WTCC日本人初表彰台、道上龍「続けてやれば、他の日本人も通用する」
WTCCのマカオ戦オープニングレースで、同シリーズで日本人として初めて表彰台登壇を果たした道上龍。その感慨と、最終戦への意気込みを聞いた。

先日行われたWTCCマカオラウンド。そのオープニングレースで、道上龍が3位表彰台を獲得した。この表彰台は道上自身にとってもWTCCで初の表彰台登壇であるが、日本人ドライバーとしても初の快挙だった。
「マカオは1994年と1995年にF3で走って以来の挑戦でした」
そう道上は言う。
「94年は病院送りになっちゃいましたし、95年は多重クラッシュの連続で結局日没終了……不完全燃焼の2年でした。今年、なんとかリベンジすることができました」
「マシンのレベルは上がってるんでしょうが、コースは昔と変わりませんでしたね。すごく滑りますし。今までのストリートコースの中では一番滑ります。轍もすごいです。雨が降っちゃうと、どこがグリップするのか分からないくらいです」
初の表彰台登壇について、道上は次のように語った。
「素直にすごく嬉しいです。苦労すると思ったマカオで上がれたから、なおさらですね。オープニングレースでもこれまで表彰台に上がった日本人がいないということについて言えば、良かったなと思います。でもメインレースではなかったですし、ワークスチームでやらせてもらっているということを考えれば、もうちょっと早く表彰台には上がらなきゃいけなかったという想いはあります。ちょっと時間がかかりすぎましたね」
「僕の場合はフル参戦させてもらう中で表彰台に上がらせてもらえました。でも、今までの日本人はみんなスポット参戦でした。WTCCはスポット参戦で簡単に結果が残せるようなレースではありません。それは、去年僕も痛感しました。続けてやることができれば、他の日本人ドライバーも十分通用すると思います」
「チームを日本人スタッフで固めてもらったら、もっと良いレースができたかもしれない。日本人で固めるというのは良いことじゃないかもしれないけど、JTCCの技術を活かせたり、日本人ならではの作業の細かさなども含め、日本のレベルの高さを見せつけることができたかもしれません」
道上はオープニングレースを3番グリッド(予選7位+ジョン・フィリッピのグリッド降格で1ポジション繰り上がり)からスタートした。そしてそのポジションを守り、後続で多重クラッシュがあったために赤旗終了となったレースで、3位という結果を得たのだ。ただ実は予選で、リバースグリッドでのポールポジション獲得を狙っていたという。
「マカオは抜きづらいですから、リバースグリッドでのポールポジション(つまり予選10位)を狙った方がいいだろうという考えがあり、チームからそういう指示がありました。本当ならもっと速かったはずなんで、走り切った感じがなかったです」
「終盤戦になって、ボルボとガチガチのタイトル争いをしているんで、そういう作戦が重要なんです。レースでもチームメイトの(ノルベルト)ミケリスが、僕の真後ろにいたテッド・ビョーク(ボルボ)を抜いていたら、ポジションを譲らなきゃいけなかったと思います」
リバースグリッドでのポールポジションを狙うにあたって、チームからはある指示が出たという。
「コースの山側を頑張って海側に出てきたら、チーム無線で『スローダウン!』っていう叫び声が聞こえるんですよ。しかもチーム代表から直々に。事前に『調整するかもしれない』とは言われていたんですが、その無線がすごい声だったんで、前でクラッシュでも起きてるんじゃないかと思ったくらいです。もうちょっと早めに言ってくれれば良かったんですが……それで中途半端になって、7位になっちゃいました」
マカオで道上が乗ったマシンは、もてぎで使ったモノと同一個体である。そのマシンには、ある特徴があったと道上は証言する。
「僕のクルマは今回、ストレートスピードが非常に伸びるマシンになっていました。ミケリスやエステバン(グエリエリ)と比べても、トップスピードは速かった。なんで僕のクルマだけ速いのかは、分からないんですよね。チームメイトたちも『なんでリョウだけストレートが速いんだ?』と首を傾げていましたから」
道上のマシンは、実はもてぎラウンドから変更されている。それまで使っていたシャシーとエンジンが中国ラウンドからの到着が遅れたため、急遽新車を投入することになったのだ。
「(シャシーが変わったのが)効いてるかもしれません。リヤの剛性を上げたりとか、アップデートにはなってます。今思えば、もてぎの時にもストレート区間が多いセクター3では、僕はすごく速かったんです。その時からそういう徴候があったのかもしれません」
「これまでいろんなマシンに乗ってきたんですが、ストレートが他のドライバーより有利だということはなかったんです。スーパーGTのNSXもコーナリングマシンでしたから、ポールポジションからスタートしなければ、オーバーテイクしにくいので勝つのは難しかった。ストレートが速いマシンってこんなに楽なのかと、改めて思いました。初めてその恩恵を受けましたね。(ストレートスピードが速いのは)最終戦にも役立つと思います」
その最終戦は12月1日(金)にワンデイ開催としてカタールで行われる。ホンダはボルボと激しいマニュファクチャラーズタイトル争いを繰り広げており、さらにミケリスのドライバーズタイトル争いをサポートする上でも、道上の働きは非常に重要になってくる。
「最終戦は非常に重要なレースです。自分の役割も重要になってくるので、そのためにも速さを見せなきゃいけない。不思議な緊張感があります」
「これまで、チームメイトのサポートをするという経験はほとんどしてこなかったんですが、僕とエステバンはその役割を担わなきゃいけないです。ちょっと緊張しますが、今年の集大成を見せつけ、貢献したいと思います」
最終戦が終わった後、道上とミケリスらはすぐさま日本に向かう。12月3日(日)にツインリンクもてぎで行われる”Honda Racing THANKS DAY 2017”に参加するからだ。
「金曜日の23時半にレースが終わる予定ですが、翌朝の7時の飛行機に乗らなきゃいけません。そうすると、土曜日の夜に日本に着きます。そして翌朝7時半にサーキット集合と言われています」
「中国からの到着が遅れたマシンが、すでに日本にありますんで、それに乗る予定です。その他、TCRのマシンにも乗ります」
「今年のサンクスデーは入場無料なんで、多くの方に来ていただければいいと思っています」
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この記事について
シリーズ | WTCC |
ドライバー | 道上 龍 |
チーム | Honda Racing Team JAS |
執筆者 | 田中 健一 |