VivaC土屋監督「鈴鹿のクラッシュにより、分かったことが多かった」

#25 VivaC 86 MCの土屋武士監督は、惜しくも連覇を逃したものの、中身の濃いシーズンだったと振り返った。

 今年も最終戦までチャンピオン争いが繰り広げられたスーパーGTのGT300クラス。惜しくも2年連続チャンピオンはならなかったものの、シーズンを通して上位争いをする活躍をみせた#25 VivaC 86 MCの土屋武士監督は、チャンピオンを獲得した昨年よりも中身の濃いシーズンを過ごすことができたと語った。

 ディフェンディングチャンピオンとして迎えた2017年はドライバーを務めていた土屋武士が監督に就任し、松井孝允/山下健太のコンビで参戦。第3戦オートポリスでポール・トゥ・ウィンを飾ると、第4戦SUGO、第6戦鈴鹿でもポールポジションを獲得。毎レース着実にポイントを積み重ねていき、2年連続チャンピオンも確実かと思われていた。

 しかし、第6戦鈴鹿のレース終盤にシーズンの流れが変わることになってしまう。#65 LEON CVSTOS AMGを追いかけ2位を走行していた#25 VivaC 86 MCだったが、チェッカーまで残り数周というところで、逆バンクでスピン。タイヤバリアにヒットしマシンが横転してしまったのだ。

 幸い、ドライブしていた松井は無事だったが、マシンは大破。続く第7戦タイでの出走に向けギリギリまで修復作業が進められ、なんとかレースには間に合ったが、今までのようなアグレッシブな速さはなく決勝15位とノーポイントで終わり、チャンピオン争いからの脱落を余儀なくされた。

 1レースで全ての流れが変わってしまったようなシーズン後半。この時の状況について振り返った土屋監督は、逆に鈴鹿でのクラッシュで学んだことの方が多かったと前向きに捉えていた。

「あの鈴鹿でひっくり返ったからこそ、知ることができたことの方が多かったです。あの時は(山下)健太が、凄い走りをしてくれてウェイト関係なくポールポジションが取れたのはすごい良かったです。(松井)孝允も、少し自分のコントロールができなかったからひっくり返ったのだと思います。そこが彼にとっても、すごく良いターニングポイントになって、やっぱり自分に足りていない大事なものというのもハッキリと気がつくことができました」

「結果的に、お金はかかりましたがすごく良い(成長の)きっかけになったし、この短期間でタイに持っていくために、クルマを元に戻さなきゃいけない。それもメカニックにとっては良い経験になったと思います。イチからクルマを作るのと同じことですからね。その中でも発見したこともたくさんありました」

「チームオーナーとして、こういったイレギュラーへの対処も、長くレースをやっていれば、必ず起こりうる事です。そうなった時に自分をどうコントロールするのか、何のためにやるのかという部分も含めて、自分の中で再確認することができました」

 また鈴鹿での圧倒的な速さに比べ、タイではポイント圏内に入るのが難しいほどのパフォーマンスだったことについて、土屋監督は、靴やコピー用紙などを例えにして、このように説明してくれた。

「例えば同じ(モデルの)靴でも、長年履き慣れたものと新品とでは履き心地が違うじゃないですか。だから、なんで鈴鹿であんなに速かったのかと考えると、馴染んだ靴を履いていたからなんです」

「あの鈴鹿での速さは、常に僕自身がクルマを考えて、メカニックと一緒にクルマを組み上げてきたから。一緒にパーツのひずみをみて各部を細かく計測して、そういうことをコツコツやって来たからだと思います。だからクラッシュをして、新しく組み直したからといって(パフォーマンスが)同じになるということは絶対にありえないんです。そのアルミを何年使っているのか? その鉄を何レース使っているのか? それらも含めて全て“セットアップ”なんですよ」

「コピー用紙1枚は薄っぺらいけど、積み重ねていくと分厚くなるのと同じように、僕たちは常に0.001秒を削ることを積み重ねてきただけで、あのスピードを実現していました。周りからは速い速いと言われていますが、特別なことは一切なくそれをずっとしつこくやっているだけなんですよね。今回は鈴鹿でのクラッシュで、(積み重ねてきたものが)タイでリセットされて、もてぎで(積み重ねる重要性を)確認することができましたね。やっぱりサボれないんだな……と感じました」

 結果的にチャンピオンは獲得できなかったが、土屋監督は今季チームのテーマに掲げてきた“昨日の自分に負けない”という点では、得られるもの、経験できたことは非常に多く、自身にとっても、ドライバーやメカニックにとっても有意義な1年だったと語った。

「こういったことを知れたことが僕にとっては大きな財産でしたし、孝允にとっても良い経験になって、もてぎでは自分をコントロールして素晴らしい走りをしてくれました。彼の良いところは修正能力。さらに一回り大きくなってくれたと思います。あの鈴鹿でのクラッシュというのは、自分にとってはポジティブなことでしかないですね。……お財布以外では(苦笑)」

 気になる2018年体制については、まだ詳細は話せないとしたものの、マシンは変わらず86 MCで参戦予定とのこと。来年も引き続き、若手の成長のために活動を続け、努力していきたいと意気込みを語った。

「昨年とは比べ物にならないくらい、中身が濃い1年でした。今年の僕たちのテーマは“昨日の自分に負けない”。正直もう同じことはやりたくないという気持ちだけど、最後までやり切れたというのは、これらの僕たちにとってはものすごい財産になると思います。ただ、この経験ができるのは滅多にないので、これからもプライベーターとしてできる限り続けていきたいと思いますし、さらに努力しなきゃいけないですね」

取材・執筆/吉田知弘

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この記事について
シリーズ スーパーGT
記事タイプ 速報ニュース