トヨタWEC、LMHマシンのカスタマー供給は「予定にないが、可能」LMDhは安さがウリも運営コストはLMHと同等?

Toyota Gazoo Racingは、LMHマシンとLMDhマシンの価格差は想像以上に小さいモノだとして、カスタマーチームがLMHマシンを走らせることは可能だと考えている。

#8 Toyota Gazoo Racing Toyota GR010 - Hybrid LMP1: Sebastien Buemi, Brendon Hartley, Ryo Hirakawa

 Toyota Gazoo Racingは、FIA世界耐久選手権(WEC)ハイパーカークラスにル・マン・ハイパーカー(LMH)レギュレーションで独自開発した『GR010ハイブリッド』を投入している。2023年からは同クラスに、LMDhレギュレーションのマシンが加わることになる。

 LMDhマシンは比較的安価な選択肢だとされているものの、トヨタとしてはカスタマーにLMHマシンを供給することも可能だとの考えを示している。

 WECのハイパーカークラスとIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のGTPクラスというスポーツカーレースの頂点で戦う上で費用対効果の高い選択肢として考案されたLMDhマシンは、外部コンストラクターが作成する次世代LMP2シャシーに固定価格でサプライヤーから供給される標準ハイブリッドシステムを搭載。ボディデザインやエンジンにある程度の自由度を持たせながらも、マシン開発費を抑えられることで、多くの自動車メーカーがLMDhマシンの開発に名乗りを上げている。

 それに加えて、ル・マン24時間レースやデイトナ24時間レースなど名だたるレースへの参戦を希望するプライベーターとしても、各メーカーが製作するLMDhマシンは魅力的な選択肢になっている。『963』を投入するポルシェは既にLMDhプログラム初年度ながらも、WEC及びIMSAで4台のカスタマー963を販売することに成功している。

 一方、LMDhマシンよりも技術的自由度が高いものの、独自にシャシーやパワートレインを開発する必要のあるLMH勢は、今のところカスタマー契約によって外部にマシンを供給したメーカーはいない。

 トヨタは、2022年シーズンにタイトルを獲得したGR010をカスタマーに供給する予定はないものの、プライベーターにとってLMDhマシンとLMHマシンの扱いには大きな違いがないと考えている。

 トヨタやフェラーリ、プジョーが製作したLMHマシンをカスタマーチームが走らせることは可能か、そうトヨタでテクニカル・ディレクターを務めるパスカル・バセロンに尋ねると、彼は次のように答えた。

「間違いなく可能だ」

「それが現在の我々の戦略なのかと訊かれれば、そうではない。でも、間違いなくその可能性はある。LMHでカスタマーチームが参加することは可能だろう」

LMDhマシンはLMHマシンより”あまり”安くない?

 トヨタはまた、ポルシェやキャデラック、BMW、アキュラなどが行なってきた走行テスト量を引き合いに出し、必ずしもLMDhマシンを運営するプログラムのコストがLMHよりも安い訳ではないと考えている。

 LMHマシンの運営はLMDhよりも高くつくのか、と問われたバセロンは次のように答えた。

「それほどでもない。LMDhマシンは、予想よりも少し高価であることが分かった。そして、結果的にはそれほど変わらないはずだ」

「今のところ、(LMDhメーカーによる)テストの熱量を鑑みると、確実に多くの予算がかかっている」

「LMDhでテストしようが、LMHでテストしようが、結局のところ膨大なテスト日数にはならないはず。そこが違いを生むんだ」

#7 Porsche Penske Motorsport, Porsche 963, GTP: Mathieu Jaminet, Michael Christensen, Nick Tandy

#7 Porsche Penske Motorsport, Porsche 963, GTP: Mathieu Jaminet, Michael Christensen, Nick Tandy

Photo by: Richard Dole / Motorsport Images

 LMDhレギュレーションの到来と共に、耐久レースの頂点へ戻ってくるポルシェ。彼らは2023年からチーム・ペンスキーとタッグを組んで、WECとIMSAにファクトリー体制で参戦する。

 それに加えて、体制を整えることに遅延が発生しているものの、ポルシェはJOTA(WEC)、JDC-ミラー(IMSA)、プロトン・コンペティション(WEC及びIMSA)にカスタマー供給を行なう。

 ポルシェは2022年1月に963をシェイクダウンしてから、2017年末以降久しぶりのプロトタイププログラムに向けて、北米とヨーロッパの両方でマシンの走行テストに注力してきた。

 準備にリソースを費やしてきたものの、ポルシェはLMDhマシンとLMHマシンの運用コストがあまり変わらないとするトヨタの主張に異論を唱えている。

 LMDhマシンの運営が当初考えられていたよりも高価だったか、とポルシェ・モータースポーツの責任者であるトーマス・ローデンバッハに尋ねると、彼は次のように語った。

「いや、そうじゃない。一般的にそうとは言えない」

「LMDhのコンセプトは、自由度が制限されている一方で、メーカーが能力を発揮できる領域では十分に自由度が残されていることだと思う。だから私としては、コスト管理と自分たちのマシンを作る自由度との間の良いトレードオフ関係なのだ」

「また、ルールや境界条件を考慮した上で、このBoP(性能調整)を行なうことは、非常に良いアプローチだと思う」

「しかし、当初考えていたモノよりも高くついたということはないだろう」

 
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