最終戦で待望の優勝「歯車が噛み合い始めたのは富士から」とトヨタ村田

バーレーン6時間レース待望の5勝目を飾ったトヨタ。そのチーム代表である村田久武はレースを総括した。

 TOYOTA GAZOO Racingは、11月18日に行われた2017年世界耐久選手権(WEC)最終戦バーレーン6時間で待望の優勝を飾った。このレースでの勝利は、チームにとってもトヨタ自動車というメーカーにとっても、なんとしても欲しいものだった。それは、今年限りでWEC活動(LPM1-Hクラス)を休止する宿敵ポルシェに対する最高の返礼と同時に、来年以降の参戦を意味あるものにするための最低限の条件だった。

 今年7月からTMG社長兼チーム代表に就いた村田久武は、そのことを次のように説明してくれた。

「我々が来年のWEC活動を続けるかどうかは本社次第ですが、もし続けるとなるとLMP1クラスでハイブリッド車はトヨタだけです。他のLMP1クラスは普通のエンジン車ですから、普通に考えると我々が速いわけです。しかし、我々だけが速くてもレースとしては面白くないし、成立しないでしょう。そこで、FIA、ACO、WECがハイブリッド車とノン・ハイブリッド車の性能を詰めるレギュレーション作りをしています。我々もそれには賛成です」

「でも、もし我々が勝ち続けることがあれば、『トヨタはポルシェがいなくなったから勝てている。ライバルがいないからWECに残った』と言われかねません。その疑惑を払拭するために、ポルシェと戦っても十分に勝てる力を持っていることを示したかったのです。ポルシェがいなくなったから残るのではなく、ポルシェがいても残っていたと思います。我々はハイブリッドという技術を磨いているのですから」

 この強い気持ちが奏功してバーレーンで勝利をあげることが出来た。その結果、今シーズンの勝利数はポルシェの4勝を抜いて5勝。特に終盤3戦(富士、上海、バーレーン)の3連勝はチームが最高の力を発揮出来た結果と言える。それはチームがひとつに纏まってきた証であり、村田がTMGに行ってから始めた改革が実を結び始めた結果と言える。

「チームも凄く良くなって来ました。以前は#7号車と#8号車の間で様々なことが共有出来ていませんでした。今はそれを改め、共に速さを追求する姿勢が出来てきました。チームが纏まってきた証だと思います。レース中のリスクマネージメントもしっかりと働いています。例えばブエミが急に速いタイムを出したら、それをたしなめるようなことも出来るようになってきました。少しずつ出来ることが増えてきていると思います」 

 だが、もちろんまだ課題は残っている。例えばLMP2やGTカーなどの遅いクルマを抜く時に多々接触がある。

「GTカーは我々のクルマが抜きに行ったとき、例えば我々が横にいるのが見えなかったりすることが多いと思います。GTカーにもリアビューカメラは付いていますが、コーナリング中などはとても見ている暇はありません。だから、抜きに行く時には前を走るクルマに我々のクルマを認識してもらうことを徹底させなければいけない。抜く方も無理をしてコーナーでGTカーのインに飛び込むようなことは自粛した方がいいです。小さな接触でもクルマがダメージを被ると修復に時間がかかり、ル・マンでは絶対に勝てません。仕方ないでは済まされないので、みんなで対処の仕方を考えなくてはいけない」 

 夜間の追い抜きは特に気を遣わなければならない。

「うちは夜間はずっとハイビームにしています。ハイビームは光の変化がないから、パッシングサインは一応出来るんですが、それが分かり難い。ライトの色が違うので一応判別出来ますが、右から抜いてくるのか左から抜くのかが分かり難いです。最近はGTカーにも抜いてくる側のランプが付くようなリアビューカメラが装着されてはいますが、GTカーとLPM1-Hではスピード差があり過ぎてあっという間に追いついてしまう。だから、追い抜きに関しても改善の余地があるんじゃないかとレース中ずっと考えていました。テレビ映像があるので、それをみて分析していかないといけません」

 バーレーンの話に特化すると、スタートでは2台のTS050 HYBRIDが違う種類のコンパウンドのタイヤを採用した。#7号車がソフト、#8号車がミディアム。レース開始時は路面温度が高く、ソフトにはギリギリのところだった。結果的にミディアムに味方したということになる。しかし、日没が来ると温度は一気に下がると、タイヤの作動温度を確保出来なくて滑り始める。遅いクルマに引っかかったとき、セイフティカーが出動して走行速度が低下したときにも同じ症状が現れる。少しでもタイヤの温度を上げるために、トラクション・コントロールなどを使って工夫していたが、レースが半分を消化した時点で両車ソフトに履き替えた。

 バーレーンのレースがトヨタにとって上手くいったのは、ル・マン、ニュルブルクリンクでポルシェに追いつけなかった理由を探り、それに対応したからだ。その成果が生きて、シーズン後半の連勝に繋がった。村田が教えてくれた。

「我々のハイダウンフォース・スペックがポルシェのハイダウンフォース仕様と比べてどの位置にあるかというのがハッキリ分かったのは、ル・マンが終わった次のニュルブルクリンクです。そこでダウンフォースが足りないということがハッキリしたので、私がTMGに行った7月という時期を重なって、それを入れることと、2台のクルマの戦闘力を揃える工夫をしました。その歯車が噛み合い始めたのは富士からなんです。もっと早くからやっていたらと言われるとその通りなんですが、それはまあ結果論なんで」

 最後に村田はこう結んだ。

「5勝できて良かったです。レースが終わった後、表彰台から帰ってきたら、ドクター・ポルシェがピットに来てお祝いを言ってくれました。僕もそれが出来るような大人にならないといけませんね」

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この記事について
シリーズ WEC
記事タイプ 速報ニュース