インタビュー

小山美姫、初めての海外挑戦で痛感した『自分に足りないもの』

今シーズン、日本人ドライバーとしてただひとりWシリーズに挑戦した小山美姫は、自分に足りないものがわかった1年だったと語った。

Miki Koyama

 今年からヨーロッパで始まった女性ドライバーだけのフォーミュラカーカテゴリー『Wシリーズ』。日本人ドライバーとしてただひとり参戦した小山美姫にとって、この挑戦は自分自身に足りないものを明確にさせるものとなった。

 今季の参戦ドライバーを決める『セレクション』では好結果を出していた小山。本戦での活躍も期待されたが、最高位は第3戦ミサノでの4位。表彰台は一度も獲得できず、シリーズランキングは7位だった。

 開幕前は“チャンピオンを獲る”と意気込んでいたが、実際にシーズンが始まると慣れないヨーロッパの地で、走行時間も限られる中でのレースウィークに悪戦苦闘する日々が続いたという。

「全てが初めての経験というところがあって、予測ができなかったし、予測できるデータみたいなものもなかったです。だから、頑張って予測をしても全部外れるという状況が続きました。(今までの経験を)活かすというよりも、学ぶことしかなかったです」

「何かがズレ始めると、そのちょっとした“ズレ”がどんどん増えていって、最終的に何かを失ったり、何かが増えたりする……悪循環を経験した感じでした」

「そういう噛み合わせはレースでも重要で、アタックしたタイミングとかで赤旗が出ちゃったことが多かったですが、それも事前の段階からズレ始めていたものが影響することも多々ありました」

「セレクションで一番が続いていたので、自分の中にあったもの(目標)はチャンピオンしかなかったです。でも事前に色々調べていたので、誰がどこで速くて、誰がどこを得意としているのか……あと(週末に)走れる時間が限られていますから、どう考えても今まで走っている(そのコースで走行経験がある)人の方が有利ではあるので、自分が不利になることは分かっていました。それも全て理解した上で、チャンピオンを目指しました」

「でも、自分が思い描いていたチャンピオンというものに対して、(細かいところを)噛み合わせていくことができなかったです」

 そう初めてのWシリーズ挑戦を振り返った小山。彼女にとっては初めてとなった本格的なヨーロッパ遠征で、初めてのコースに初めてのスタッフ、さらに慣れない英語でのコミュニケーションなどが重なり、今まで日本では気にならなかった“メンタル面”で壁にぶつかることが多かったようだ。

「いかにメンタル面が大事なのかということも分かりました。日本と違って、多少なりとも不安があったら、それが疲れに繋がっていきます。特に走っているときは『自分が一番なんだ!』という(強い)気持ちでいないと負けてしまいます。どこか不安があったら、そういった強さが出てきません。疲れだったり精神的に不安定だったりした部分が、“不安”を作る要素になっていたのだと改めて思いました」

 小山は特にシーズン前半のメンタルコントロールで、かなり苦労をしたとのこと。実際にそれがレース結果にも影響していたという。

「正直、今年は結構しんどいときもありました。その中で私は『嫌だな』と思っていても『嫌じゃない、次行ける』と前向きに考えるという思考変換を小さい頃からずっとやってきましたが、逆に自分の素直な気持ちに気づくことができませんでした」

「そうしたら、急に気が乗らなくなった時がありました。それが(第2戦)ゾルダーの時でした。今までは勝つために好奇心がありすぎて、色んなことに対して前向きになっていました。それが“やりたいな”じゃなくて、“やらなければいけない”に変わって、自分は今の瞬間を楽しんでいないなということに気づきました。自分の本心としては、すごく嫌になっていたんだと思います」

「でも、(第3戦)ミサノに行く前にいろんな人と話す機会があって、そこでスッキリした気持ちになることができました。そうしたら良い結果を出せました」

「万全な状態で臨めていたとは言えなかったシーズンでした。例えば、本来なら早めに現地入りして時差に備えた方が良かったのかもしれないけど、(レースウィーク開始の)寸前に入ることが多かったです。さらにフライトの関係で移動時間が24時間になったりすると、ほんの些細なことでも、それが重なっていくことで憂鬱になったりしました」

「こうして経験したことを活かして、来年はレースを戦う上で100%、120%の力を出せる環境づくりとかメンタルコントロールをしていきたいなと思います」

 こうして、自身としても満足のいく結果を残すことができなかった小山だが、来季は無条件で参戦できる上位12人の中に入ることができた。

 来季に向けて小山は“勝つことができなかった”今季の自分をしっかりと受け止めた上で、経験を活かして必ず勝利を手にすると力強く語った。

「もちろん満足できる結果ではなかったですし、足りなかったものがあったと思います。だからこの順位なんだと思います。特に後半2戦はポイントを獲っていないわけですからね。それでもこのポジションで終われたのは、シーズン序盤に予選結果が悪くても決勝で上がってくることができたという“粘り”があったからなのだと思います」

「正直、1位以外は何の意味もないのですが、その中でも上位12人に入れたことで来シーズンの参戦権を獲得でき、繋げることができました」

「そういう意味では価値はあったし、来年が本当に勝負だと思っています。自分の中では今年が勝負と思っていましたけど、(いざ行ってみたら)勝負できるものが何もなかった。初めてでしたし、ここで勝つための速さも足りなかったです」

「だからこそ、この経験を生かして次は(目標を)果たしたいですね。2年目は勝てなきゃダメだと思います。あと足りないところが分かったので、そこをしっかり対策して、来年はチャンピオンを獲りたいです」

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