
世界で活躍する若手ラリードライバー育成を行うTOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジプログラムにて鍛錬を積む24歳、勝田貴元。
勝田は今季2度ほど帰国しただけで、ヨーロッパ各所で開催されるラリーの地方戦や世界選手権に参戦し、スケジュールの合間を縫って"レッキ"(ペースノート作り)の練習に勤しんだ。これまでのレッキ練習はなんと1万kmを突破したという。世界選手権の1本あたりの平均SS距離が大体20kmだとすると、単純計算でも500回分の世界選手権レベルの距離のSSをレッキしたことになる。
10月5~8日に開催されたWRCラリー・スペインのWRC2クラスに参戦し、クラス14位となった勝田は、怒涛の2017年シーズンを終えた。
帰国後、父である範彦も参戦する"新城ラリー2017"に駆けつけた勝田は、会場である新城総合公園内でデモランを披露したり、TOYOTA GAZOO Racing Park内でのブースでトークショーを行うなどして、ラリーファンたちを楽しませた。
勝田は今季のラリーチャレンジプログラムについて振り返った。
「一言で言うと、成長できた1年間でしたね。自分の感覚やドライビング、ペースノート、ラリーに対する考え方などが毎戦ちょっとずつ変わっていって、今振り返ってみると全てが一新されたような1年でした。今後の自分に必要なものがより明確になっていったというか。まだまだ変わりきれていないところもあるので、もっと大事な要素を取り出すために削り出していく段階に入っています」
勝田にとって不慣れな地での戦いの中で最も課題となったのは、自己コントロール能力と己に対する"自信"だった。
「僕のラリースタイルってもともとガツガツ責めちゃう方だったんです。攻めなくてもいいところとかも構わず攻めてしまったりしたんですが、その癖を徐々に改められるようになってきました。まだまだ理想には遠いですが」
「一番の課題となっていたのが、何かトラブルやイレギュラーがあった時にあたふたし、落ち着きがなくなってしまっていたことです。ヨウニ(・アンプヤ/勝田たちのチーフインストラクター)からは"世界に行くのにそれでは全く足りていない"と叱咤を受けました。リタイアした時も"技量が足りないからじゃない。精神面の問題だ。自分自身をコントロールできていないからだ"と言われました。ラリーの場合、小さなミスの積み重なりが大きなミスや最悪の場合、クラッシュを誘発してしまいます」
しかし、その解決の糸口はすでに見つかったと勝田は言う。
「それを解決するのはとにかく経験を積むことです。さらに経験を積めば自信にも繋がる。自信がないと少しのことに気を取られ、次のコーナーも思うように走れなくなってしまいます」
「しかし自信を持っていれば、少しのミスでも"次で挽回できる"と良い意味で図太くラリーをしていられると思うんです。もしその心構えでいられたのなら、今年起きたクラッシュはなかったのかもしれない。シチュエーションが違えども理由は同じで、精神的なところが原因だと思います」
「上に行けば行くほど、精神的に厳しい戦いを強いられると思います。でも行けないレベルではないです。自分にできる範囲内の限界ギリギリのところでラリーをしていって、徐々にアベレージを上に引き上げていくことと、調子の波があるのでその幅を小さくして行くこと、さらに完走して経験値を積んでいくことが今後の課題ですね」
勝田の修行の旅はまだ長そうだ。"日本人ドライバーとしてトヨタ・ヤリスWRCに乗り、世界最高峰クラスでチャンピオン争いをすること"が今の目標だと断言する勝田。トヨタの育成ラリードライバーのひとりとして日本のラリーファンからかけられる期待は小さくない。
「レースからラリーへ転向し、ヨーロッパでラリーをしていて思うのですが、欧州と比べて日本のモータースポーツはあまり盛り上がれていないようなイメージを持っています」
「ヨーロッパは一般の人からのモータースポーツの認知度や知名度がもっと高いです。もし僕も子どもの頃からあの情景を見ていたら、レースやラリーをやっていなかったとしても、"モータースポーツをやりたい"と思っていたと思います」
「いつか日本にそういう文化を根付かせたいですね。今の僕がどうとか言える立場ではないのですが、それでもそれに少しでも貢献できるよう、(ラリーで)活躍していくことが僕にできる一番のことだと思っています」
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