プロトタイプスポーツの”黄金時代”は到来したのか? ドライバーたちも「LMP1時代よりもピークが長く続くこと」を望む

WECに参戦する複数のドライバーは、LMDh車両のデビューと共に幕を開けたスポーツカーレースの新時代は、LMP1時代よりも長く続くと楽観的な見方をしている。

プロトタイプスポーツの”黄金時代”は到来したのか? ドライバーたちも「LMP1時代よりもピークが長く続くこと」を望む
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 WEC(FIA世界耐久選手権)を戦うドライバーたちは、LMHとLMDh車両がWECと北米のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権を戦うことができる時代が訪れた事に対し、楽観的な見方をしている。

 WECとIMSAの最上位クラスに、2023年からLMDh車両の参戦が可能となった。2021年からWECに参戦が可能となったLMHも含めれば、トヨタ、プジョー、フェラーリ、ポルシェ、BMW、キャデラック、アキュラ、ランボルギーニ、アルピーヌ、グリッケンハウスといったメーカーがファクトリー体制でスポーツカーレースのトップクラスに参戦するという、前例のない活況となっている。

 特にWECは、2010年代半ばにLMP1車両がトップクラスを形成し、好調な時期を過ごしたが、アウディやポルシェが撤退したことで参戦台数が減少。メーカー同士の対決もなくなり低迷が続いていただけに、状況は一変している。

 また、WECのオーガナイザーたちもLMP1時代から教訓を学んだことで、LMDhとLMHのレギュレーションがハイパーカークラスに長い繁栄をもたらすと多くの人が信じている。

 ユナイテッド・オートスポーツのドライバーであるオリバー・ジャービスは、2015-16年のLMP1全盛期にアウディでレースをしており、近年IMSAでマツダとアキュラに所属していたことから、IMSAの旧規定であるDPiレギュレーションもしっかりと把握している。

 彼はLMDhとLMHのレギュレーションの枠組みが公平な競争条件を提供し、新しいメーカーがこのクラスに参入して既存メーカーに対抗することが財政的に可能になったと考えている。

 ジャービスはmotorsport.comに「LMP1は長く続いたが、メーカーの関与を維持することができなかった」と語った。

「コストがコントロールできなくなったのだろう。(新しい)レギュレーションは、コスト分析の観点でより良いものだ。だから、フェラーリやプジョーが戻ってきたんだ」

「おそらく、過去にもそうしたメーカーはWECのことを見ていたが、2014-15年といった時代にアウディやポルシェと競争できないということを知っていたんだ」

「これが長続きするのだと思いたい。予算がコントロールされている限り、それは可能だと思う。5年や10年でそうでなくなる理由はないと思う」

 アキュラのドライバーであるフィリペ・アルバカーキは、マシンを一定の性能の範囲内に収めなければならないため、メーカーがより大きな利益を求めて開発費を投入するインセンティブがないことを強調した。

 また、LMDhマシンのスペックを5年間固定することが、競争のコストがコントロール不能にならないことの証だと主張した。

「LMP1時代には、あっという間にコストがエスカレートしたと思う」と、アルバカーキはmotorsport.comに語った。

「(LMDhは)本当によくできていて、ある意味で予算制限があるようなものなんだ。ダウンフォースも空気抵抗もパワーも、すべてにおいて上限があるからね」

「昔みたいに最強のエンジンを積んでいても、結局は性能曲線を超えてはならない。そして、最低重量も守らなければならないんだ」

「そして、一度作ったクルマは5年間固定される。だから、メーカーが今使っているような多額の資金を(クルマを)作るために使い続けないようにすることが、最大の問題解決になると思うんだ」

「そして、最終的にはマーケティング面での魅力によって、スポンサーや顧客を獲得し、メーカーがその資金を正当化することができるのだから、理にかなっていると言えるだろう」

「LMP1よりはるかに安価だ。いい感じだし、もっと長く続いてほしいね」

 WECとIMSAのルール収束の一環として、メーカーはLMDhルールでもLMHルールでも、同じクルマで両選手権のトップクラスに参戦できるようになった。

 これにより、ポルシェとキャデラックは2023年からWECとIMSAに参戦。全く同じクルマでル・マンとデイトナという、ふたつの24時間レースを戦うことができる。

 2017年にポルシェでル・マンを制したティモ・ベルンハルトは、WECとIMSAのルール収束が成功したことが、スポーツカーレースの頂点にメーカーを呼び戻す上で大きな役割を果たしたと考えている。

「耐久レースには、常にさまざまな波があり、メーカーが現れては消えていくものだと思う」と彼はmotorsport.comに語った。

「今は、より多くのメーカーが参入し、耐久レースの黄金時代に戻っているようで嬉しいよ」

「LMP1とはルールが違うし、当時は誰が高いレベルで戦えるのかが問題だった。また、コストの問題もあった」

「そして今はLMDhのルールがある。おそらくLMHの方が少し高価だが、メーカーにとってはより魅力的なものとなっている」

「世界中で同じクルマを走らせることができるのも魅力だ。スポーツカーレースにとって、メーカーがより長くとどまることは重要だろう」

 ポルシェは2014年から17年までLMP1に参戦した際、1シーズン当たり1億ドル(約130億円)以上を費やしたことで知られているが、実際にどれだけの資金がプログラムに投入されたかについては、様々な証言があるようだ。

 ポルシェは同カテゴリーへの復帰にあたり、より手頃な価格のLMDh規定のマシンを開発することを選択し、カスタマーチームにもマシンを供給する予定だ。

 ポルシェ・モータースポーツの代表であるトーマス・ローデンバッハは、新ハイパーカー・クラスが今後数年間、メーカーから強く関心を持たれるということに自信を持っているようだ。

 スポーツカーレースの新時代は、LMP1のピーク時よりも長く続くのかとの質問に対し、ローデンバッハはmotorsport.comに次のように答えた。

「そうなることを強く望んでいる。なぜなら我々はとても真剣にコストコントロールをしているからだ」

「モータースポーツ界では多くのシリーズが誕生しては消えていくのを見てきたが、一般的に財政的な安定性に苦しんでいることが非常に多い」

「だから、最初からその点に気を配るのはいい方法だ。我々はそれをコントロール下に置かなければならない」

「LMHもあるから、ルールの収束というトピックを正しく理解しなくてはいけない。しかし出発点としては、魅力的で長く続くような時代が来る良いチャンスがあるんだ」

「まだ多くの課題が残っていて、100%そうなるとは言わない。しかしチャンスは間違いなくある」

 一方でプジョーのロイック・デュバルは今後数年間は競争が激しいレースができたとしても、このカテゴリーに長く留まるかどうか不明なメーカーもいると注意を促した。

「FIA、ACO、IMSAはこれまで良い仕事をしてきたが、全員がハッピーになれるわけではない」

「コンストラクターがハッピーでない時は、撤退するか、あるいは改善を試みるんだ」

「今後数年間はレースや視聴者、コンストラクターのいずれにとっても強力な存在になることは間違いないだろう。それがいつまで続くかは分からないけどね」

 
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