オジェ、トヨタ移籍後初勝利も胸中は複雑「ラリー・メキシコは開催すべきでなかった」

　世界ラリー選手権（WRC）第3戦ラリー・メキシコでは、セバスチャン・オジェ（トヨタ）が今季初優勝。オジェにとって、トヨタ移籍後初めての勝利となった。

　新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るう中でも、ラリー・メキシコは予定通り開催されていた。しかし大会期間中に各国で渡航制限が強化され、チーム関係者がヨーロッパに戻れない可能性が浮上したため、急遽最終日はキャンセル。3日間の短縮開催となった。

　かねてより新型コロナウイルスの感染拡大を懸念していたオジェは、大会終了後にその複雑な胸中を語った。

「12年前にラリー・メキシコでWRCにデビューして以来、ここでは素晴らしい思い出が紡がれてきた。でも様々なことを考慮すると、今回の勝利はこれまでとは大きく異なったものだ」

　そうオジェは語った。

「僕としては、このラリーは行なわれるべきではなかったと思っている。人の命よりも重要なものなんてないんだ。僕が今週末恐れていたのは、僕たちがメキシコの皆さんを危険にさらす可能性があったということだ」

「いつも温かく迎えてくれるファンと交流できなかったことは残念だけど、全員の健康のために必要な予防措置だった」

　そして彼は最後にこう付け加えた。

「トヨタでの初めての勝利を達成できたことはとても嬉しい。皆とこの勝利を祝うために、もう少し違った状況であれば良かったと思う」

「今は僕たち全員が自分自身のことを気にかける時であり、この世界的な危機から一刻も早く脱せることを望んでいる」

■ラリー・メキシコ開催中に状況は“急速に”変化した

　WRCプロモーターのマネージングディレクター、オリバー・シースラは、ラリー・メキシコ開催を決めた後から、状況が“急速”に変化したことを認めた。

「我々がFIA、ラリー・メキシコの運営組織、そしてチームと会った時、日曜日のラリー開催に賛成するものは誰もいなかった」とシースラは語った。

「難しい決断だったが、これが正しかったと思っている」

「メキシコは常にうまく運営されており、我々も毎度歓迎されているように感じる。ただ今回は（イベント初日の）木曜日から急速に状況が変化し、このままでは渡航が困難になるという状況だった。そのため、このような決断に至った」

「我々には様々な国のメンバーがいるため、彼らを確実かつ安全に家へと帰せるようにしなければいけなかった」

　ラリー・アルゼンチンの延期が決まったことにより、現時点で次のWRCイベントは5月21日〜24日に行なわれるラリー・ポルトガルとなっている。しかしシースラは、現状を鑑みるとラリー・ポルトガルの開催も不確実であると認めた。

「WRCは少なくとも9週間中断する。ラリー・アルゼンチンが延期となり、ラリー・ポルトガルで再開する予定だ。我々もそうなることを望んでいる」

「しかし今日の時点で、ヨーロッパを含めた世界の健康状態がいつ正常に戻るかについて、誰も正確なことは言えない状況だ。よって現時点では、WRCカレンダーがどうなるかについて答えることはできない」