
終盤優勝を争っていたポルシェは、最後のプットストップでタイヤ交換したことでタイムを失い、勝機を逃した。










10月16日に富士スピードウェイで行われた2016年FIA世界耐久選手権(WEC)第7戦富士6時間レース決勝。トヨタの6号車が2014年バーレーンWEC以来の勝利を挙げ、大いに盛り上がった。地元日本のレースを制したトヨタ。最後にドライブを担当してチェッカーを受けたのが小林可夢偉ということもあって、日本色の強いレースになった。
しかし、疑問が残る場面もあった。レースはアウディ、ポルシェ、トヨタの三つ巴の激戦になり、最後までどこが勝つのか誰にも分からない状況だった。そんな中、レース残り時間が1時間を切った時点で動きがあった。
この時、トップ3の順序はトップを走るアウディ、そしてトヨタ、ポルシェという順。最後のピットストップでアウディは燃料補給に加えタイヤも交換したが、トヨタは短時間で燃料補給をしただけでピットを後にした。このアウディとトヨタのピットストップでトップに立ったのがポルシェだが、ポルシェも最後の燃料補給が待っている。その内容次第でレース結果はどうなるか、その時点では不明だった。
ポルシェは220周目の最後のピットストップで、燃料補給に加えて片側のタイヤを交換。ドライバーもブレンドン・ハートレーからマーク・ウェーバーに交代したのだ。これがトヨタの村田久武レーシングパワーユニット総責任者を”驚かせた”ピットストップだ。
「僕だったらタイヤは換えないでそのまま走らせるけど」と、村田は言う。
しかし、ポルシェがタイヤを交換したのには、しっかりとした理由があった。リスクを冒してタイヤ交換したのは、タイヤが沢山のマーブル(タイヤのゴムカス)を拾って性能を十分に発揮出来ていなかったからだという。富士のコースはタイヤに厳しく、走行ラインを少しでも外すとマーブルだらけ。そこを走るとタイヤがそれを拾い、バランスが狂ってしまうのだ。
6号車トヨタの小林可夢偉は、ポルシェとのバトルで「早くタイヤをタレさせなければ」と考えていたと語っている。そして、ポルシェに通常ではない走行ラインを走らせてタイヤがマーブルを拾うように仕向ける戦略があったというが、まさにそのことだろう。
ポルシェはそのマーブルに苦しめられ、最後のピットストップでタイヤ交換を余儀なくされた。村田が疑問に感じたポルシェのタイヤ交換は、こうした理由によるものだった。もしタイヤの状況がよければ、タイヤ交換はせず、ピットストップ時間は遙かに短縮され、優勝の可能性もあったはずだ。しかし、タイヤ交換の決断をしたために、ドライバー交代の時間も取れた。そのおかげで日本のファンはマーク・ウェーバーの最後の走りを見ることができた。
ウェーバーに代わってから、ポルシェはクルマのバランスが完璧ではなかったという。それは、タイヤ交換を片側だけに行ったせいかもしれない。実際にはまだ分析が出来ていないというが、ウェーバーはクルマのバランスに不満を感じた時点でトヨタ、アウディを追いかけることを止め、3位を確実に守る走りに徹した。
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