中嶋一貴TGR-E副会長、悲劇の2016年ル・マン24時間を語る「チームのパフォーマンスという点ではおそらくベストレース」
中嶋一貴は、優勝目前でトラブルに泣いた2016年のル・マン24時間はトヨタWECのハイライトであり、パフォーマンスという点ではベストな1年だったと振り返る。
2026年の開幕戦イモラで、WEC(世界耐久選手権)参戦100戦目を迎えるトヨタ。かつてはドライバーとして参戦し、現在はTGR-Eの副会長を務める中嶋一貴は、2016年ル・マン24時間レースがチームにとっての「ハイライト」だったと語る。
トヨタは2012年にWECが復活してから参戦し続けており、LMP1時代からハイパーカー時代に至るまで、多くの栄光と挫折を経験してきた。100戦を目前に控えた現在までに、優勝49回、ポールポジション42回、そしてマニュファクチャラーズタイトル7回、ドライバーズタイトル6回を獲得している。
チームにとっても数々のハイライトシーンがあるが、中嶋副会長はmotorsport.comの取材に対し、最も印象的だった瞬間として10年前のル・マンを挙げた。
「良い瞬間もあれば、厳しい瞬間もたくさんありました」
「私の答えは想像がつくと思いますが、もしひとつ選ぶなら、やはり2016年のル・マンです」
この年のル・マン24時間は、トヨタが悲願のル・マン初制覇にあと一歩まで迫ったレースだった。レース最終盤、トップを走っていたトヨタ8号車にまさかのトラブル発生。中嶋がステアリングを握る8号車は、残り3分のホームストレートで力無く止まり、ポルシェ2号車に逆転を許した。
写真: Simon Winson
「もちろん、あれは想像しうる中で最もつらい瞬間でした」
「同時に、あのレースは我々が最高のパフォーマンスを発揮したレースでもありました。特に8号車のクルーにとっては、チームパフォーマンスという意味でおそらくベストのレースだったと思います。それは素晴らしい成果であり、ハイライトに挙げたいですね」
「結果的にトロフィーは手にできませんでしたが、チェッカーフラッグの3分前、あるいは5分前まで、レースは我々のものでした。この経験によって、『自分たちは必ずやれる』『ル・マンで勝てる』という自信をチームとして得ることができました。これは2015年までは欠けていたものだと思いますし、チームにとって大きな転換点になりました」
一方で中嶋副会長は、その翌年である2017年のル・マンが、チームにとってどん底の1年であったと語る。この年もトヨタはポルシェに勝利を譲ったばかりか、相次ぐトラブルやアクシデントで表彰台にも届かなかった。
「おそらく、2016年よりもひどかったかもしれません」
「自信を持った状態で臨んだ2017年は、本気で勝ちに行っていました。3台体制を敷いて、あらゆる手を尽くして優勝を目指していましたが、またポルシェに敗れてしまいました。そこには色々な理由がありましたが、チームにとってはかなりの失望でしたし、まだ努力が足りないと気付かされる出来事でもありました」
その後、2018年についに初勝利を手にし、2022年までル・マンを連覇したトヨタ。当時はLMP1末期、そしてハイパーカークラスの黎明期にあたり、アウディやポルシェといったライバルメーカーが参戦していなかった時期でもあるが、中嶋副会長は当時手にした成果には誇りを持っている。
「そういった2年間を経て、2018年には特に信頼性の面でクルマをさらに改善することができました。確かにポルシェやアウディのようなライバルがいなかったという見方もありますが、それでもチーム内で非常に高いレベルのレースをしましたし、初優勝はやはり特別なものでした」
その後、ハイパーカークラスには多くのメーカーが参入することとなり、競争は激化。マニュファクチャラーズタイトルの連覇を続けてきたトヨタも、昨年フェラーリに王座を奪われてしまったが、中嶋は現在のWECが健全な状態にあると語る。
「2018年以降、我々は常に競争を歓迎してきましたし、それを望んでいました」
「競争相手の数という点で、今のWECには満足しています。チームの一員としても、WECで戦う一員としても、素晴らしい時代だと思っています」
「もちろん難しさやチャレンジングな部分もありますが、それも楽しんでいますし、それこそが我々が追い求めてきたものなので、不満はありません。やるべきことを完璧にこなし、相手を打ち負かすだけです」
また中嶋副会長曰く、競争が激化した中でも、トヨタのチーム運営自体はそれほど大きく変わっていないという。
「チームとしての経験値や結束力は維持できていると思います。特に2023年や2024年は、最大目標であるル・マンを獲れませんでしたが、それでもチームとしては十分に強さを見せられていました」
「ただ2025年は少し違いました。外的要因について議論することもできますが、我々が目標達成に向けて何かが足りなかったことは認めなければなりません」
「2023年や2024年に気を抜いていたわけではありませんが、競争がある以上、他者の進歩によって苦しい状況に置かれることは必ずあります。そこから学ぶしかありません。昨年を学びの年と捉え、新しいマシンと共に再び目標達成に挑みます」
Toyota heeft er de laatste jaren veel meer concurrenten bij gekregen in de Hypercar-klasse.
Foto door: Sam Bagnall / Getty Images
WEC参戦100戦という節目を迎えたトヨタだが、今後も参戦を続け、200戦目を目指していくことになるのだろうか?
「もちろん、それはドライバーとしてもチームとしても願っていることではあります。ただ正直に言って、このプログラムを始めた当初、特にドライバーとしては、チームとともに100戦を達成するなんて想像もできませんでした」
「これは本当に驚くべきことです。200戦について考えるには時期尚早だと思いますが、毎年、毎戦全力で戦い続け、将来どうなっていくかを見守っていくしかありません」
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