理するかという問題だと思います」

「そういうデータを活用すれば、レースの展開予測などができないかと、この3年間思っていましたし、いくつかの会社さんにアプローチさせていただいてきました。そんな中でデロイトさんと最初にお会いした時に『レースでは、もっとデータを活用できると思うのに、活用できていない』というお話をしたら、『それは絶対にできますよ』と言っていただいた。そこから盛り上がり、話がどんどん進んでいきました」

 デロイト社は前述の業務以外にも、スポーツビジネスの支援を行なっている。その一環として様々なデータを分析し、パフォーマンスの向上に繋げることをサポートしているのだ。例えばF1チームのマクラーレンも、デロイトのデータ分析ノウハウを活用しているという。

 これについてデロイト社の前田善宏氏は次のように説明する。

「我々には”デロイト アナリティクス”という分析専門の部門がありまして、そのメンバーが今回の業務を一緒にやっていこうということになっています。モータースポーツのみならず、他のスポーツでも知見がありますので、レースへのフィードバック、そしてレースからのフィードバックというところもやっていきたいです」

「マクラーレンとは2016年から提携していて、これは海外のチームが担当しています。直接そのチームと連携するわけではありませんが、そこで得たノウハウ、他のスポーツで得たノウハウをトムスさんとの分析に持ち込み、今まで見ることができていなかった新しい世界観を作り上げていくことを共にやらせていただきたいと思っています」

 またトムスの谷本社長は次のように続ける。

「デロイト社さんは、複合データを解析するのを得意としています。しかも彼らはレースのことだけをやっているわけではないので、我々とは違う視点も持ち合わせています。我々の思いもよらない提案をしてくださることもある。そういうところも良いと思います」

 このデータ分析を活かしてレースで勝利する可能性を高め、さらにドライバー育成にも繋げていきたいと谷本社長は語る。

「データをどう料理するか、そういう議論をし始めています。これには弊社のレーススタッフも入れているのですが、実現できるかどうかは置いておいて、”レース前にこういうデータが分かったらいいのに”というアイデアを出しています。それが実現できれば、レースに勝てる可能性が上がっていく。そういう部分は結構たくさんあると思っています」

「またテスト走行中の会話などを聞いていると、例えば『〇〇はタイヤの使い方がうまいね』というようなことを言っています。でも、タイヤの使い方が上手い人と上手くない人の違いが何なのか、それを具体的に説明できる人がいないんです」

「これは複合データだと思います。例えばそれに関係しそうなデータが10種類あったとしたならば、それを分析にかけることで、なぜ”タイヤの使い方が上手い”のかを説明できると思うんです。逆に、上手くないドライバーについては、その理由がわかる。そうなれば『この部分がタイヤを痛めている理由だから、こういう運転を習得しなきゃいけない』と具体的に改善することができると思います」

 谷本社長は、データ分析をレースの”勝ち負け”に活かすだけではなく、自動車業界全体やその他の業界に、さらにフィードバックできるようにしていきたいと説明する。

「こういう”運転の仕方”のデータ分析は、レースだけではなく一般公道でも同じ。つまり運転講習などに、レースで培ったノウハウを転用できるのではないかと思っています」

「我々はレースの結果に繋げるということで、データ分析の有用性を証明していきたい。それと同時に、他にも転用できますよねということを言っていきたいです。モータースポーツは特定の人たちの趣味だと思われている部分もあるし、エンジンを全開で回すという意味では、今の世の中の風潮に反しているというイメージもあると思います。でもそれは嫌ですし、本来モータースポーツはそういうモノではなかったはずです。モータースポーツは、メーカーの研究開発の一環であり、そこで開発した技術を市販車に転用する……だから予算をかけても有用だというモノだったはずです。我々は違う形でもいいので、レースで培ったノウハウを他の分野に転用することで、世の中に貢献することが絶対にできると思っています。それをやりたいんです」

「今回のことはチームにとっては大きな一歩ですが、モータースポーツ業界全体にとっても、新たな潮流になるようにしていきたいと思います」

 

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この記事について

シリーズ スーパーGT , スーパーフォーミュラ , SFライツ
チーム TOM'S
執筆者 田中 健一