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ペンとノートからステアリングに握り直して。WRC王者のコドライバーがRally1車両に挑戦「次戦は運転席に座ってみようかな」

WRC王者ティエリー・ヌービルのコドライバーを務めるマーティン・ヴィーデガは、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで、助手席から運転席に移り、ヒョンデi20 N Rally1のステアリングを握った。

Martijn Wydaeghe, Hyundai World Rally Team Hyundai i20 N Rally1

 2025年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードのラリーステージでは、世界ラリー選手権(WRC)に投入されている1号車ヒョンデi20 N Rally1が登場した。しかし2024年の世界チャンピオンであるティエリー・ヌービルの姿はなかった。

 その代わりに、ヌービルのチャンピオンコドライバーであるマーティン・ヴィーデガが、WRCマシンのステアリングを握った。普段はメモ帳とペン、ストップウォッチで武装する彼は、ラリー・エストニアを前にいつものアイテムを脇に置いた。

「数週間前、チームから(グッドウッドでマシンをドライブしたいか)聞かれたんだ。実際、長くためらうことはなかったよ」とヴィーデガはmotorsport.comにそう語った。

「楽しむ上で良い機会だ。競技の外でも、ラリーに情熱を持っているから、こういうことをやってみたいと思っている。こういうチャンスが訪れたら、ノーとは言えないよ」

 ラリーでコドライバーがWRCマシンを駆ってリエゾン区間を走ることは珍しくないが、ステージ上でステアリングを握ることは非常に珍しい。2021年からヌービルを支えるヴィーデガにとっては、グッドウッドまでステージはおろかリエゾンでもi20 N Rally1を走らせたことすらなかった。

 ヴィーデガはグッドウッドでi20 N Rally1に飛び乗る前、ヌービルからマシンの始動方法だけ教わったという。

「彼にアドバイスはしていない。先日のテストで、彼にスタートボタンを見せただけだ」とヌービルは言う。

Martijn Wydaeghe, Hyundai World Rally Team Hyundai i20 N Rally1

Martijn Wydaeghe, Hyundai World Rally Team Hyundai i20 N Rally1

Photo by: WRC.com

 そしてヴィーデガはこう語った。

「いや、(ヌービルからアドバイスは)なかったよ。彼は僕を怖がらせていたんだ。グリップが低くてミスは許されないから、(マシンの凹みが目立つ)後ろ側の写真を見たら、彼は少し笑うと思うよ」

「できるだけ良い準備をしようと思ったけど、このマシンの運転に慣れていないとね……他のコドライバーみたいにロードセクションを走ったこともないし、小さなステージで400馬力を体験するとなると、少しナーバスになるのは当たり前だ」

 しかしヴィーデガが心配するようなことはほとんど起こらなかった。i20 N Rally1のリヤバンパーに近づいて見てみても、ステージに並ぶ干し草の俵に軽く当たった形跡があっただけだった。

 多くの観衆が目にしたのはオレンジとブルーのi20 N Rally1が砂埃を巻き上げながら颯爽と駆け抜けていく姿だ。ペンやペースノートを置いてステアリングホイールとペダルを操作する気分はどのような感じだったのだろうか?

「ラリーステージはとてもトリッキーで、狭くて滑りやすい。ラリーカーの運転に慣れていないのなら、それはそれでひとつの課題だけど、Rally1車両を運転するのはまた別のレベルだ。グリップの低さには本当に驚いたし、マシンのリヤでそれを感じることができた」とヴィーデガは言う。

「コーナーを曲がるのに干し草の俵を少し使ったけど、それを除けば全てがスムーズだった」

 現行WRCモンスターを操る感覚を楽しむことができたヴィーデガだが、ドライバー側のノウハウを蓄積し、コドライバーとしても新たな視点が得られたという。

 ヴィーデガはヌービルの隣で情報満載のペースノートをベストなタイミングで読み上げ、Rally1車両の加速力や制動力を体験してきたが、ドライビングの難しさは別次元だと語った。

「WRCのドライバーたち、特にティエリーに対する尊敬の念は本当に厚い。自分でやってみて初めて、その難しさが分かる」とヴィーデガは言う。

Thierry Neuville, Martijn Wydaeghe, Hyundai World Rally Team Hyundai i20 N Rally1

Thierry Neuville, Martijn Wydaeghe, Hyundai World Rally Team Hyundai i20 N Rally1

Photo by: Fabien Dufour / Hyundai Motorsport

「こういう高速かつテクニカルなステージ、あらゆるコンディションの中で彼らができることを見ると、本当に脱帽するしかない。あのレベルに達するには、高い才能とハードワークが必要だということを思い知らされる。ラリー・エストニアで右の席に戻れることを嬉しく思うよ」

 i20 N Rally1の運転席にヴィーデガが戻るのはしばらく先のことになりそうだが、ドライビングを続けたいという願望は間違いなくある。ただ、ラリー競技でというわけではない。

「競技の外やグッドウッドのようなデモンストレーション・イベントでは、ドライビングを楽しんでいるよ」とヴィーデガは続けた。

「プロドライバーになる野心はゼロだけど、人生で絶対にやりたいことがふたつああって、ひとつはドライバーとしてモンテカルロ・ヒストリックに参加して、過去のステージを体験すること。そして僕のホームイベントであるイープル・ラリーは、僕がWRCで初めて勝利を挙げた場所でもあるから、いつかこのラリーでゼロカーやコースカーで走る機会があれば、そうしたいと思っている」

 今週末にはラリー・エストニアを迎え、ペースノート、ペン、ストップウォッチを握るヴィーデガ。運転席、それとも助手席のどちらに座るのか、判断を下すのはさほど難しくはない。

「エストニアで運転席に座ろうとするのは、良いジョークになるだろうね!」

 ヴィーデガはそう微笑んだ。

 

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