壊してナンボ! プジョーWEC、未だ”ノートラブル完走ゼロ”も「二度と壊れないマシンを創るにはそれ以外ない」とベルニュ
プジョーがFIA世界耐久選手権のハイパーカークラスに投入している『9X8』は、2022年シーズンに多くの問題を抱えていたものの、ドライバーのジャン-エリック・ベルニュは信頼性面で大きな進歩を遂げたと来季に向けた期待を見せている。
プジョーのFIA世界耐久選手権(WEC)プログラムに参加しているドライバーのジャン-エリック・ベルニュは、2022年シーズン新投入のル・マン・ハイパーカー(LMH車両)『9X8』に多くの問題が発生したものの、来季に向けてマシンの信頼性は進歩を遂げていると考えている。
プジョーは2022年シーズン後半のモンツァ戦から途中参戦したが、そのモンツァと続く富士で信頼性トラブルが発生した。プライベートテストで好成績を収め、BoP(性能調整)も後押しとなったことから、シーズン最終戦バーレーンではようやく形勢逆転なるか、とも思われたがレース開始から3時間で2台の9X8は別々の原因によりコース上でストップ……ベルニュ、ポール・ディ・レスタ、ミケル・イェンセンの93号車がギヤボックストラブルでリタイア、ロイック・デュバル、グスタボ・メネゼス、ニコ・ミュラーの94号車は燃料ポンプ交換を強いられ6周遅れでのフィニッシュとなった。
プジョーは3戦を終え、未だにノートラブルでレースを走り切ることができておらず、同クラスを戦うトヨタやアルピーヌなどには太刀打ちできずにいた。
しかしベルニュは、2022年にプジョーが直面してきた信頼性での問題は新規参戦メーカーにとっては珍しいことではないと考えており、2023年には問題を解決できているはずだと自信を見せている。
「耐久レースの歴史の中で、信頼性トラブルなしにやってきたチームはひとつもないと思う」
ベルニュはmotorsport.comフランス版にそう語った。
「耐久テストをするたびに、パーツがまた壊れる。残念なことに壊れてはしまうが、一度壊れたらその原因を理解し、パーツを交換すれば、二度と壊れることはない。耐久レースとはそういうモノだ」
「問題は、こういったマシンにはどれだけのパーツがあるか、ということだ。電子機器にフロントモーター、バッテリーに内燃エンジン、燃料ポンプなど、トラブルが発生する可能性は沢山あるんだ」
「やるべきことはただひとつ……走らせて、走らせて、走らせるんだ!」
「できるだけマイレージを重ねて、全てのパーツが限界を迎える時が来る。そこで壊れたら直して、改善していくんだ」
「そうすれば、二度と壊れない本当に強いマシンになる。こういった問題を解決できるのは経験だけで、それ以外にはない」
「でも最初の走行数回を振り返ると、今と違って何度もストップを強いられていたから、進歩は大きい。僕らがル・マン24時間レースを迎える頃には、もっと走行できているはずだし、信頼性トラブルも解消できているはずだ」
#93 Peugeot Totalenergies Peugeot 9X8: Paul Di Resta, Mikkel Jensen, Jean-Eric Vergne
Photo by: Masahide Kamio
最終戦バーレーンでは生き残った94号車がクラス最下位の4位という残念な結果に終わったが、光も見えた。予選では93号車ディ・レスタがフロントロウを獲得し、レース序盤は表彰台圏内を走行するなど、かなり競争力を秘めているようには見えた。
プジョーWECチームでテクニカルディレクターを務めるオリバー・ジャンソニーも以前、モンツァと富士で見せたペースが、ライバルと「同じ土俵に立てる」ことを示していると語っていた。
ベルニュは、プジョーが2022年の3戦で見せた競争力の片鱗と、フル参戦を果たす2023年シーズンに向けた準備によって、100周年を迎える来季のル・マン24時間レースでの勝利に向けた体制を整えられると考えている。
「プジョーは、ル・マンで負けるためにこのチャンピオンシップに参加している訳じゃないと思う」とベルニュは続ける。
「現時点で、それが簡単に達成できるとは言っていない。非常に難しいことになるだろうし、僕らの課題は山積みだ」
「今週、僕は実際にテストを行なう。クリスマスの週に3日間、耐久テストが行なわれる。このチームのモチベーションはとても高いし、素晴らしいプロジェクトだと思う」
「ル・マンで優勝を狙うためには、まだいくつか段階を踏んでいく必要がある」
「必要な段階を経ていない現時点では不可能だ。ル・マンで勝てるとは思わない。でも、登るべきステップは全て簡単に達成できることだとも分かっている」
「マシンに施す必要がある全ての改良は、必ず成し遂げられる。ル・マンまでに、優勝争いが出来るように全てを組み上げていく。そこは確実だよ」
来季からWECハイパーカークラスには、フェラーリがLMH車両『499P』を新投入し、グリッケンハウス・レーシングやバイコレス/ヴァンウォールも参戦に向け準備を進めている。加えて、ポルシェやキャデラックもLMDh車両で同クラスに加わることとなっている。
ライバルだったアルピーヌは、これまで旧規定のLMP1車両を特例的に走らせてきたが、2023年はハイパーカークラスからLMP2クラスへ転向し単年参戦を行なった後、ランボルギーニやBMWと共に2024年からLMDh車両で最高峰クラスに復帰することを目指している。
プジョーとしては、今後ライバルがさらに増えていくこととなる。2022年の糧を活かせるか。まずは3月17日の2023年シーズン開幕戦セプリング1000マイルで、その真価が問われることとなる。
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