トヨタTS050に搭乗しLMP1マシン初体験。”ルーキー”アロンソの評価
F1参戦中のフェルナンド・アロンソが、トヨタTS050 HYBRIDを走らせ、LMP1を初経験。その評価をトヨタ関係者に訊いた。

バーレーン6時間レースの決勝が行われた翌日の日曜日(11月19日)、同じコースを使ってWEC(世界耐久選手権)のルーキーテストが行われた。参加したのはLPM1-Hクラス、LMP2クラス、GTクラス合計14台。その中で最も注目を浴びたのは、やはりTOYOTA GAZOO Racingでテストを受けたフェルナンド・アロンソだ。
アロンソの活躍の舞台は言わずと知れたF1グランプリ。しかし、2013年のスペインGP以降優勝がない。つまり現在の彼は非常に勝利に飢えている。モナコGPを捨ててインディ500に出場したのも優勝の可能性があったからだ。
その彼が今度はWECのルーキーテストに参加した。乗ったのはTOYOTA GAZOO Racingの#8号車TS050 HYBRID。トヨタを選んだ理由は来年のル・マン24時間レースへの参加、優勝という筋書きを完遂するためだ。
アロンソのTOYOTA GAZOO Racingでのテストが実を結んだのは、彼のマネージャーからTMG(Toyota Motorsport GmbH)へテストドライブの打診があったことに始まる。TOYOTA GAZOO Racingとしてはテストを断る理由はなく、今回のルーキーテスト参加になった。F1グランプリでチャンピオンに輝いている彼でも、WECではルーキー。インディ挑戦時にもかれは同様のテストを受けており、当然合格している。
今回のTOYOTA GAZOO Racingでのテストに向けては、マクラーレンからひと言あったというが、問題にはならなかったようだ。推察するに、今年のF1グランプリはまだシーズンが終了しておらず、ホンダとの契約が残っているチーム(マクラーレン)のドライバーがトヨタに乗るという行為に対して何らかのアクションがあったのかも知れない。
という過程を経てアロンソのTOYOTA GAZOO Racingでのテストが実現したわけだが、今日のテストに至る前に彼はTMGを訪れてシート合わせとシミュレーターによるトレーニングを行って来た。初めてシミュレーターを試したときには、ハイブリッド・システムのコントロールにてこずったという。多くのコントロール・ボタンが並ぶステアリングに、「複雑で分からない!」と茶目っ気を出したとも言われる。
しかし、そこはさすがにF1チャンピオン。バーレーンの午前中のテストでは連続して1分44秒台を記録、チーム関係者を感心させた。チーム代表の村田久武は、アロンソを高評価する。
「走行中は『ダウンフォースがない』とか『タイヤがグリップしない』というコメントをしていましたが、それはよく分かります。ダウンフォースの塊のようなF1から乗り換えたんですから、ダウンフォース不足を感じるのは当たり前です。タイヤもF1と比べるとグリップはない。でも、途中からミディアムの新品を履いていましたよ」
村田がアロンソの力量を高く評価するのは、ハイブリッド、4輪駆動、回生ブレーキといったシステムを満載した初経験のクルマを、たちまち乗りこなしたからだ。
「ブレーキのフィーリングだってF1とはまったく異なると思います。走り始めたときはそのことを言っていたみたいですが、すぐに言わなくなりました。あっという間に会得したんでしょう。やっぱりF1チャンピオンの実力は凄いですね」
TMGのテクニカルデザイナーであるパスカル・バセロンも、次のように評価した。
「今日は2人のルーキーのテストをしました。2人とも素晴らしい仕事をしてくれました。スピンもコースオフもなく、クルマはまったくダメージなしでテストを終えました」
「トマ・ローランには50周走らせる目標を立て、31周を走った。フェルナンド・アロンソは午前と午後合わせて100周以上走破(最終的には113周)、F1レースの距離より多く走ってくれました。午後にはタイヤテストをしてもらうほど余裕がありました。ずっと満タンで走ったのでタイムは気にしていませんが、午後にミディアムタイヤで出した1分43秒013がベストです」
アロンソがドライブした#8号車は午前中にセバスチャン・ブエミが走らせ、1分42秒183のタイムを記録している。しかし、初めてのTS050 HYBRIDで1秒以内のタイム差はさすが。ブエミもアロンソの実力に舌を巻いていたという。
ところで、現時点ではアロンソのテストは今回限りだ。
「チャンスがあればまた彼に走ってもらいたいと思います」と、バセロン。来年のル・マン出場に向けて事態が進展することを期待する。
当のフェルナンド・アロンソはテスト後に次のようにコメントした。
「素晴らしい日だった。LMP1を走らせることはレーシングドライバーとしては最高の経験だ。テストでは問題なくコンスタントなタイムを刻むことが出来た。僕は長い間こういうクルマを運転してみたかった。今日はそれが出来て最高の気分だ」
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この記事について
シリーズ | WEC |
ドライバー | フェルナンド アロンソ |
チーム | マクラーレン , Toyota Gazoo Racing |
執筆者 | 赤井邦彦 |