全日本ラリー王者の勝田「WRC日本の開催には国の協力が必要」
全日本ラリードライバーの勝田範彦と鎌田卓麻は、WRCラリー・ジャパンの開催について語った。

11月4~5日、全日本ラリー最終戦"新城ラリー2017"が行われ、全日本ラリー最高峰クラスであるJN6クラスで勝田範彦が優勝し、シリーズチャンピオンに輝いた。
父・照夫は全日本ラリー選手権初代チャンピオン・元WRCドライバーという経歴を持ち、今回の新城ラリーを運営するクラブの会長を務める。さらに息子・貴元はトヨタの育成ラリードライバーで、ヨーロッパを中心としたラリーイベントで武者修行中の身にある。親子3代にわたり、日本のラリー界に大きく貢献しているのが勝田一家だ。
その2代目の勝田範彦は、8度全日本ラリーチャンピオンを獲得するという凄まじい功績を持つ現役ラリードライバーであるが、実は"大のWRCファン"。新城ラリーのイベント前に「(セバスチャン)オジェ(WRC2017年シーズン王者)すごいよね」と興奮気味に語っていた。
「WRCはいつも見てみます。車載動画を見ていると気持ちが高まりますね。"あんな走りができてスッゲー!"と思ってますよ」
今年の秋口、ラリー界隈では"WRCラリー・ジャパン"の復活が噂されていた。もし実現することとなれば、全日本ラリー王者の勝田はWRCラリー・ジャパンに挑戦するだろうか。
「オジェと戦うのは恐れ多いです(笑)。ただオジェが僕と同じ規格のスバルで戦うならバトルしてみたい。まあ彼なら何乗っても速いと思いますし、僕はWRカーに乗ったことがないから、彼にちょっとハンディを負ってもらいたいです」
そう戯ける勝田だが、WRCラリー・ジャパンの開催のために必要な要素について訊くと、真剣な眼差しで次のように語った。
「やっぱり国で開催しなければならないと思っています。それは他の国も同じ。新城ラリーの規模も大きくなってきましたが、WRCを開催するためには国の協力が必要です。国の協力によってラリーを開催する上で問題になることはほとんどフリーになるはずですから。それに国で開催しなければ、結局全日本の延長になってしまう。これは今後イベントとして継続していくためにも必要です」
「国の協力が得られるかはわかりませんが、これからだと思います。今までラリーイベントは夜にしか開催していなかったし、ほぼ夜でしかラリーはできませんでした。しかし今は昼間の開催ができるようになり、人々のラリーに対する認知度も徐々に上がってきたという実感があります」
日本人にとってのラリーの頂点
全日本ラリーJN6クラスに参戦する鎌田卓麻は、スバルWRX STIでWRCラリー・ジャパンに参戦した経験を持つドライバーのひとりだ。ラリードライバーの父を持ち、幼少期から自身もラリードライバーになるのだと自然に思っていたという鎌田。ラリーに対する想いも格別に強い。
今後日本でラリーを振興していくのに、今の日本のラリー界にとっての頂点が全日本ラリー止まりになっていることを鎌田は懸念しているようだ。
「僕らが思うにピラミッド型のステップアップシステムがあるモータースポーツの方が流行ると思います」
「"夢はF1、そのためにカートをやる"というような、世界で戦えるような環境を作っていくためにはやはり目標が明確な方が良いんです。ただ日本のラリー界ではその目標が全日本ラリー止まりになってしまっている。若手たちも世界への出方がわからないのだと思いますし、まだ日本と世界のラリーが密着できていないのかなという印象を受けます」
「ただその頂点が世界戦になるだけでもっと裾野を広げられ、盛り上がっていけると思うんです。"いつかはWRCに行く"という夢を持てる環境になることが大事なのだと思います」
鎌田もWRCラリー・ジャパンの復活を望んでいる。
「以前開催されていたWRCラリー・ジャパンは相当盛り上がっていました。ステージもそうですが沿道にも一目ラリーカーを見ようと待っている人がたくさんいたのを覚えています。日本には"隠れラリーファン"が意外と多いんじゃないでしょうか」
「なので是非ともラリーの発展のために再びWRCを日本に誘致して欲しいですね。これほどドライバーとファンの距離が近いのはラリーならではだと思いますし、和気藹々としたラリーの雰囲気が日本にもっと広まっていけば嬉しいです」
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