
今年の秋口、日本のラリー界ではある"噂"が広がっていた。それは十数年ぶりの世界ラリー選手権「WRCラリー・ジャパン」の復活だ。
かつて、いくつもの日本の自動車メーカーが世界の道に挑戦した時代があった。当時アベレージラリーがメインだった国内ではもの足りない多くの日本人ドライバーが、世界のスペシャルステージラリーに憧れ、こぞって参戦していた時代があった。
彼らが世界を舞台に輝かしい功績を収める中、2004年にWRCラリー・ジャパンが北海道で初開催。当時はコンビニでラリーカー特集の雑誌が売られるなど注目を集めていたこともあり、開催初年度のWRCラリー・ジャパンは大成功を納めた。舞台となった北海道・帯広市には人口の2倍もの人が詰めかけ、店に一度入ると外からの人の圧でドアを開けることができないというウソのような話もあった。
しかしWRCラリー・ジャパンは長く続かず、2010年の開催を最後に幕を閉じた。日本自動車メーカーも2008年を最後に全社WRC参戦撤退となった。
しかし2017年にトヨタが18年ぶりのWRC復帰を果たし、それが引き金となって、一気に日本にラリー熱が戻って来たように思われる。加えて、FIA関係者による視察が行われたことから、WRCラリー・ジャパン復活の噂がその熱をさらに高くさせている。
その噂の真偽を確かめるのはそう簡単ではないが、Motorsport.com Japan は先日開催されたの新城ラリーの現場で、何人かのトップ・ラリードライバーたちに話を聞いた。
「やるかどうかはまだ決まってないと思いますが、トヨタが参戦復帰したので日本でできるのかどうかを(FIA関係者が)今見ているところだと思いますよ。もちろん日本でどれだけラリーが認知されているかも含めてです。ただトヨタが参戦している限り、日本に来るのは確かだと思う」
そう語るのは世界と国内で活躍するスバルのワークスドライバーであり、国内外のラリーに精通する新井敏弘。日本開催に関しては、他のドライバーからも期待も含めて前向きな回答が返ってきた。
しかし、新井は日本開催に関して懸念もあるという。
「日本でやるとしたらターマック(舗装路)ラリーになるだろうけど、FIAやプロモーターはロジスティック面でコストが上がることを懸念するかもしれません。ターマックラリーは今ヨーロッパでしか開催していませんから、もし日本がターマックラリーとなったら参加者たちは新たにコンテナを4~5個用意しなくてはならなくなりコストがかさむでしょうから。ただこれは昔からある懸念点です」
懸念点は"開催地"か
三菱ランサー・エボリューションで世界と国内のラリーに参加、現在ラリースクールを運営し、日本のラリーのレベル向上に貢献している奴田原文雄もラリー・ジャパンの開催の可能性に概ね前向きだった。
「トヨタがワークス参戦したので近いうちに日本に誘致してくれると思うし、僕自身もモータースポーツファンを増やせるいい機会になると思うので嬉しいですね。ただ開催地がどこになるのかですね」
「ラリー開催地の地元での理解が得られるかどうかということが、開催における最も大きな問題となると思います。もしここら辺(愛知県・新城市)でやるとしたら、少しハードルが高いのかもしれない」
WRCを開催するためには総距離300kmのSS(スペシャルステージ)が最低限必要となる。しかしFIAの定める競技規則で開催された"新城ラリー"でSS総距離は100km未満。住家のある道にSSが設定されるとは考えにくいことから、WRC開催が可能な距離を確保するのには一苦労だろうと奴田原は続けた。
「現在もWRCをやっているような国では、民家すれすれのところをWRカーが走ることもありますが、日本でいきなりは無理ですよね」
「一番開催が楽なのは北海道だと思いますが、本州で人が多いエリアで行うとなると、警察の許可、住民の合意を取るのが厳しいでしょうね」
「あとは先頭に立って開催するのは誰なのかとか、お金の面が問題になると思います。色々と問題は山積みだと思いますが、それがクリアになれば可能だし、これまでも開催できていたので可能だと思いますよ」
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