インタビュー:マーク・ウェーバー③「オーストラリア人は欧州との文化も違いを学ばなきゃいけない。日本人もそうだ」

今季限りでレーシングドライバーを引退するマーク・ウェーバーに訊く……

 今季限りでレーシングドライバーを引退することを発表した、マーク・ウェーバー。彼は2013年までF1で活躍し、その翌年からはWEC(世界耐久選手権)に活動の場を移して輝いてきた。

 そのウェーバーが、引退後の生活、そしてポルシェについて語ってくれた。その彼のロングインタビューを連載形式でお届け。今回はその3回目、最終回である。

ーーポルシェ・ファミリーには残るんですね?
「アンバサダーとか特別代表という肩書きは、市販車もレースカーも直接開発の手助けをするわけではないけど、サーキットにもたまには来ると思う。市販車では新しいモデルが出たときに、発表会を手伝ったりする。我々は大きなサッカーチームにいるようなものだから。僕は色々経験があるから仕事を手伝う。レースではドライバーについて相性が良いとか……レースに勝てるように手助けをする。だって、僕はポルシェのファンだから。ポルシェに来る前から何台もポルシェをもっている。だから、ポルシェの仕事をするのは簡単なことだ」

ーーポルシェの仕事はあなたにとって誇りですね。
「レースの契約を交わす前にポルシェCEO(当時)のマティアス・ミュラーに会いに行ったときに、彼は長期的な計画を考えており、僕をポルシェ・ファミリーのアンバサダーに迎えたいと言ってくれた。もちろんレースもそれに関係していたけれど、彼らはこの役割を以前から考えてくれていたのだと思う。僕にも主義やモラルはあるし、簡単に決められたことではなかったけれど、彼らはこの計画を纏めるという決断をして今まで長いこと一緒に仕事をしてきた」

ーー具体的な仕事の内容は?

Merk Webber met de Porsche 919 Hybrid LMP1 in Londen
 

「ブランドのエモーショナルな一面を表すことでもある。市販車も素晴らしいから、僕がそれを運転する仕事とかテストドライブをすると聞いて、誰もが羨ましいと思っているに違いない。マーケティングの計画も面白い。この前LMP1をロンドンに持って行って早朝に市内を走らせた。すごいことだ。今のポルシェはそういうことができる。ただ、ドライバーの視点は低いし、まだ薄暗かったので細い排水路が見えにくくて難しかった。あんなに長く走るとも思わなかったし……でも、すごい経験だった」 

ーーポルシェから少し離れて、あなた自身のことを聞きたい。レーシングドライバーとしてのキャリアの最後をスポーツカーで終えるわけだが、満足していますか?
「僕の父親はシドニーまで3時間ヒッチハイクして、タスマンシリーズに来ていたジム・クラークを見に行っていた。クラークは言うまでもない最高のドライバーだ。僕はF1と共に成長してきた。父親譲りだ。10歳の時に父が、最高のドライバーはシングルシーターに乗っていると言ったんだ。最高のドライバーはフォーミュラカーに乗っていると。お前も優れたレーシングドライバーになりたかったらシングルシーターに乗らなければならないと父親に擦り込まれた。だから、上り詰めるまで、それ以外のカテゴリーはやりたいとも思わなかった。今でも鈴鹿やシルバーストンでエイドリアン・ニューエイのクルマを運転した時の記憶が頭から離れない。だから、WECの後でパリダカやバサーストに出るつもりは全くない。スポーツカーを1500kmも運転するなんてことも、ちょっと残念なことだったんだ」

ーーそれにしてもオーストラリア、ニュージーランドからあなたも含めて優秀なドライバーが多く出ている。何か特別な理由があるのでしょうか?

Podium: Daniel Ricciardo, Red Bull Racing with Mark Webber
 

「ハイレベルのレーシングで戦ったオーストラリア人ドライバーは多くない。ジャック・ブラバムがオーストラリア人ドライバーのパイオニアだった。ブルース・マクラーレンはニュージーランド出身だけど、同じようにパイオニアだ。この歴史は強力なものだ。特にレースやラリーにいるプロのニュージーランド人ドライバーを見ると、国の規模や場所を考えると凄いことだと思う。WECのGTカテゴリーにもオーストラリア人は多いし、なんと言ってもダニエル・リカルドはF1で好調で、こいつも凄いことだと思う」

ーー世界で活躍するにはヨーロッパに行かなければならなかった?
「ヨーロッパに行くには色々と犠牲にしたに違いないと言う人がいるが、ヨーロッパでレースをするチャンスを手にしたことを犠牲と考えたことはない。上手くいかなければ父親の作業場で働けば良いと思っていた。ダメもとだ。そこでまず6カ月間ヨーロッパで挑戦したが、22年後の今もここにいる。どうにかなった。大きな責任を果たせた。ストップウォッチ(レースのタイム)はこの試練のほんの一部に過ぎない。オーストラリアやニュージーランド人ドライバーは、ヨーロッパではサーキット以外の文化的な違いを学ばなければならない。日本人も同じだと想う」

ーーそのためには何が必要だと思いますか?
「良き伴侶が必要だ。僕は幸運にもアンがいたし、ブレンドンにはサラがいる。大勢のドライバーや、大勢のパートナーの助けを借りて苦しい時期を乗り越えてきた。僕にとればそれも興味深いことだった」

ーーオーストラリアやニュージーランド人の若いドライバーと一緒に仕事をしたいと思いますかか?
「あまりしたくない。ジェネレーションギャップがある。アドバイスはする。アドバイスをくれと言われれば一生懸命するけれど、サーキットに行ってあれやってこれやってというのはしたくない。僕も勢いがなくなっているから、また以前の仕事に戻るのはね……」

ーー最後にこのWECをどう評価しますか?
「テレビ放映はまだ改善の余地がある。間違いない。もっと大勢の人に見てもらえるようにすべきだ。僕はLMP2やGTをちゃんと見ているわけではないが、LMP1と同じように興味深いはずだ」

「ル・マンがカレンダーの中で最大のイベントだが、ル・マン以外の8レースをどうするかも課題だ。もっと盛り上げて、ファンを増やす必要がある。ずっと見続けるには難しいレースの距離(時間)だけど、(ノバク)ジョコビッチや(ロジャー)フェデラーの(テニスの)試合を朝の4時、5時に観ようという人もいるのだから、観る人は観るだろう。WECは特別なレースだから見るんだ、とみんなが思わなくてはいけない」

「レースが駄目だというわけではなく、何を見れば面白いかということを伝えなくては。GTだって面白い。露出を増やしてドライバーとは何かを説明するとか。ル・マンではそれができる。それはみんながル・マンでやっていることは良いと思っているからだ。ル・マン以外ではWECはそれほど愛されていない。問題はそこだ」

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この記事について
シリーズ WEC
記事タイプ インタビュー