ブルデーの夢を砕いた”たった数ドル”のパーツ。キャデラック38号車のリタイヤは「心臓に短剣が突き刺さったみたい……」
地元で開催される伝統のル・マン24時間レースで総合優勝するというセバスチャン・ブルデーの夢は、たった数ドルのパーツの故障で潰えることになった。
#38 Cadillac Hertz Team Jota Cadillac V-Series.R: Sebastien Bourdais
写真:: Nikolaz Godet
セバスチャン・ブルデーは、パワーステアリングの故障により38号車キャデラックがル・マン24時間レースをリタイアしたことを受け、「心臓に短剣が突き刺さったようだ」と表現した。
レース前半、ブルデー、ジャック・エイトケン、アール・バンバーが組む38号車Cadillac Hertz Team JOTAは、姉妹車の12号車、8号車トヨタ、20号車BMWと並んで、優勝争いの有力候補の1台だった。
しかし、38号車は朝を迎えることが出来なかった。ブルデーがドライブ中にパワーステアリングのトラブルが発生。まともにマシンを制御できない状態でピットにマシンを持ち帰ったブルデーだったが、短時間で修復することができない致命的なトラブルだったことから、38号車はそこでレースを終える事になった。
ブルデーは当時の状況を次のように振り返った。
「パワーステアリングが壊れたのはピット入口を通過した直後だった。だから、そのまま1周してピットまで戻らなければならなかったんだ。タイムを大きく失いながら、クラッシュしないよう必死だったよ。ステアリングホイールなんて、ただの棒のようになってしまっていたからね。曲がるのは本当に大変だった」
「しかもル・マンでは、ガレージに入ってから1分以内にコースへ復帰できなければレースは事実上終わりなんだ」
#38 Cadillac Hertz Team Jota Cadillac V-Series.R garage
写真: Germain Durand
今回のレースは、ブルデーにとって地元サルト・サーキットで迎えた19回目のル・マン24時間レースだった。2016年にLM-GTE Proクラスで優勝経験はあるものの、ブルデーはいまだ総合優勝を経験していない。
47歳のベテランは、このレースから得られる前向きな要素について尋ねられ、こう語った。
「リタイアしたことと、あの取るに足らない故障が心臓に突き刺さる短剣のような結果になってしまったことを除けば、すべてがポジティブだったよ」
僚機12号車がレース最終盤までトヨタ勢やBMW20号車と優勝を争っていたことからも、今回のキャデラックV-シリーズ.Rに優勝を狙えるポテンシャルが備わっていたのは間違いない。
ブルデーは、チームの仕事ぶりを称賛しながらも、ル・マン24時間というレースの過酷さも強調した。
「僕たちのマシンは本当に素晴らしく、ずっとトップ争いをしていた。チームメイトも最高の仕事をしてくれたし、チーム全体もやるべきことを完璧にやり遂げた。優勝を狙える位置につけることができた。それこそル・マンで求められるすべてなんだ」
「このレースは、あらゆるもの、あらゆる人を謙虚にさせる力を持っている。たった2ドル程度の部品ひとつで、すべてが一瞬にして終わってしまうこともあるんだ」
最後に、運命を受け入れるようにブルデーはこう締めくくった。
「レースの神様が『今日は君の日じゃない』と決めたら、本当にそうなるんだ。僕たちはマシンを壁にぶつけたわけでも何でもない。ただ、ばかげた故障ひとつで皆の努力を台無しになってしまった。それが現実だよ」
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