【WEC】スパ決勝詳報:トヨタ1-2完勝。終盤熾烈な”同門”バトル
WEC第2戦スパ6時間レースの決勝が行われ、TOYOTA GAZOO Racingが1-2フィニッシュを果たした。8号車TS050 HYBRIDは開幕2連勝を挙げた。
写真:: JEP / Motorsport Images
WEC(世界耐久選手権)第2戦スパ6時間レースの決勝が行われ、TOYOTA GAZOO Racingが1-2フィニッシュを果たした。8号車TS050 HYBRIDは開幕2連勝を挙げた。
スパの初日と2日目は、ベルギー特有の寒々しい曇り空や小雨に見舞われたものの、決勝日のスパ-フランコルシャンサーキットの上空には青空が広がった。
1時間:1号車ポルシェ、首位から5番手に転落
現地時間14時30分よりローリングスタート方式でスパ6時間レースがスタート。第1コーナーで4番手スタートの9号車トヨタのニコラ・ラピエールが、首位の1号車ポルシェを一時追い抜いてイン側をとった。しかし、ラピエールはコーナー入り口で煙を上げながらブレーキング。それでも止まりきれずにオーバーランしてしまい、5番手に後退した。
一方、3番手スタートだった8号車トヨタのセバスチャン・ブエミは、第1コーナーをコンパクトにまとめ上げ、走行ラインが膨らんだ7号車トヨタを交わして2番手に浮上した。しかしスタートから10分後、周回遅れのGTEクラス86号車ポルシェに引っかかった8号車トヨタは、7号車トヨタに先行を許した。その後、7号車トヨタをドライブするマイク・コンウェイはペースアップし、1号車ポルシェをドライブするアンドレ・ロッテラーに急接近。0.5秒差につけた。それに負けじと8号車トヨタも姉妹車7号車を追う。
スタートから20分経過後、最終シケインで1号車ポルシェに7号車トヨタが仕掛けるが、ここはポルシェがポジションを死守。ホームストレート後のターン1では、トヨタ2台の牙が1号車ポルシェを襲った。その翌周、最終シケイン手前のストレートで、スリップストリームを利用した7号車トヨタが1号車ポルシェのオーバーテイクに成功。シケインでイン側を閉め、首位に立った。
トヨタの猛進撃は止まらず、その次の周で9号車トヨタがマシンを暴れさせながらコース外を走行し、ブランシモンで2号車ポルシェに仕掛けた。さらに8号車トヨタが混雑したホームストレートで1号車ポルシェの隙をつき、2番手に浮上した。
スタートから30分後、首位から3番手に沈んだ1号車ポルシェのペースは上がらず、4番手の2号車ポルシェにも追いつかれてしまう。2号車ポルシェのブレンドン・ハートレーは1秒差内で姉妹車の後をつけた。その12分後、2号車ポルシェが1号車を交わして3番手にポジションアップした。
レーススタートから45分経過後、20周を走りきったところで首位の7号車トヨタがピットイン。1号車ポルシェもそれに続いた。1号車ポルシェはドライバーチェンジとタイヤ交換を行い、ニック・タンディのドライブでコースインした。その翌周に8-9号車トヨタがピットイン。トヨタ陣営は全車とも1回目のピットストップでドライバーチェンジを行わなかった。最後にピットインしたのは2号車ポルシェ。こちらも給油のみ行った。
2時間:2号車ポルシェ、緊急ピットインで痛手負う
7号車トヨタをドライブするコンウェイのペースは好調で、2番手の8号車トヨタとの差をじわじわと開いた。5番手の1号車ポルシェもペースを取り戻し、4番手の9号車トヨタの背後に張り付く。レーススタートから1時間が経とうかというところで、1号車ポルシェが9号車トヨタの前に出て4番手にポジションアップした。さらにレーススタートから1時間20分後、1号車ポルシェが2号車ポルシェに接近。2号車ポルシェは2スティント目タイヤであるためペースが伸び悩み、結局1号車ポルシェに先行を許してしまった。
スタートから1時間34分後、46周終わりに7号車トヨタと1号車ポルシェがピットイン。7号車トヨタは小林可夢偉にドライバーチェンジを行い、対する1号車ポルシェはダブルスティントを決行した。翌周8号車トヨタがピットイン。ブエミはアンソニー・デビットソンにバトンを渡した。9号車トヨタもそれに合わせてピットインし、”ルーキー”の国本雄資がハンドルを握った。最後にピットインしたのは今回も2号車ポルシェ。ハートレーは同郷のアール・バンバーにマシンを引き渡した。
2回目のピットインによって、隊列は首位が7号車トヨタ、2番手にダブルスティントの1号車ポルシェ、3番手に8号車トヨタ、4番手に2号車ポルシェ、9号車トヨタは5番手という格好となった。
3番手の7号車トヨタに2号車ポルシェが接近したが、レーススタートから2時間を経過するかというところで、2号車ポルシェはタイヤトラブルを抱え、緊急ピットイン。左リヤタイヤのみ交換した。このため、3番手の8号車トヨタとの差が約40秒に開いてしまうこととなった。
3時間:7号車トヨタの一人旅
今回WECデビュー戦となる9号車トヨタの国本は、LMP1クラスの隊列から引き離されてしまっていた。ラップタイムも他のマシンから2~4秒差つけられたため、2時間が経過した時点でトップから1分43秒差となってしまった。
7号車トヨタの小林は、2番手の1号車ポルシェに約30秒差つけて独走。レーススタートから2時間10分後、8号車トヨタが1号車ポルシェを捉えて2番手に浮上した。その勢いは衰えず、8号車トヨタは1号車ポルシェを引き離していった。
スタートから2時間24分後、70周目の終わりに7号車トヨタがピットイン。1号車ポルシェもそれに続いた。7号車トヨタはダブルスティント、1号車ポルシェはニール・ジャニにドライバー交換した。その翌周に8号車トヨタがピットインし、給油のみ行った。少し遅れて、72周目の終わりに9号車トヨタがピットイン。こちらも給油のみ行い、2スティント目に突入した。
78周目にようやく2号車ポルシェがピットインし、ティモ・ベルンハルトにバトンを渡した。そのため、トヨタの2台が1−2体制。2号車ポルシェは3番手の1号車ポルシェの背後でレースに復帰した。
4時間:FCYの恩恵を得て8号車トヨタが首位へ
6時間レースの折り返し地点で、GTEクラス86号車ポルシェが7号車トヨタの目の前でスピンを喫し、小林は間一髪でそれを回避した。小林は今回の予選でも、同じようなシーンがあった。その後、86号車ポルシェはホームストレート上で停車してしまったため、イエローフラッグが振られた。その隙に、7号車トヨタがピットイン(92周目終了時点)を行なった。
残り2時間46分というところで、コース脇に止まった86号車ポルシェを回収するためにフルコースイエロー(FCY)が発動された。このタイミングで1号車ポルシェ、2号車ポルシェ、9号車トヨタらが続々とピットに向かい、少し遅れてトヨタ8号車が遅れてピットインする。
トヨタ7号車は小林からコンウェイにバトンタッチし、8号車トヨタには中嶋一貴が搭乗、9号車トヨタの国本は、ステファン・サラザンにマシンを引き渡した。対するポルシェは2台とも給油のみ行った。その5分後にFCYが解除された。
この時点での隊列はFCYのタイミングでピットインすることができた8号車トヨタが首位となり、イエローフラッグが出た段階で先にピットインしていた7号車トヨタは約15秒遅れの2番手、3番手に1号車ポルシェ、2号車ポルシェは4番手に続いた。
ピットインのタイミングで損してしまった7号車トヨタのコンウェイは、良いペースで8号車トヨタを追い、じりじりとそのタイム差を縮めた。
5時間:2号車ポルシェ、2番手にジャンプアップ
レース残り2時間のところで、7号車トヨタはトップの8号車トヨタから約2秒差まで詰めた。対するポルシェの2台も僚友同士の戦いを繰り広げ、結局1号車ポルシェを2号車ポルシェが抜かして3番手にポジションを上げた。
117周目の終わりに1号車ポルシェがピットインし、ロッテラーにドライバーチェンジする。翌周には7号車トヨタが続いて給油のみ行った。
レース残り1時間54分というところで、LMP2クラスの28号車がクラッシュを喫したため、このレース2回目のFCYが発動された。それを合図に8号車トヨタがピットイン。またもや好タイミングでピット作業を済ませた8号車トヨタは、1分という大きなアドバンテージを得て首位を維持した。
119周目の終わりに2号車ポルシェがピットインし、ハートレーにドライバー交換。9号車トヨタも続いてピットインした。
レース残り1時間34分のところで、7番手トヨタと2号車ポルシェの2番手争いが繰り広げられた。7号車トヨタは懸命に逃げるもペースを上げられず、タイヤをリフレッシュした2号車ポルシェにストレートでオーバーテイクされて3番手に沈んだ。さらにその2台は首位の8号車トヨタとの差を縮め、約30秒差に迫った。
レース残り1時間9分(139周の終わり)という段階で、8号車トヨタが早めのピットイン。中嶋に変わって、ブエミがステアリングを握った。その翌周に1号車ポルシェもピットイン。給油のみ行ってコースに復帰した。それに7号車トヨタが続き、小林がマシンを引き継いだ。
その間、2号車ポルシェがLMP2クラス36号車と接触し、そのせいで36号車はスピンを喫してしまった。フロントカウルを破損させた2号車ポルシェは、その周でピットイン。フロントカウルの交換と給油を行なった。
2号車ポルシェは7号車トヨタの前にレースに復帰したものの、あっさり抜かされてしまい3番手となった。
トップの8号車トヨタと2番手の7号車トヨタのタイム差は30秒差、3番手の2号車ポルシェは2秒差のところで7号車トヨタを追うという格好になった。
6時間:ラスト1周、トヨタの2台はテール・トゥ・ノーズに
ラスト1時間に差し掛かったところで、ターン5で小雨が降り出したとFIAが報告した。その10分後雨脚はさらに強くなり、8号車トヨタのチーム無線では、今後の作戦について話し合われ、結局ステイアウトを選択。悪天候を警戒する他のチームの間にも一時緊張が走ったが、天候はそれ以上悪化することはなかった。
その間、2番手の7号車トヨタが猛追し、残り30分のところでトップと約17秒差となった。10分後、164周目の終わりでトップの8号車がピットインしスプラッシュ・アンド・ゴーを決行。その翌周に7号車トヨタもラストピットインを済ませ、1号車ポルシェがそれに続いた。その2周後に2号車ポルシェがピットインをし、残り11分でレースに復帰。よって、8号車トヨタが再び首位に返り咲いた。7号車トヨタは6秒差で2番手、3番手は1秒差で2号車ポルシェが続いた。
残り5分のところで、小林可夢偉が駆る7号車トヨタは8号車トヨタを視界に捉え、さらに猛プッシュをかける。ラスト1周でその差はたったの1秒。僚友同士の仁義なきテール・トゥ・ノーズの戦いを繰り広げるも、トラフィックで姉妹車7号車を巻いた8号車トヨタがトップチェッカーを受けた。
トヨタ8号車は開幕戦2連勝を果たし、7号車トヨタが2位に入賞したことで、トヨタ陣営は1-2フィニッシュ。9号車トヨタも2周遅れで完走し5位となった。ポルシェ陣営は、2号車が3位で表彰台入り、1号車が4位となった。
大乱戦のLMP2、僚友同士の戦いを制した71号車、独走の98号車
多くの元F1ドライバーが参戦するLMP2は、6時間に渡って激しいバトルが繰り広げられ、結局予選でもクラストップだった26号車G-ドライブがクラス優勝を果たした。
ラスト1時間まで熾烈な首位争いを展開した31号車レベリオンがクラス2位、レース中盤でスピンを喫しながらも38号車ジャッキー・チェンDCレーシングがクラス3位につけた。
なお、LM-GTE Proクラスはレース序盤にフォードとの熾烈なトップ争いを繰り広げ、後半には同僚とテール・トゥ・ノーズの戦いを制した71号車AFコルセがクラス優勝を果たした。
LM-GTE Amクラスはほぼ独走状態の98号車アストンマーチン・レーシングが優勝。澤圭太が所属する61号車クリアウォーター・レーシングはクラス3位で表彰台入りを果たした。
【関連ニュース】
【WEC】トヨタ村田氏「7号車は2回もハンデ。切ないレースだった」
【WEC】2連勝の中嶋一貴。「結果は結果。でも完全には喜べない」
【WEC】デビュー戦の国本雄資「悔しい。うまく戦えると思っていた」
【WEC】トヨタ、ディフューザー不正の疑いを一蹴「120%適法だ」
【WEC】スパ予選:1号車ポルシェがPP。トヨタ2-3番手に続く
WEC第2戦スパ6時間レース決勝リザルト:
Cla | # | ドライバー | クルマ | Class | Laps | 時間 | ギャップ | インターバル | ピット | リタイア | ポイント | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 8 | アンソニー デビットソン 中嶋 一貴 セバスチャン ブエミ |
Toyota TS050 Hybrid | LMP1 | 173 | 7 | ||||||
2 | 7 | 小林 可夢偉 マイク コンウェイ ホセ・マリア ロペス |
Toyota TS050 Hybrid | LMP1 | 173 | 1.992 | 7 | |||||
3 | 2 | ティモ ベルンハルト ブレンドン ハートレー アール バンバー |
Porsche 919 Hybrid | LMP1 | 173 | 35.283 | 8 | |||||
4 | 1 | アンドレ ロッテラー ニール ジャニ ニック タンディ |
Porsche 919 Hybrid | LMP1 | 173 | 1'25.438 | 7 | |||||
5 | 9 | ステファン サラザン ニコラ ラピエール 国本 雄資 |
Toyota TS050 Hybrid | LMP1 | 171 | 2 laps | 7 | |||||
6 | 4 | オリバー ウェッブ ドミニク クライハマー ジェームス ロシター |
ENSO CLM P1/01 | LMP1 | 161 | 12 laps | 7 | |||||
7 | 26 | ロマン ルシノフ Pierre Thiriet アレックス リン |
Oreca 07 | LMP2 | 160 | 13 laps | 8 | |||||
8 | 31 | ブルーノ セナ ジュリアン カナル ニコラス プロスト |
Oreca 07 | LMP2 | 160 | 53.281 | 8 | |||||
9 | 38 | オリバー ジャービス ホーピン タン トーマス ローラン |
Oreca 07 | LMP2 | 160 | 1'14.268 | 8 | |||||
10 | 13 | ネルソン ピケJr. デビッド ヘイネンマイヤー・ハンソン マティアス ベシェ |
Oreca 07 | LMP2 | 159 | 14 laps | 9 | |||||
11 | 36 | ロマン デュマ グスタボ メネゼス マシュー ラオ |
Alpine A470 | LMP2 | 159 | 48.903 | 9 | |||||
12 | 35 | ネルソン パンチアティシ ピエール ラグエス アンドレ ネグラオ |
Alpine A470 | LMP2 | 158 | 15 laps | 9 | |||||
13 | 24 | ジャン-エリック ベルニュ ジョナサン ハーシー トア グレイブス |
Oreca 07 | LMP2 | 158 | 5.336 | 9 | |||||
14 | 25 | ヴィタリー ペトロフ シモン トルーマー ロベルト ゴンザレス |
Oreca 07 | LMP2 | 158 | 9.935 | 8 | |||||
15 | 28 | フランソワ ペロード エマニュエル コラード マシュー バシヴィーレ |
Oreca 07 | LMP2 | 158 | 1'10.632 | 9 | |||||
16 | 37 | デイビット チェン トリスタン ゴメンディ アレックス ブランドル |
Oreca 07 | LMP2 | 156 | 17 laps | 9 | |||||
17 | 71 | サム バード Davide Rigon |
Ferrari 488 GTE | LMGTE PRO | 151 | 22 laps | 5 | |||||
18 | 51 | James Calado Alessandro Pier Guidi |
Ferrari 488 GTE | LMGTE PRO | 150 | 23 laps | 5 | |||||
19 | 66 | Stefan Mücke Olivier Pla Billy Johnson |
Ford GT | LMGTE PRO | 150 | 30.521 | 5 | |||||
20 | 67 | Pipo Derani Harry Tincknell Andy Priaulx |
Ford GT | LMGTE PRO | 150 | 1'12.484 | 5 | |||||
21 | 91 | Richard Lietz Frédéric Makowiecki |
Porsche 911 RSR | LMGTE PRO | 149 | 24 laps | 5 | |||||
22 | 92 | Michael Christensen Kevin Estre |
Porsche 911 RSR | LMGTE PRO | 149 | 52.093 | 5 | |||||
23 | 97 | Darren Turner Jonathan Adam Daniel Serra |
Aston Martin Vantage | LMGTE PRO | 148 | 25 laps | 5 | |||||
24 | 95 | Marco Sorensen Nicki Thiim Richie Stanaway |
Aston Martin Vantage | LMGTE PRO | 148 | 44.261 | 5 | |||||
25 | 98 | Pedro Lamy Paul Dalla Lana Mathias Lauda |
Aston Martin Vantage | LMGTE AM | 146 | 27 laps | 5 | |||||
26 | 77 | Christian Ried Matteo Cairoli Marvin Dienst |
Porsche 911 RSR (991) | LMGTE AM | 146 | 31.110 | 5 | |||||
27 | 61 | Matt Griffin Mok Weng Sun Keita Sawa |
Ferrari 488 GTE | LMGTE AM | 145 | 28 laps | 5 | |||||
28 | 54 | Francesco Castellacci Miguel Molina Thomas Flohr |
Ferrari 488 GTE | LMGTE AM | 144 | 29 laps | 5 | |||||
29 | 34 | Karun Chandhok Nigel Moore Philip Hanson |
Ligier JSP 217 | LMP2 | 151 | 22 laps | 12 | |||||
30 | 86 | Michael Wainwright Ben Barker Nick Foster |
Porsche 911 RSR (991) | LMGTE AM | 76 | 97 laps | 5 |
Be part of Motorsport community
Join the conversationShare Or Save This Story
Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.
フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。
Top Comments