【WEC】シルバーストン決勝詳報:大乱戦の開幕戦、トヨタ8号車が制す

4月15日、WEC(世界耐久選手権)開幕戦シルバーストンの決勝が行われ、8号車トヨタが優勝を果たした。

 4月15日、WEC(世界耐久選手権)開幕戦シルバーストンの決勝が行われ、8号車トヨタTS050 Hybridが優勝を果たした。

 開催地であるシルバーストン・サーキットには、イギリス特有の雨が度々降り、レースは天候によって大きく左右された。

1時間:トヨタ、盤石のペース

 フロントロウからスタートしたトヨタ勢は、スムーズに第1コーナーをクリア。勢いよくポルシェ勢を突き放した。

 レース開始から11分後、ポールポジションからスタートした7号車トヨタTS050 Hybridを姉妹車の8号車がオーバーテイク。LM-GTE Proクラスのトラフィックに引っかかり危うい場面もあったが、トラブルなく切り抜けた。8号車はスピードを上げ、7号車以下を引き離していく。

 レース開始から45分後に小雨が降り始めた。約10分ほどで止んだものの、しばらくウエットコンディションでの戦いに。その直後、先に動いたのはトヨタの2台で、同時にピットインし、タイヤ無交換のダブルスティント。給油のみ行ってコースに復帰した。

 その後、ポルシェ勢もピットイン。こちらもタイヤ無交換のダブルスティントで給油のみ行った。

 レーススタートから1時間の段階で、8号車トヨタと7号車トヨタのタイム差は0.778秒と接戦。3番手を走行する2号車ポルシェ919 Hybridはトップから6.347秒差となった。

2時間:トヨタ、トラブルの兆し

 1時間8分後、再びトヨタの順位が入れ替わった。8号車を担当するセバスチャン・ブエミは、「君の方が(7号車より)遅い」というチーム無線に「ジョークだろう!?」と苛立ちを見せた。

 その20分後、7号車トヨタのマイク・コンウェイがコーナーを曲がりきれずにコースアウトしたものの、レースに復帰した。

 ピットイン予定時刻よりも1分以上遅れて、55周目で8号車トヨタがピットイン。速度制限区間手前でスピードを落としきれなかったブエミは、白煙を上げながら60km/hまで減速。アンソニー・デビットソンにバトンを渡し、新品タイヤを装着してコースに復帰した。

 その翌周に7号車トヨタもピットイン。コンウェイに変わって小林可夢偉がステアリングを握った。

 次の周に1号車ポルシェのアンドレ・ロッテラーがニック・タンディに、その翌周には2号車ポルシェのブレンドン・ハートレーもティモ・ベルンハルトにそれぞれドライバーチェンジを行った。

 この時から7号車のペースは著しく落ちていった。この2回目のピットインで、7号車は2号車ポルシェに先を許し、レース開始から1時間50分後には、1号車ポルシェにまで抜かされてしまった。

 後にトヨタのクルーであるアレックス・ブルツは、その理由について「7号車はリヤのバランスにトラブルを抱えている」ことを公表した。

3時間:雨で動いたポルシェ、ステイアウトのトヨタ

 トラブルに見舞われた様子のトヨタに暗雲が立ち込める中、ポルシェはさらにペースアップしていく。セッション開始から2時間20分後、1号車ポルシェは1分40秒872と最速タイムをマークした。

 83周目の終わりで8号車トヨタがピットインし、給油を行なった。84周目の終わりには、7号車トヨタも続いてピットイン。給油交換をすると共に、トラブル解消のためにリヤのカウルを交換した。

 さらに次の周に1号車ポルシェがピットインを行なった。その頃ちょうど雨が降り始め、88周目の終わりでピットインした2号車ポルシェは、インターミディエイトタイヤを投入。それを合図とするように雨脚は強くなった。その後、1号車ポルシェが8号車トヨタを交わし、首位に躍り出る。

 89周目終わりに1号車ポルシェも再びピットインを行い、インターミディエイトタイヤに履き替えた。

 トヨタ勢は数分で雨が止むという予報のもとに、スリックタイヤのままステイアウトすることを選んだ。一時、ポルシェとのラップタイムが20秒差になるなど、トヨタは厳しい局面に立たされたが、これに耐えた。

 しかしレース開始から2時間44分後の段階で、トヨタの予想通り雨が止み、再び2メーカーのペースは逆転。トヨタ8号車は1号車ポルシェを交わし、再び2番手へ浮上した。

 空は再び明るくなっていき、1号車ポルシェがピットイン。タンディからロッテラーへドライバーチェンジを行うと共にスリックタイヤに切り替えた。続いて2号車ポルシェもピットインを行いスリックタイヤに交換した。よってステイアウトしたトヨタ8号車が、再び首位に返り咲いた。

4時間:ロペス、大クラッシュ

 波乱を呼んだ雨を乗り切り、天を味方につけアドバンテージを得た8号車トヨタは、順調に周回を重ねていく。しかし、雨の波乱は続いた。

 レース残り2時間42分のところで、LM-GTE Proクラス92号車ポルシェがエンジントラブルに見舞われ、マシンから出火。消火活動を行い、マシンを回収するために、5分ほどフルコースイエロー(FCY)が宣言された。

 それは再びトヨタに幸運をもたらした。イエローフラッグの中、8号車・7号車ともピットインを行い、中嶋一貴とホセ・マリア・ロペスがそれぞれステアリングを握った。

 FCYが解除された5分後、再び大きな雨粒がコースを打った。この影響か、115周目を走行していた7号車トヨタが、ターン9で大クラッシュ。コーナー入り口でリヤタイヤを濡れた縁石に引っ掛けたロペスは、車速の乗ったままグラベルに入り、フロントからタイヤウォールに激突した。この事故でTS050 Hybridのフロントエンドがほぼ潰れてしまったが、トヨタはレース復帰を決意。興奮するロペスをなだめて、ピットに自走で戻るように指示した。

 再びFCYとなる中、ポルシェ勢がピットに向かう。

 クラッシュした7号車TS050 Hybridは、マーシャルの助けを借りてコースに復帰。ヨロヨロとピットを目指す。この頃、FCYがセーフティカー先導に切り替えられた。クラッシュにより破壊されたタイヤバリアをなおすためだ。

 7号車はなんとかピットに辿り着き、ガレージイン。修復作業を開始した。ロペスは、メディカルセンターに行くことを命じられた。

 15分後にセーフティカーがコースを外れ、レース再開。トップを行く8号車トヨタの約4秒後に、2号車ポルシェが2番手で続く形となった。

5時間:早々にピットインの1号車ポルシェ

 セーフティカーが解除された後の約30分間は、8号車トヨタと2号車ポルシェの差は3~4秒で推移。大きな動きはなかった。

 レース残り1時間36分、141周目の終わりにポルシェ1号車がピットインを行なった。ロッテラーはたった24周目で、ニック・タンディにバトンを渡すこととなった。タンディはタイヤ交換を行い、ピットアウトした。

 その2周後、8号車トヨタがピットインした。中嶋は給油を行いスプラッシュ・アンド・ゴー。149周目で2号車ポルシェがピットイン、ブレンドン・ハートレーにドライバーチェンジした。

 ポルシェ勢がタイヤ&ドライバー交換を行い、トヨタが給油のみを行なったため、8号車トヨタは2号車ポルシェにとの差を約20秒に広げることができた。

 一方、ガレージインから約66分間もの懸命な修復作業の末、7号車トヨタがとうとうコースに復帰。完走とデータ収集を目指した。

 レース開始から間もなく5時間となろうかというところで、2号車ポルシェに1号車ポルシェが接近。その差は1秒以内となった。

6時間:怒涛の15分間

 残り48分、169周目の終わりでピットに入ったトヨタ。ドライバーチェンジしたブエミが、新品タイヤに変え最後のスティントに臨んだ。

 その翌周に1号車ポルシェがピットイン。約1時間前にタイヤ交換したばかりだったため、スプラッシュでアドバンテージを稼ぐと思いきや、左側2輪を交換。そのポルシェの後ろからピットレーンに入ろうとしたバイコレスは、97号車アストンマーチンとクラッシュ。マシンの破片が散らばったため、ピットレーン入り口ではしばらくイエローフラッグが振られた。

 残り32分、2号車ポルシェがピットイン。スプラッシュ・アンド・ゴーでコースに復帰した2号車ポルシェは、8号車トヨタの7.8秒前でコースに復帰し、首位を奪うこととなった。

  残り30分、8号車トヨタは前のポルシェめがけて猛プッシュし、約8秒のタイム差を15分間で削る。そして、2号車ポルシェとはテール・トゥー・ノーズの戦いに。

 残り16分のところで、再び雨が路面を濡らし始める。2号車ポルシェはトラフィックを利用しながら懸命にトヨタ8号車を引き離そうとした。しかし、8号車トヨタのブエミはそれを許さず、ミスなくポルシェを攻め上げ、コーナーのイン側を刺し、首位を奪い返すことに成功する。

 首位に返り咲いたといえども、残り10分間も気の抜けないトヨタ陣営。その思いが通じたのかブエミは安定したペースを発揮し、最終的に2号車ポルシェに約5秒差つけて、開幕戦優勝を果たした。

 2位はユーズドタイヤで粘ったものの、直接対決に敗れた2号車ポルシェ。3位は1号車ポルシェだった。トヨタ7号車はレースの75%を走行したことにより完走扱いでクラス4位に入賞を果たした。

 唯一のプライベーターチームであるバイコレスは、ラスト1時間まで生き残っていたものの、97号車とクラッシュで無念のリタイアとなった。

 WEC第2戦スパ6時間レースは、5月4〜6日にかけて行われる。

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この記事について
シリーズ WEC
イベント名 シルバーストン
サーキット シルバーストン
記事タイプ 速報ニュース